2024年10月23日水曜日

TMP-301の新規臨床試験の情報が公開されました

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

Tempero社が開発する物質使用障害治療薬候補のTMP-301に関して、以下2つの新規臨床試験の情報が公開されました。

アルコール依存症に対する試験:リンク

  • フェーズ:Phase 2
  • 試験開始予定日:2024年12月31日
  • 主要評価項目完了予定日:2025年11月25日
  • 登録被験者数(予定):100人

コカイン依存症に対する試験:リンク

  • フェーズ:Phase 1
  • 試験開始予定日:2024年11月15日
  • 主要評価項目完了予定日:2025年4月15日
  • 登録被験者数(予定):18人
物質使用障害(薬物やアルコールなどの依存症)は多岐にわたり、米国だけでも2100万人が1つ以上の依存症を抱えていると言われています。
特にアルコール依存は様々な国で大きな社会問題となっています。少し古いデータではありますが、1999年から2017年までの米国での死亡者のうち飲酒関連の死亡者数は2倍以上に増え、2017年の米国での死亡者のうちアルコール関連死は2.6%を占めています(引用:CNN)。
また、成人米国人のうち20%はアルコール依存症であり、毎年9.5万人がアルコール依存症により死亡しているというデータもあることから、米国でも大きな社会問題となっています。さらに全世界で見てみると、毎年230万人がアルコール依存症が主な原因となり死亡しており、世界的にも健康上の大きな課題となっています。
(引用:Addiction Center

(日本語の参考記事はこちら

アルコール依存症に関しては断酒に関する治療薬がいくつかあるものの、物質使用障害全体でみると有効な治療薬がほとんどない状況です。当社が創出しTempero bio社が開発するTMP-301は、代謝型グルタミン酸受容体5(mGlu5)に対するネガティブアロステリックモジュレーターです。これは、不安や中毒に対する効果が期待されており、物質使用障害に対する治療薬候補として世界中の健康課題に貢献できる可能性を秘めています。
今年中には上記の2つの臨床試験が始まる予定です。また臨床試験が開始されましたら皆さまには開示等を通じてお知らせする予定です。

今後ともよろしくお願いします!

2024年9月2日月曜日

ニューロクライン社から35百万米ドルのマイルストン受領

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。


先ほどリリースの通り、M4作動薬(NBI-1117568)について当社とニューロクライン社は、両社間で、先日のフェーズ2試験結果を含めて、事前に定められた全ての要件が達成されたと確認しました。これを受け、当社は35百万米ドル(約51億円)のマイルストンをニューロクライン社から受領します。なお、本マイルストンは24年3Qに一括計上されます。

また、8/28のリリース(リンク)後に多くのお問い合わせをいただきましたので、この場を借りて、可能な範囲で回答させていただきます。既にニューロクライン社にライセンスしているため、当社から回答が難しい点があることをご了承ください。



Q1:8/28に良好な結果を発表したにも関わらず、なぜ株価は下落したのか?

A1:ニューロクライン社の投資家の事前の期待がとても高かったことの反動が大きかったと考えています。特に、用量依存性が見られなかったことが投資家の疑問につながったと考えていますが、株価変動は様々な要素に要因が絡み合うため断定はできません。他方で、当社の株価は事前の過熱感が大きくなかったこと、また、フェーズ3に進むのに十二分なデータが得られたこと、当社プラットフォームの有用性が臨床試験で実証できたことなどから、中長期的なポテンシャルは大きく上昇したと考えています。


Q2:なぜ試験結果発表と同時に、マイルストン受領とはならなかったのか?

A2:マイルストン受領要件は複数あり、加えて細かく契約で定められているためです。詳細はお伝え出来ませんが、特にPOC取得に関連する本マイルストンは、M4作動薬の将来性を決める上でニューロクライン社・当社の双方にとって極めて重要なものであり、その要件をすべて満たしたことが両社によって確認されて初めて、マイルストンの受領が確定します。


Q3:今回のP2の試験結果はPOCが取れたという理解でいいか?

A3:POCは取れたと認識しています。プラセボ群と比較して、20mg投与群では統計的に有意な効果が確認できたうえ、良好な安全性・忍容性を確認できました。これは、NBI-568がムスカリンM4受容体選択的オルソステリック作動薬として期待通りの作用を発揮し、かつ統合失調症に対して効果を発揮した結果だと考えています。


Q4:投与量を増やしたのに効果が下がることはよくあるのか?

A4:精神疾患の治療薬においては比較的、良くある現象です。以下の文献(リンク)は、統合失調症の急性症状に対する抗精神病薬の用量・反応曲線を調べた論文ですが、例としてハロペリドール、リスペリドンなどがベル型の用量・反応曲線を描いています。また、顕著なのはAmisulpride(最下段真ん中)で、用量を上げすぎると効果がほとんど無くなるという結果が出ています。このように、用量を上げて効果が下がる医薬品は数多く知られています。

Leucht, Stefan et al. “Dose-Response Meta-Analysis of Antipsychotic Drugs for Acute Schizophrenia.” The American journal of psychiatry vol. 177,4 (2020): 342-353. doi:10.1176/appi.ajp.2019.19010034

Q5:ニューロクライン社は20mgがベストだと事前に予想していたとコメントしていたが、それならなぜ低用量をP2で試さなかったのか?

A5:当社のコメントではないことに加え、ニューロクライン社の判断であるためお答えできません。フェーズP1試験のデザインは以下の通り公開されています。

  • M4作動薬の安全性、PK/PD、食事の影響の評価(リンク):用量は未公表
  • 経口投与後のM4作動薬の血中濃度の測定(リンク):10mgのみ
  • 経口投与後のM4作動薬の脳脊髄液中濃度の測定(リンク):10mg、20mg

フェーズ2試験の結果からは、M4作動薬の安全性はいずれの用量でも非常に高く、普通は安全性への懸念から躊躇しがちな、高容量の試験が行える環境だったと考えられます。用量は今回の試験でほぼ確定しましたので、フェーズ3試験ではより明確な根拠に基づく投与量が設定されると期待しています。


Q6:NBI-568は有効性の面で他社と比較して劣っているのか?

A6:他社の開発品と同等程度の有効性と考えています。今回の試験は20mg投与群がN=35であり、少人数での試験であったことから数値のばらつきも大きいです。ニューロクライン社のQ&Aでもあったように、5週時点から6週時点でプラセボ調整の改善幅が10.0→7.5と変化したのもばらつきが要因だと考えられます。そのため、現時点で他社と改善幅が1-2違う点から有効性の優劣を議論できる状態ではなく、今後のP3の結果が重要になってくると考えられます。

注:対象としている患者群、実施施設、時期なども異なることから、違う臨床試験の結果を直接比較するのは実は好ましくありません。現段階で直接比較の臨床試験を行うのは現実的ではないため、違う臨床試験を参考にするしかありませんが、優劣を議論するにはさらなるデータが必要となることはご理解いただければと思います。


Q7:ネクセラファーマとして、今回のデータはどのように捉えているのか?

A7:大きな市場が見込める統合失調症治療薬の開発が前進したこともポジティブですが、当社のNxWave™プラットフォームの有用性を実際の臨床試験データで確認できたことは非常に大きなターニングポイントだったと考えています。ムスカリン受容体作動薬は副作用の原因となるM2、M3への作用をいかに抑えるかがカギとなりますが、構造がM4とも非常に似ているためこれまでM4特異的な作動薬の開発は困難でした。今回の臨床試験で心血管系・消化器系の副作用を抑え有効性を発揮できたことは、精密な分子設計が可能であることを示せたと考えています。

ムスカリン受容体に関する説明資料(2024年6月個人投資家説明会資料:P40)



また、コーポレートプレゼンについても最新のものにアップデートしました(リンク)。こちらもよろしければご覧ください。

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2024年8月29日木曜日

ニューロクライン社がM4作動薬のP2試験で良好な結果を発表

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

昨日のリリースの通り、ニューロクライン社が開発するM4作動薬(NBI-1117568)のP2試験で良好な結果が確認されました。ポイントは以下です。


  • 20mgの投与量で主要評価項目を達成し、総PANSS、陰性、陽性のいずれのスコアも統計的に有意に改善した(総PANSSスコアの改善でp=0.011)
  • 副作用は狙い通り少なく、加えて1日1回の経口投与で効果が見られたことで、競合に対して強い競争力となる可能性がある
  • 用量依存性(薬を増やすと効果も増す)は特に精神疾患ではないことも多く、今回もなかった。ただ、本剤の安全性が高く、最適な用量を発見するため高い用量も試験した
  • 今後、マイルストーンを受領する際には改めて開示。ニューロクライン・当社ともに本進捗を極めてポジティブに捉えている
  • Phase3試験は2025年の前半に開始される予定


詳細は以下をご覧ください。


本試験の主要評価項目であるPANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)の改善幅は18.2、プラセボ調整後で7.5(p=0.011、Effect size: 0.61)となりました。これは事前に期待されていた「プラセボ調整後で8以上の改善」という数値目標には若干及ばなかったものの、ベースラインからの改善は18.2と他と比較しても遜色ない結果となり、十分な有効性が確認されました。(結果の解釈については、ニューロクライン社からの説明を本記事の下部に記載しておりますので、そちらをご確認ください)

また、特筆すべき点として、安全性・忍容性が高かったことが挙げられます。これまでのムスカリン作動薬は、その選択性の低さから消化器症状や心血管系の副作用が懸念とされてきました。NBI-1117568では、全ての用量で高い忍容性・安全性が確認され、治験を中断した被験者は5.0%とプラセボ群の4.3%と同程度でした。


ムスカリン受容体は選択性が非常に重要であり、選択性が低いと消化器系、心血管系の副作用が増えると言われています。本臨床試験では、それらの割合が高くなかったことから、NBI-568がM4に対して非常に選択性高く作用していると考えられます。(2024年6月個人投資家説明会資料:P40)

このことは、当社のNxWave™プラットフォームが標的分子に対して選択性高く作用する分子を設計できることを、臨床試験をもって実証できたことになり、当社としても非常に大きな節目となりました。
また、統合失調症や他の精神疾患の患者さんにとっても非常に心強い結果だと考えています。現在治療薬のオプションは多くあるものの、副作用の観点からも治療満足度が低い状態です。そのため、今回の試験で高い安全性や忍容性が確認できたことで、NBI-568が新たな治療オプションとなる可能性があります。

一方で、今回の試験はP2試験であり少人数での安全性・有効性を確認したにすぎません。来年に始まる可能性があるP3試験の成功や、今後の適用拡大や他のムスカリンポートフォリオの推進に向けて、引き続き頑張ってまいります!



また、日本時間の8/28夜9時にニューロクライン社からプレゼンテーションがあり、試験結果に関する説明や質疑応答がありましたので、いくつかピックアップして内容をご紹介します。(資料へのリンクはこちら
なお、番号については実際の説明・質疑の順番とは異なります。

Q1:プラセボ調整後のTotal PANSSのスコアが期待されていた8に届かなかったが、この結果についてどう考えているか

A1:1日1回、20mg投与によるリスク・ベネフィットは競争力があると確信している。なお、プラセボ調整後の改善幅が注目されることも多いが、医師はベースラインからの改善幅を重視する傾向がある。そのため、今回ベースラインからの改善が18.2という結果は非常に説得力があるものだと考えている。なお、今回我々は3番手として開発を行っており、ムスカリン作動薬は効果があるという期待がかかっていたこともあり、プラセボ効果が高くなることは予想していたが、その通りの結果となった。

Q2:なぜ用量反応性がなかったのか。なぜ高容量では効果がなかったのか

A2:精神疾患における臨床試験では珍しくない現象。我々は、20mgが有望だということは事前に予想していた。ムスカリン受容体全体のメカニズム由来の可能性もあれば、薬物の特性の可能性もあるが、なぜこのような現象が起こったかは真の原因は定かではない。ただし、このような現象は一般的に見ても起こりうるものだと考えている。
KarXTはこのような現象が見られなかったが、この薬剤は30年前から研究がされており用量についてもよく理解されていたことが要因だろう。

今回の試験の試験の目的として、有効性を発揮する用量の探索に加え、高容量を複数回投与した際の安全性を確認することだった。
前臨床試験やP1試験のデータから20mgの投与量が有望だと予想はしていたが、今回の試験では20mgの有効性に加え、さらに上の用量の安全性も確認できた。その意味でも、本試験は非常にいいデータが得られた。

20mg投与群では、3週から6週まで一貫してプラセボとの統計的有意差が見られたことから再現性のある反応が見えた。また、追加評価項目も有効性を示唆しており、効果量も大きい。そのため、20mg投与群におけるデータは強固だと考えており、用量依存的な有効性が見られなかったことで、20mg自体の有効性・安全性を損なうものではない。

ネクセラ注:用量を増やしすぎると有効性が低下する「ベル型 (bell-shaped。逆U字型ともいう)」の用量・反応曲線を示す薬剤や、用量をある程度増やすと有効性が低下し、さらに上げると有効性が向上する「U字型」の用量・反応曲線を示す薬剤は多くはないものの、珍しくはありません。例として、リスペリドンやハロペリドールなどが挙げられます。(参考文献精神疾患領域で「ベル型」がよく見られる要因として、脳内の複雑なフィードバックシステムに起因する(受容体を刺激しすぎると、他のシステムが作用して負のフィードバックをかけ、恒常性を保つ機能が他の臓器よりも強い)とも言われていますが、原因ははっきりしていません。

Q3:プラセボ調整後のPANSSスコアが5週から6週にかけて低下しているが、これは何が原因か

A3:ばらつきの問題と考えられる。6週で統計的に有意な差が見られなくなる場合や、6週のみ差がみられる場合は問題だが、今回は3週から6週まで一貫して統計的に有意な差が見られた。そのため、ノイズのようなものだと考えている。

Q4:20mgよりも低い用量を検討するのか

A4:前臨床やP1試験のデータから20mgが有効であるという確信は持っているものの、より低用量については今後議論の余地はあり、最終決定はしていない。いずれにせよ、P3試験はよりシンプルな試験デザインにしたい。

Q5:今後どのような追加適応を考えているか

A5:自社のポートフォリオ全体を見据え、どのプログラムがどの適応症に最も適切かをほかのムスカリンポートフォリオのデータも見て見極めていきたい。重要なのは、NBI-568を統合失調症治療薬として開発し、他の化合物をP2に進め他の適応症を検討していくことだと考えている。

Q6:他社のムスカリン作動薬と比較したときの優位性は

A6:Cerevel社が開発中のemraclidineはムスカリンM4受容体のポジティブ・アロステリック・モジュレーターであり、内因性のアセチルコリンが必要となる。内因性のアセチルコリンの量は患者集団や病態によって異なることが知られており、そのような患者に対しては適用が難しい可能性がある。一方でNBI-568はオルソステリック作動薬であり、内因性のアセチルコリンを必要としない。そのため、統合失調症だけでなく、M4活性化が重要となる疾患に対してより効果的となる可能性がある。
また、Karuna Therapeutics社が開発中のKarXTはM1/M4デュアル作動薬だが、作動薬として働くxanomelineと、副作用を抑えるためのtropiumの合剤となっている。ただし、完全にオフターゲット効果を抑えられるわけではないうえ、1日2回投与が必要となる。NBI-568は単剤でM4に対して500倍の選択性有することからオフターゲット効果を避けることができ、1日1回投与が可能で利便性が高い。

Q7:心血管系の有害事象など、深刻なものはなかったのか

A7:発表資料の表に深刻な有害事象の記載がないのは、実際に深刻なものは何も見られなかったから。高血圧など心血管系の有害事象も見られなかったことは非常に心強い結果。高容量でも安全性が確保され、20mgで次のフェーズに進めることを考えれば、これは非常に頼もしい結果となった。

ネクセラ注:M4とよく似ているM2は心血管系に影響があるムスカリン受容体で、この受容体にオフターゲットで作用すると心血管系の有害事象が見られる可能性があります。また、M3は内臓の平滑筋に影響があるムスカリン受容体ですが、今回は心血管系の有害事象や消化器系の有害事象が多くなかったため、オフターゲット効果は最小限に抑えられていると考えられます。

Q8:全体的に、今回の結果に対する感想は

A8:今回の結果では有効性や高い安全性・忍容性だけでなく、1日1回の投与が可能であり、食事の影響を受けないという利便性も確認できた。このことから、統合失調症だけでなく、他のポートフォリオも含め他の疾患への適用可能性も高まったと考えている。

2024年8月15日木曜日

ダリドレキサント関連のアップデート

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

先日の2024年第2四半期決算の説明会にご参加いただいた皆さまはありがとうございました。Q&Aについては後日当ブログでご回答させていただきます。

本日はダリドレキサントに関する最新情報をいくつかアップデートさせて下さい。

免責事項:本記事には、医薬品に関する情報が含まれています。ここに記載されている内容は、株主や投資家の皆さまのための情報開示を目的としており、一般の方への情報提供を目的としたものではなく、開発品を含むいかなる医療用医薬品の宣伝広告、医学的アドバイスを意図するものではありません。

厚労省の薬事審議会の議題に記載参考リンク

決算説明会でも野村や田中からご説明しましたが、厚労省の薬事審議会(医薬品第一部会)の議題にダリドレキサントが記載されました。

今回、8月の部会でダリドレキサントの「製造販売承認の可否」が議題に記載されましたが、部会で承認が認められればどこかのタイミングで承認となります。なお、医薬品の承認は通常3、6、9、12月の年4回のタイミングです。

また、承認から薬価収載までは「原則60日以内、遅くとも90日以内(参考)」となります。今後も、患者さまの為に一刻も早くお届けできるよう一同頑張ってまいります。


ダリドレキサントの臨床試験の論文公開

ダリドレキサントの日本での臨床試験結果に関する論文が3報公開されました。ダリドレキサントは、グローバル試験に基づいて海外では既に承認・販売されていますが、日本では独自の国内臨床試験を行いました。今回はその国内臨床試験のPh1、2試験の論文1報、Ph3試験の論文2報が公開されましたので、その概要をご紹介します。

タイトル:Pharmacokinetics, safety, and efficacy of daridorexant in Japanese subjects: Results from phase 1 and 2 studiesリンク

  • ダリドレキサントの薬物動態試験結果(Ph1)、および少人数(47名)での有効性確認試験結果(Ph2)
  • ダリドレキサントは、夜間における睡眠をカバーし、かつ残留効果を最小限に抑えられる最適な半減期を目指して設計されました。本試験の結果、ダリドレキサントの半減期は約8時間であることがわかり、FDAに承認されている3つのDORAの中で最も短かいと考察されています。
  • 試験を行った全用量(10 mg、25 mg、50 mg)で良好な忍容性が確認され、翌朝への効果の持ち越しも見られませんでした。また、反復投与による蓄積はほとんど、もしくは全くありませんでした
  • また、用量依存的な有効性が確認されました
  • 双方の試験で最もよく見られた治験関連の有害事象(TEAE)は傾眠でした。朝に投与を行ったPh1試験では、10mg, 25mg, 50mg, プラセボでそれぞれ50%, 91.7%, 91.7%, 16.7%の割合で傾眠が見られました。また、Ph2では5-10%の被験者で傾眠が見られました
  • 全体的に、試験結果は外国人を対象とした試験から得られる結果と合致していました

タイトル:
Daridorexant in Japanese patients with insomnia disorder: A phase 3, randomized, double-blind, placebo-controlled studyリンク
  • 日本人の不眠症患者490名を対象とし、4週間投与による安全性・有効性を確認した国内Ph3の試験結果
  • 投与開始28日目(4週時点)において、プラセボと比較して、25mg、50mgともに主観的総睡眠時間(sTST)、主観的入眠潜時(sLSO)ともに有意に改善させました
  • 最もよく見られた治験関連の有害事象は傾眠であり、その割合は用量依存的に増加しました(50mg: 6.8%, 25mg: 3.7%, プラセボ: 1.8%)

タイトル:Long-term safety and efficacy of daridorexant in Japanese patients with insomnia disorderリンク

  • 日本人の不眠症患者154名を対象とし、ダリドレキサントを1年間の投与した際の忍容性と安全性の確認試験(プラセボ投与はなし)
  • 50mg(N=102)、25mg(N=52)を1年間投与したところ、治験関連の有害事象(TEAE)はそれぞれ24.5%、19.2%でした
  • 特に注目すべき有害事象として、日中の過度な眠気(25mgで1例、50mgで2例)、睡眠麻痺(50mgで1例)、悪夢(25mgで1例)の計5件が報告されました
  • 50mgよりも25mgの方がTEAEが少ない傾向にあり、とくに50mgで見られた倦怠感は25mgでは見られませんでした
  • 結果的に、25mg、50mgともに52週間の良好な忍容性、安全性が確認されました

今後とも、どうぞよろしくお願いします! 

2024年8月2日金曜日

ニューロクライン社が2Q決算を発表

 みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

一昨日から昨晩にかけて、我々の提携先であるニューロクライン社とファイザー社が24年2Qの決算を発表しました。ニューロクライン社に関しては3Q中にP2の臨床試験結果が控えていることもあり、質疑応答ではM4作動薬(NBI-1117568)に関する質問が多く寄せられており、市場からの関心が高まっていることが感じられる説明会となりました。詳細については以下をご覧ください。

●ニューロクライン社説明資料

M4作動薬(NBI-1117568)のトップライン結果については、3Q中にニューロクライン社がプレスリリースとウェブ会議を通じて発表するとの説明がありました。先日のブログでもご紹介したPANSSスコアや安全性プロファイルなども含め発表予定とのことです。また、そのほかのムスカリンポートフォリオについても当社の名前も前面に出しつつ、進捗をアピールするものでした。


説明会の質疑応答の中ではM4作動薬をはじめ、ムスカリンポートフォリオに関するものが多く出ました。

”We had a broad range of both preclinical data and Phase 1 information that made us very confident in terms of the safety and tolerability of the doses that we were choosing to take into the clinic.”

前臨床試験やP1試験から広範な情報を得られたことで、臨床での用量や安全性・忍容性に関して非常に自信を持つことができた。

"I think Nxera has done a very significant amount of work pre-clinically both in vitro and in vivo profiling a whole range of molecules. And so, from that perspective, we're confident this is a selective and full agonist."

(ムスカリンポートフォリオについて)Nxera社は前臨床において、非常に多くのIn vitro(細胞等の試験管内での実験)やIn vivo(動物試験)試験を実施し、分子の特性を様々な角度から検証しています。そのため、私たちは自社の分子が選択性の高いアゴニストであると自信を持っています。


●ファイザー社パイプライン

説明会では当社パイプラインに関する言及はありませんでしたが、いずれもパイプライン表やClinicalTrials.govで順調に進捗があることが確認されました。(以下記述はQ1決算時と同様)

GLP-1作動薬(PF-06954522/糖尿病・肥満)
今年2月に健康な方に対するフェーズ1a試験が終了した直後に、患者さまを対象としたフェーズ1b試験が開始され、現在進行中です。また、4月末にはいくつかの剤形をテストする新たなフェーズ1試験の開始が登録されました。

MC4拮抗薬(PF-07258669/栄養失調)
昨年7月に2つ目のフェーズ1試験が完了しており、 今年2月には最初のフェーズ1試験の結果がデータベースに登録されています。

CCR6拮抗薬(PF-07054894/炎症性腸疾患)
現在進行中の、患者さまを対象としたフェーズ1b試験について、今年の4月に、終了時期の前倒し(今年10月→7月)がデータベースに登録されました。また、同じく今年の4月に、新たに日本人を対象としたフェーズ1試験の開始が登録されました。


今後とも、どうぞよろしくお願いします! 

2024年7月23日火曜日

ニューロクライン社のM4作動薬の試験結果に向けて

みなさんこんにちは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。


当社からニューロクライン社にライセンスしているM4作動薬(NBI-1117568/適応:統合失調症)の、フェーズ2試験結果の発表が足元(7-9月)に迫っていることを受け(参考)、ニューロクライン社のカンファレンスでの発言や、証券会社各社のレポートが出揃ってきましたので、以下にポイントをご紹介いたします。


  1. PANSSスコア改善が8以上で安全性が高ければベスト
    • NBI-1117568の競合薬(KarXT、Emraclidine)のPANSSスコア改善はプラセボと比較して8.4から12.7の範囲ですが(下表)、M4作動薬というメカニズムが統合失調症に「効く」ことが知られてきたことでプラセボ効果が高まっています。これは当分野の医薬品の開発では一般的なことです。足元の状況からは、NBI-1117568のフェーズ2試験でのPANSSスコアのプラセボとの差は、8以上の改善であれば十分な効果だと考えられています。PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)スコアは、統合失調症の精神状態を把握する一般的なスコアです。
    • 安全性(副作用)について、特に先行するKarXTでは悪心、消化不良、嘔吐、便秘などがプラセボ群と比較して、投与群全体に対して10-15%ほど多く発現しており、これらに対してより高い安全性を示すことが重要だと考えられます(参考1参考2)。また、その他のポイントとして、NBI-1117568が基本的に一日1回投与であるのに対し、KarXTは一日2回投与になりますので、利便性の面でもNBI-1117568はより患者さまに貢献できるものと考えています。

  2. アルツハイマー病やそれに伴う行動・心理症状への適応拡大も期待
    • 先行するKarXT(ブリストル社)は昨年9月にFDAへの承認申請済みで、24年3Q(7-9月)にも承認が見込まれています。また、アルツハイマー病に伴う行動・心理症状(AD Psychosis)を対象とした2つのフェーズ3試験(ADEPT-1ADEPT-2)が進行中で、これらの試験結果は25~26年にも発表されると見込まれています。
    • NBI-1117568とほぼ同様の開発段階にあるEmraclidine(アッヴィ社)についても、2つのフェーズ2試験(EMPOWER-1EMPOWER-2)が進行中で、これらの結果発表も年内に期待されます。また、Emraclidineのアルツハイマー病を対象としたフェーズ1試験が2025年に完了予定であり(参考)、統合失調症からの適応拡大が検討されています。

  3. ニューロクライン社は当社ライセンスのムスカリン作動薬ポートフォリオ(4剤)に注力
    • ニューロクライン社は現在、NBI-1117568に加えて、M1/M4作動薬、M1 pref.作動薬、M4 pref.作動薬の合わせて4つのムスカリン作動薬を開発しており、直近のカンファレンスでも「全体的な忍容性や安全性の観点からベストなものを選び、認知症やその他の疾患、精神疾患にこれらの化合物を適用し、最終的にどのような製品特性がどの疾患症状にふさわしいかを見ていく予定」「フェーズ1の臨床試験デザインはかなり似通っていて、健康なボランティアを用いて同じようなバイオマーカーを調べることが可能。これらの効果を比較し、安全性や忍容性を見ることで、Ph2に進めるにあたり最適なものを一つもしくは複数選んでいくつもりです」とコメントしており、ムスカリン作動薬ポートフォリオを一体的に評価して、さらに臨床開発を進めていく方針を明確にしています。

表:KarXT、Emraclidineの各試験結果
試験
終了日
試験名
開発品
開発
フェーズ
観察
期間
試験人数
(enroll)
試験結果
Total PANSSPANSS PositivePANSS Negative
調整後実薬プラセボ調整後実薬プラセボ調整後実薬プラセボ
2019/9/4EMERGETN-1KarXTPh25週間182-11.6-17.4-5.9-3.2-5.6-2.4-2.3-3.2-0.9
2020/9/17EMPOWER-1Emraclidine
(30mg)
Ph1b6週間54-12.7-19.5-6.8-4.3-6.8-2.5-3.1-3.00.1
2022/5/24EMERGETN-2KarXTPh35週間252-9.6-21.2-11.6-2.9-6.8-3.9-1.8-3.4-1.6
2022/12/7EMERGETN-3KarXTPh35週間256-8.4-20.6-12.2-3.5-7.1-3.6-0.8-2.7-1.8


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2024年6月27日木曜日

AbbVie社との提携における進捗で10百万ドルを受領

 みなさんこんばんは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

今朝のリリースの通り、神経疾患をターゲットとしたAbbVie社との創薬提携で、マイルストンを達成しました。これにより当社は10百万ドル(約16億円)を受領いたします。本マイルストンは、2024年12月期第2四半期に一括で受領しますが、複数年に分けて収益計上をする予定です。

AbbVie社とは2022年8月から神経疾患の創薬提携をスタートしていますが、今回は神経疾患領域の提携における初めての進捗となります。(提携開始のプレスリリース

今回達成した具体的な内容やターゲットとなっているGPCRの詳細は残念ながらお話しすることはできませんが、研究段階ではあるものの着実にプロジェクトが前に進めたことを一同喜んでおります。

AbbVie社は神経疾患における研究開発を強化しており、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患だけでなく、統合失調症などの精神疾患についても注力しています。ご存じの方も多いかと思いますが、昨年にはパーキンソン病治療薬や統合失調症治療薬のEmraclidine(ムスカリンM4-PAM)を開発しているCerevel社を約90億ドル(約1.4兆円)で買収しています。

ここ10年で見ると、AbbVie社はがんの次に中枢神経系のライセンシング活動に費用をかけており、今後も当社との提携をはじめAbbVie社がこの領域に注力していくことが期待されます。

2014~2024年におけるAbbVie社の疾患領域別のディール額の割合

出所:Evaluate pharmaより当社分析


また、昨日は遅い時間にも関わらず、多くの方に説明会にご参加いただきましてありがとうございました。普段直接お話する機会がない個人投資家の皆さまと交流することができ、CFOの野村も非常に喜んでおりました。7月に参加を予定している大阪でのイベントをはじめ、今後もこのようなイベントを継続的に開催をしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、口頭・文面でいただいた質問とその回答はまとめて本ブログでご紹介したいと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2024年6月26日水曜日

2023年12月期決算説明会のQ&A

みなさんこんにちは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

ご報告が大変遅くなり誠に申し訳ない限りですが、2024年2月13日(火)に2023年12月期の決算説明会を開催いたしました。お忙しい中にもかかわらず、312名という多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。

説明会中やアンケートなど、口頭・テキスト・メールなどでいただいた合計100件のご質問・ご意見・激励などのうち、重複を整理した以下の42件についてお答えいたします。(※カッコ内の数字は同様の趣旨の質問の数です)


  • 決算結果・今後の経営の方針について

Q1:黒字を維持する方針だったが、2023年の決算は赤字を出している。これは経営方針が変わったということか?(1)

A1:赤字をできるだけ避けるという経営方針には、変更ありません。2023年は契約一時金の期ズレ、M&Aに伴う一時費用、マイルストーン収入の低迷、など複数要素が重なり赤字となりました。一時的な黒字達成のために将来への投資を無理に圧縮することも物理的には可能ですが、それでは事業の成長は達成できず、デメリットがはるかに大きいと考えています。もちろん継続して収益が減る可能性がある場合には投資を減らす可能性はありますが、現在は今後数年の売上成長のための投資が必要だと考えています。

一方で、当社はこれまで製品を持っておらず、パイプラインの進捗に収益を依存してしまうことが課題でした。それを改善するために、昨年はイドルシアのビジネスを買収し、医薬品販売という安定的かつ高収益なビジネスを獲得しました。今後は安定的な収益を確保しながらも、コストについては継続的に見直して、必要な投資は行いつつも事業規模に見合った投資を続けていく予定です。


Q2:株価が低調な中で従業員や役員の報酬は高いままだが、今後の事業方針などをどのように考えているのか?(12)

A2:昨年の業績や株価はご期待に沿えない結果となってしまいましたが、2023年はプライム市場の上場やイドルシア買収など、今後の飛躍に向けた転換点と考えています。これまでの当社は、提携先の進捗によって株価や収益が大きな影響を受けざるを得ないのビジネスモデルでしたが、より安定的かつ自社でコントロール可能なビジネスモデルを目指し、昨年に日本・APACでの製品・販売機能を獲得いたしました。今後は、従来の最先端のテクノロジーに加え、獲得した製品・開発品の成長、さらに外部からの製品・開発品の導入により、安定的に収益を成長させるビジネスモデルに舵を切っていきます。このように新しい分野で今後の成長を加速させるためには、優秀な人材の確保が急務であり、コスト削減・スリム化を継続的に行いつつも、一定水準の報酬が必要な点をご理解いただければ幸いです。


Q3:株価対策のため、大規模な改善が必要ではないか(6)

A3:今後数年かけて、革新的な製品導入による売上拡大に加え、IT技術の導入によるコスト削減などを実施してくことで、業績の向上・外部からの評価獲得を目指していきたいと考えています。一方で、医薬品の開発は長い年月がかかり、一朝一夕に株価に反映される業界ではありません。当社としては、業績向上のための施策を着実に行っていき、それが株価として反映されるように努めてまいりますが、なにぶん時間がかかることはご了承いただければと思います。また、これまでも実施してきた本ブログを通じた投資家の皆さまへの説明や、個人投資家説明会の開催によるコミュニケーションにもより力を入れていく予定です。


Q4:現在の株価・経営の自己評価について教えてほしい(3)

A4:株価は振るわないものの、改革に向けて歩みを着実に進めており、今後の成果につながると確信しています。イドルシアジャパンの買収により、日本での販売機能と製品の獲得し、日本事業は収益化しています。また、3月に発表したベーリンガーインゲルハイム社との提携では、従来のトランスレーショナルメディシンへの取り組みを、高い経済条件につなげることができました。残念ながら、現在の株価は開発品に対する期待が織り込まれているとは言い難い状況ですが、今後、開発成果を通じて真価をお示しできればと思います。中長期を見据えつつ、できる限り早く次の時代のリーダーとなるべく邁進し、企業価値向上に努めてまいりたいと思います。


Q5:業績予想は開示できないのか(2)

A5:提携先に左右される契約一時金やマイルストンが売上げの多くを占める状況では、全社での、蓋然性の高い業績予想や中計は依然としてお示しが難しいと考えています。一方、従来のコスト面(研究開発費や販管費のレンジ)に加え、今回ピヴラッツの製品売上の予想・目標値についてはお出しさせていただきました。今後も合理的な予想が出せるものについては可能な限りお出ししていきたいと考えております。


Q6:コスト・売上のガイダンスの数字について、具体的な説明をしてほしい(1)

A6:コスト増の多くは、IPJ/IPKのコストが通期でかかることによるもので、そのほかに買収後の統合関連費用、製品発売に向けた準備費用とご理解いただければと思います。IPJ/IPKの買収を2023年7月に実施したため、2023年12月期は5.4か月分のコストのみ計上していました。2024年は通期のコストとなるため、IPJ/IPKのコストは2023年比で2倍強となる見込みです。


Q7:パイプラインの今後の見通しについて公表できることはないのか(1)

A7:各パイプラインの進捗は臨床試験の成否に依存しており、見通し(予想)は困難ですが、進捗についてはわかり次第適時開示やお知らせ・本ブログ等を通じて随時情報を公表させていただきます。


Q8:ヘプタレスは期待通りの成果をあげられているのか(1)

A8:ヘプタレスはこれまでも価値の高い提携をいくつも実現させており、期待通りの成果を上げております。また、今後もAI創薬をはじめとする最新技術を導入し、他社と差別化された技術による効率的な創薬・開発を行っていきます。一方で、コストがかかる部分はスリム化することも必要ですので、競争力維持を目指して適切な研究開発体制を整えていきます。


  • 会社目標について

Q9:時価総額上位15位は、製薬企業で15位という意味か。であれば15位は目標が低すぎる。具体的にはいくらを想定しているのか。もっと高い目標を掲げてほしい(14)

A9:2024年2月のブログ株主総会の質疑応答で補足の通り、「時価総額で日本国内の製薬企業の時価総額Top15位以上に入ることを目指す」という意味になります。2030 年「まで」と書いている通り、これは最低限のスピードで、実際にはできるだけ早くこの目標を達成する考えです。また、今年、発表が予定されているM4作動薬(ニューロクライン社)のPh2試験結果や、次世代経口GLP-1作動薬(ファイザー社)の進捗によっては、早々に達成されうるとも考えています。ただし、当社自身の努力では左右しがたいパートナー次第の進展を会社目標として設定するのは適切ではないと考え、パートナーの開発が仮に不調に終わっても、自社の努力・戦略で達成すべき目標として、15位以上を設定いたしました。説明が不十分で混乱を招き申し訳ございません。誤解を招かないために、今後より一層コミュニケーションには注意を払っていきたいと思います。


Q10:新規の導入候補はイドルシアからのオプション権行使を想定しているのか。それともイドルシア以外からの導入も検討しているのか(1)

A10:新規の導入候補については、イドルシアからのオプション以外のものを指しております。当然イドルシアからのオプション権を保有しているプログラムは導入の要否について検討を進めておりますが、それ以外の品目についても現在幅広く導入の検討を進めています。これは、当社が日本・APACにおいて製薬企業としてより安定的な収益を確保し、プレゼンスを向上するために必要な活動だと考えています。今後また進捗があり次第プレスリリースや本ブログでもご紹介できればと思います。


Q11:昨年からの継続案件も合わせると、新規提携は2つ以上目指すのか。また、大型の記載がないのは規模が小さくなったからなのか(9)

A11:新規提携については、残りの期間も引き続き価値の高い新規提携を目指していきます。昨年から続けていた交渉が今年にずれ込んだことで昨年の目標が未達となりました。311日に発表させていただいたベーリンガーインゲルハイム社との提携だけでなく、今後も継続的なパイプライン拡充・技術の強化を目指し、新規の提携を目指していきます。ただし、今回のような大型の契約一時金が発生するパイプライン提携だけでなく、基礎研究段階での提携も含め幅広く可能性を検討していく予定です。


Q12:新規提携について、1月実施であることをにおわせていたにもかかわらず遅延をしている。発言には注意をしてほしい(5)

A12:誤解を招く表現で恐縮です。今後についても細心の注意を払い誤解のないような形で発信をしていきたいと思います。


  • 個別パイプラインについて

Q13:ピヴラッツの薬価対策について考えているのか(1)

A13:薬価については過度な下落が無いよう細心の注意を払ってまいります。現在、発売三年目ですが、薬価は発売時を同じ金額を保っています。


Q14:ピヴラッツのAPAC展開について考えているのか(1)

A14:現在検討中ですが、詳細についてはお話しできません。ピヴラッツだけでなく、ダリドレキサントや今後導入するプログラムについても、市場性があればAPACへの展開も考えていきます


Q15:ガイドライン収載のおかげでピヴラッツの販売推移は順調なのか。また、買収時の見込みと比較して期待通りの実績を出しているのか(1)

A15:他の治療薬と比較して高いエビデンスでガイドラインに収載されて事もあり、ピヴラッツの販売推移は順調に進捗しております。買収時の見込みについて具体的な数字をお話しすることはできませんが、販売の伸びとしては買収時の期待通りの推移となっております。


Q16:ダリドレキサントの製品名としていい名前を付けてください。期待しています(1)

A16:ありがとうございます。製品名は当社からの要望だけでなく、医療現場においての混乱を避けるためにもわかりやすさも考慮して決定されますので、その点はご了承いただければと思います。


Q17:ダリドレキサントの売上について、当社と塩野義・持田との売上比率の目安について教えてほしい(1)

A17:申し訳ございませんが、持田製薬との契約詳細とも関連しますので、こちらの比率・目算については開示できないことはご了承いただければと思います。弊社としても一定の市場シェアをとれることを前提に、準備を進めております。


Q18:ダリドレキサントの国内における販売戦略や、販売目標はどの程度か(1)

A18:申し訳ございませんが、販売戦略や販売計画については当社の戦略方向性にかかわることもあるため、基本的に非開示とさせていただいております。ただし、デュアルオレキシン作動薬(DORA)がすでに先行薬があり認知度は高いため、DORA内での差別化要素を医療従事者・患者さまの皆様に認知していただく必要があると考えております。それに向けて弊社の中でも販売・マーケティングの方向性を決めておりますので、また適切なタイミングでお話しさせていただければ幸いです。


Q19:ダリドレキサントの韓国開発が遅れている要因は何があるのか(1)

A19:韓国においては限られたリソースで複数のプロジェクトを実行していることから開発開始については若干の遅延が生じておりますが、承認申請の時期については遅延が少なくなるように計画をしております。韓国法人は立ち上げから比較的日が浅く、ピヴラッツの上市に向けた準備にも力を注いでいます。加えて効率的に事業を行うため、外部との提携やその交渉などを含め、事業を前進させています。


Q20:Neurocrineが開発しているM4作動薬の2品目については、違いを教えてほしい(2)

A20:こちらは以前のブログでも少しご説明をさせていただきましたが、NBI-1117569M4preferring作動薬と記載がある通り、受容体に対する選択性を調整しているものになります。ムスカリン受容体は複数の種類(M1M4など)がありますが、どれをどの程度の選択性で作動させれば有効性・安全性を最大化できるか、まだ未解明な部分も多くあります。ニューロクライン社は選択性の異なる複数のパイプラインを用意し、どれがどの疾患・症状に対して有効性・安全性が最大となるかを模索していると考えられます。先行パイプラインがうまくいかなかった場合のバックアップとしても活躍する可能性がありますが、違う適応症を狙う化合物としても活用可能と考えていただければと思います。

また、ムスカリン作動薬は古くから認知症に対して有効性を持つことがわかっていますが、NBI-1117569がどの適応症を狙うかは現時点では定かではありません。これも先行パイプラインや本プログラムの臨床試験結果を見て、どの適応症を狙うのかを判断すると考えています。

Q21:M1/M4のデュアル作動薬について、患者投与は終わっているはず。マイルストンは入らないのか。入るとしたらどのタイミングか(1)

A21:詳細をお話しすることはできませんが、ニューロクライン社との契約においては、単なる患者の投与だけでなく、マイルストン発生のために一定の条件を満たす必要があります。M1/M4デュアルについては、現状その条件を満たしていないためマイルストンが発生していません。今後マイルストンが発生する事象が発生したらすみやかに開示をし、皆さまにお知らせいたします。


Q22:M4のマイルストンはどのタイミングで受領できるのか(2)

A22:先日のリリースで発表させていただいた長期毒性試験のマイルストン含め、複数のマイルストンが設定されております。今後のマイルストン時期は契約上詳しくはお示しできませんが、重要な事業上の進展と紐づいて受領することが一般的と考えています。


Q23:M4は中間解析を実施する予定はあるのか(1)

A23:ニューロクライン社が実施している臨床試験となるため、中間解析の有無について当社からの明確な回答はできかねますが、ニューロクライン社発表の通り2024年第3四半期にトップライン結果が出ることが想定されており、そこまで中間解析の結果は出ないと考えらます。


Q24:自社開発に載っているM1M1 Pref. agonistとは異なるのか。また、今後の開発計画について教えてほしい(1)

A24:自社開発に載っているM1は、ニューロクライン社への導出いているM1 preferring agonistと同じの化合物ですスケジュールについては、ニューロクライン社の臨床試験の進捗を見て判断をする予定です。昨年から規制当局からの要求事項が変わり、海外でのデータで日本でのPh1臨床試験のスキップや短縮ができる可能性も出てきていますので、規制動向も踏まえ、日本での開発計画については総合的に判断をしたいと思っています。


Q25:M1の国内開発は自社でやるのであれば、米国での結果を待たず早期に実施すべきではないのか(1)

A25:開発スピードを考慮しても、国内治験を先んじて実施するメリットは小さいと考えています。日本での上市を考えた場合、ピボタル試験(承認申請に向けて重要な試験。通常はPh3試験)を日本で実施、もしくは日本人のデータを取得する必要があります。そのため、グローバルでの上市を目指す品目については、開発の途中から(例えばPh2の途中から)日本を臨床試験サイトに入れて国内上市を目指すことはよく行われています。そのため、ニューロクライン社が開発を止めた場合は別ですが、Ph1(場合によってはPh2)の結果を待ってから国内開発を行っても開発スピードは大きく変わらないことから、現時点での自社開発は考えておりません。


Q26:提携先とは十分なコミュニケーションをとって進捗を共有しているのか(1)

A26基本的には各社のトップマネジメントとは密にコミュニケーションをとっており、かつ常に最新の情報を共有してもらうように働きかけています。一方で、パートナー・プログラムごとに個別事情があることから、すべての情報を弊社の独断で開示することが難しくなっております。今後とも皆様にはできるだけ情報をお出しできるようにパートナーとは継続的に交渉をしてまいります。


Q27:IBDの各パイプラインの差別化要素、特に既存薬との差別化は何か(1)

A27:CCR6拮抗薬、EP4作動薬は腸管局所での免疫系の抑制とバリア機能の回復、GPR35は腸管バリア機能の回復という点で差別化を図り、置き換えや既存治療への追加を目指しています。ただし、優位性についてはまだ直接比較のデータがないことから発言を控えさせていただきます。簡単な作用機序としては、以下の通りです。

  1. CCR6様々な免疫反応に関与している分子であり、炎症シグナルを抑制
  2. EP4CCR6同様に様々な免疫反応に関与している分子であり、炎症シグナルを抑制。また、バリア機能を担うIL-10を促進することで、腸管のバリア修復を促進することも期待されている
  3. GPR35:腸管のバリア機能を回復させ、「炎症→バリア機能の喪失→炎症反応の促進」という負のサイクルを止めることで症状の回復を図る。
既存薬は静脈・皮下注射による全身投与が主であるのに対し、弊社のパイプラインは経口投与ができるうえ、全身曝露が少なくなるような設計にしているため、腸管局所での作用増強と全身の副作用の低減が期待できます。
GPR35作動薬は全く新しいメカニズムであり、免疫系の抑制とは作用も異なることから、既存薬に加え投与されることも考えられます。一方で、これらの優位性や使い分けは、今後の臨床試験の結果によって大きく変わることもありうるため、現時点での見込みであることはご承知いただければと思います。

Q28:ペプチドリームとの提携は順調に進捗しているのか(1)

A28:創薬研究は順調に行っている場合でも成果が目に見えるまで長期になることが多く、皆さまの目には進捗がないように映る場合もあるかと思います。ただし、内部では研究開発を進めておりますので、何かご報告ができる成果が出てきたら適宜お知らせをしたいと思います。


Q29:コロナ治療薬の進捗はどうなっているか(1)

A29:COVID-19の治療薬については当社の中で優先度を下げて開発を行っています。まだ一定の感染者数はいるものの、COVID-19の世界的な流行がいったん収まったこと、すでに有効な治療薬もいくつか存在し、当社がこの領域に注力し新薬を開発する意義が薄れたこともあり、全社的には優先度を下げております。


Q30:自社開発品の進捗はどうなっているか。特に新しい前臨床開発品は最近進捗が見られないが、進捗が悪いのか(3)

A30:開示できる部分は限られていますが、探索→前臨床、臨床プログラムともに順調に進捗しています。探索から前臨床の段階では、今年複数のプログラムでの進捗が予定されています。発表できる形になりましたら、開示や本ブログを通じてご紹介させていただきます。


Q31:返還交渉をしているパイプラインの進捗はどうなっているか。また、どのような場合に自社開発をするなど判断をするのか(2)

A31:GPR35に関しては、3/21のリリースの通り、GSKからの返還が完了しました。GPR35作動薬については、今後自社開発・他社への導出含め、返還されたデータを精査し、今後の対応を決めていきたいと考えています。アストラゼネカからの返還については、現在進捗については非公開としていますが、今後お知らせすべき事項が発生した際にはしかるべきタイミングでお知らせをいたします。


Q32:各役員が期待している自社のパイプラインは何か(1)

A32:個別の役員が期待しているパイプラインをすべて書いてしまうと、ここではご説明ができなくなってしまうので詳細は割愛させていただきますが、今年発売予定のダリドレキサントや提携パイプラインであるM4作動薬は各役員期待をしております。ダリドレキサントについては今後の収益貢献、M4についてはPh2のトップライン結果次第では大きな収益を生む可能性があり、各役員も注目をしています。


  • 今後の導入品候補について

Q33:イドルシアの臨床開発能力を生かして、どのような候補品を国内開発していく予定か(1)

A33:当社が差別化でき、かつ日本の患者さまにとって有益となる疾患かを見極め、開発を進めていく予定です。IPJ/IPKを買収したことで当社は自社開発・販売が可能となりましたが、大手製薬と比較すると開発・販売部隊の規模は小さいです。そのため、今後数年では当社の規模でも他社と十分戦え、かつ日本の患者さまに貢献できる領域を見極めていく必要があります。その一例として、患者さまの数が少なく、アンメットニーズが多い希少疾患があげられます。

希少疾患以外にもこのような領域はいくつかあり、その中で当社の能力・方針に合致した領域を見極めていく予定です。具体的な戦略については、皆さまにお話しできるようになったタイミングでお話しできればと思います。


Q34:イドルシアからのオプション権を保有する開発品について、どの程度のポテンシャルがあると評価しているのか(1)

A34:独占的オプション権を保有するものについては、Ph3にあることから一般的に成功確率は比較的高いと考えられますが、優先交渉権および優先拒否権を有する5品目は開発段階から考えれば、成功確率は独占的オプション権を持つ2品ほどには高くないと考えています。実際にはこれら7品目をすべて導入するわけではなく、当社の戦略と合致し魅力的な数品目を導入することを検討しています。

Cenerimodについてはすでにお知らせしたように、スイスのイドルシア社がヴィアトリス社とライセンス契約を締結し、グローバル開発が加速することから、上市の確率も高まると想定されます。そのほかはPh1からPh3とばらつきがあるため、すべてを申し上げることはしませんが、当社としてはACT-777991CXCR3拮抗薬、発症早期の1型糖尿病治療薬)には注目をしています。 ただし、これらの優先交渉権・優先拒否権を有するプログラムについては、今後の臨床開発の結果を見極めて、交渉へと進むかを判断をしたいと思っています。


  • その他

Q35:GLP-1M4などの市場の活発化が自社の製品成功・パイプラインの価値拡大にどうつながっていくのか(1)

A35製品の成功には直接影響はないものの、活発化している市場に有望パイプラインを持っていることは企業全体の評価向上につながります。GLP-1の市場については、Pfizer社が開発するパイプラインだけでなく、Eli Lilly社や自社開発でも複数の研究プログラムが進んでおり、市場が活発化するとそのパイプラインを保有する当社の価値も評価されやすくなります。

また、M4については製薬大手各社が大型買収を行っていることからも、この市場に対して非常に大きな魅力を感じている、つまり今後大型化する製品が生まれると考えている領域です。ムスカリン作動薬は様々な適応疾患が考えられており、安全性・有効性が確かめられるとムスカリンポートフォリオ全体の価値も高くなっていくと考えています。

Q36:優先交渉権はわかるが、優先拒否権の意味はどのようなものか(1)

A36:優先交渉権と優先拒否権は、同様の意味で使われているものと考えていただいて結構です。細かくは優先交渉権は「第三者に先んじて最初の権利を与えられる」もの、優先拒否権は「提示されたオファーに対して最初に拒否を行うことができる」ものということになりますが、実質的な違いはないものと考えていただければと思います。


Q37:導入した場合決定しておりますが計上される費用となるのか、それとも数年にわたって償却されるのか(1)

A37:こちらは契約の内容によって変わる可能性があるため、導入が決定した際には個別に開示させていただきます。当社は国際会計基準に従い資産となる見込みがあるもの」は数年にわたって償却し、そうでないものは一括で計上するようにしております。


Q38:重要な発表前において株価が変動しているが、インサイダー情報が流出しているなどはないか(1)

A38:当社は株価の変動が普段から比較的大きい傾向にあり、その他の情報などを精査しても、現時点でインサイダー取引は認識しておりません。仮にインサイダー取引が行われていた場合には、規制当局による厳正な対処が行われるものと理解しています。いつも通りのご説明となり恐縮ですが、当社の株式はテクニカルな取引の対象となる可能性があり、そのような取引が行われたことによる影響もあると考えております。


Q39:記念配当の予定はあるか(1)

A39:株主総会の質疑応答要旨にもありますように、状況に応じて検討する可能性はありますが、現時点では計画はありません。もしパイプラインの進捗に応じて大きなマイルストンが入ってくるようになり、それらが大きな収益を生んだ場合は特別配当を考慮することもあり得ます。


Q40:説明会の時間を延長することや、説明会を複数やるなど個人投資家から質疑もできるようにさせてほしい(10)

A40:ご意見いただきありがとうございます。今後のイベント運営については、個人投資家への説明会開催を含め、皆さまとしっかりコミュニケーションが取れるような形にしていきたいと思います。四半期ごとでの説明会開催というのは難しいかもしれませんが、これまで以上に皆さまと接点を持てる施策を打っていきたいと思います。


Q41:音声が聞き取りにくい(1)

A41:大変申し訳ございませんでした。いただいたご意見を今後の運営に活かしていきたいと思います。


Q42:心から応援しています。がんばれ!(1)

A42:コメントありがとうございます。これからも、皆さまにわかりやすく情報を提供し企業価値向上に向けて一同頑張ってまいりますので、引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2024年6月17日月曜日

BioCenturyのポッドキャストに当社CEOのクリス・カーギルが出演しました

皆さまこんにちは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

先週金曜日の6/14に、当社CEOのクリス・カーギルがBioCentury社のPodcastに出演し、ドラッグラグ・ロスの状況を含めた日本の製薬産業や対する課題や、当社がその課題に取り組むことの意義について話しました。

ポッドキャストを聞くにはこちら(英語のみ。9分12秒~)

BioCentury社は、世界中の製薬企業の経営者や機関投資家などに医薬品産業の最新情報を発信している会社で、週1-2回のポッドキャストでは主要学会のハイライトなど、様々な情報を発信しています。

今回のポッドキャストでの当社パートについて、かいつまんでご紹介いたします。

  • 今月米国サンディエゴで開催されたBIO International Convention(製薬産業の大きなビジネス会議)では、APAC、特に日本や韓国の注目度が高まっていると感じた。日本はいまだに大きな市場を持っており、米国でのバイオテック企業も日本でのビジネスについて意欲的であると感じた
  • 日本は大学などの学術研究の質の高さは知られていて、KOL(Key Opinion Leader)へのアクセスもいいことから、臨床試験を行うための環境は整っている
  • 一方で、欧米での承認薬のうち70%近くが日本において未承認であり、ドラッグラグ・ドラッグロスが問題となっている。そのため、この状況を改善しようと官民でいろいろな施策が実行されつつある
  • 当社は、今後数年間で欧米発のパイプラインを導入し、日本の患者さまにイノベーションを届けていきたいと考えている。その一環として、当社はWorld Orphan Drug Alliance(WODA)へ参画し、希少疾患の治療薬を日本や韓国の患者さまに届けることに貢献できればと思っている

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

2024年5月30日木曜日

Centessaからのマイルストン受領とPresicionLife社との提携拡大

皆さまこんにちは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

本日2件のリリースを発表させていただきました。


1件目はCentessa社からのマイルストン受領です。

Centessa社が開発中のORX750がP1試験を開始したことに関連し、当社は724万円(4.6百万ドル)のマイルストンを受領しました。

ORX750はオレキシン2受容体に作用する作動薬で、主にナルコレプシー1型(NT1)の治療を目的として開発されています。今回のP1試験では健常人を対象とし、安全性や忍容性などの項目だけでなく、有効性のシグナルを確認するProof-of-Concept(PoC)の試験も行う予定です。(詳しくは4/22のCentessa社からの発表をご覧ください)

Centessa社は今年の後半にはPoCのデータを得られるとしており、かなり迅速に開発を進めていることがわかるかと思います。以前のブログでも申し上げたように、この領域は注目度が高まってきており武田をはじめとし市場としても盛り上がってきています。Centessa社がORX750を力強く推進していることは、当社としても心強く感じています。

なお、今回の進捗について発表が遅れている旨のご指摘をいくつかいただきました。進捗を逐次発表することも可能ではありますが、小さいイベントも含めすべて発表するとかえって混乱を招くことから、当社は東証の基準に従い適時開示を実施しております。提携先のHPやClinincal trial.govなどのデータをご覧になられている方からすると、情報公開が遅いと感じられてしまうかもしれませんが、重要な情報は当ブログからの発信により補足もさせていただきますので、ご理解いただけますと幸いです。


もう1件はPresicionLife社との提携拡大です。

PresicionLife社とは神経科学分野での研究を目的とし2022年に共同研究契約を締結していました。今回は神経科学分野に加え、自己免疫疾患へ対象疾患を広げることを決定しました。

PresicionLife社は慢性疾患の研究を行う企業で、DiseaseBank™と呼ばれるゲノム情報などのオミックス情報を含む慢性疾患の研究結果をまとめたデータバンクを活用し、病気の原因特定や治療の個別化を目指している会社です。(詳しくはPresicionLife社HPの説明をご覧ください)

多くの疾患は複数の要因の組み合わせで発症することがわかってきており、PresicionLife社はDiseaseBank™のデータを分析することで、原因となる組み合わせを見つける技術を持っています。また、その要因によって患者をグループ化することで、より最適な治療薬を見つける手助けもできるようになります。

PresicionLife社との提携を強化したことで創薬や早期開発を加速させ、より早くいい薬を患者さまに届けられるよう引き続き一同頑張っていきます。


これからも、よろしくお願いします!

2024年5月9日木曜日

1Q決算とM1作動薬NBI-1117567のP1開始を発表しました

 みなさんこんばんは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

本日5月9日(木)に2024年期第1四半期の決算を発表いたしました。また、ニューロクライン社が進めるM1作動薬のNBI-1117567のP1臨床試験開始も発表いたしました。


決算ハイライト

決算短信

ご参考:最新版のコーポレートプレゼンテーション

M1作動薬のプレスリリース


以下それぞれポイントを絞ってご説明いたします。

Q1決算

詳細な数字は決算短信(参考)をご覧いただきたいのですが、売上高46.1億円(昨年は9.4億円)、営業赤字30.8億円(昨年は19.6億円の赤字)となりました。ベーリンガーインゲルハイム社との新規提携や、ピヴラッツの売上により昨年に比べ収益は大幅に増えましたが、費用面でもNPJ/NPK事業関連を含め費用増となりました。


【セグメント別の売上高、営業損益・コア営業損益(決算短信:P7、コーポレートプレゼンテーション:P30)】

【ピヴラッツの薬価ベースの売上推移(コーポレートプレゼンテーション:P32)】


【1Q決算のブレークダウン(コーポレートプレゼンテーション:P31)】


対象疾患であるくも膜下出血は冬に多くなること、病院では一定の備蓄をするため使用時期と購入時期にずれがあることから、昨年と同様4Qから1Qにかけてピヴラッツの売り上げは減少しています。ただし、昨年1Qと比較すると約19%売り上げが伸びており、順調に市場に浸透していることがわかっていただけるかと思います。

また、3月にベーリンガーインゲルハイム社(BI社)との提携を発表し、契約一時金が入ったことで収益が増加しました。なお、BI社との契約一時金の総額は約41億円ですが、その一部のみを1Qの売上として計上しています。

コスト面では、NPJ/NPK(旧IPJ/旧IPK)の統合関連の一時的もしくは非現金の支出が引き続き発生しているため、コア営業損益と営業損益の差が大きくなっています。

研究開発ではFormosa社のクロベタゾールプロピ オン酸エステル点眼液 0.05%のFDA承認取得、IBD治療薬候補のGPR35作動薬の権利再取得完了、IBD治療薬候補のEP4受容体作動薬のP1開始など、収益に対する貢献は大きくはないもののいくつかの重要な進捗がありました。

M1作動薬のP1開始
昨日提携先のニューロクライン社がM1作動薬(M1 preferring agonist)であるNBI-1117567のP1開始を発表しました(ニューロクライン社のリリースはこちら)。NBI-1117567はM1/M4受容体双方に作用するものの、M1の方への選択性が高い分子であり、精神・神経疾患における認知症状の治療を目的とした化合物です。

これで当社が創出し、ニューロクライン社が臨床試験を行うムスカリン作動薬は以下の4つとなりました。

  ● NBI-1117568:M4作動薬Phase2試験中(24年3Qデータ発表予定)
  ● NBI-1117570:M1/M4作動薬Phase1試験中
  ● NBI-1117569:M4作動薬(M4-Preferring)Phase1試験中
  ● NBI-1117567:M1作動薬(M1-Preferring)Phase1試験開始

なお、以前のブログでもご説明した通り、NBI-1117567について、我々は日本での開発販売権を持っています。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

2024年5月2日木曜日

ニューロクライン社が1Q決算を発表

みなさんおはようございます。CFOの野村です。

昨晩、我々の提携先のニューロクライン社とファイザー社が24年1Q決算を発表しました。大きなアップデートはありませんでしたが、ニューロクライン社のM4作動薬(NBI-1117568)について、今年の3Q(7-9月)に現在進行中のフェーズ2試験の結果が発表されることになりました。従来の予定だった下期(7-12月)や、ClinicalTrials.gov(臨床試験のデータベース)の12月よりもやや前倒しの進捗となり、順調な進捗を我々も嬉しく思っています。詳細は以下をご覧ください。

●ニューロクライン社説明資料
当社がライセンスしているM4作動薬(NBI-1117568)をはじめとしたムスカリン作動薬シリーズ(以下、黄色マーカー)について、いずれも順調に進捗しているとの説明がありました。



説明会の中でも、M4作動薬の患者組入れを含めたプログラム全体の順調な進捗に対して、いくつかのコメントがありました。

"We are really happy with the progress we've made with 568 and happy to be able to share that. In the third quarter we'll be coming forward with data."
(NBI-1117568の進展とそれを皆さんとシェアできることにとても満足しています。今年の3Q(7-9月)にデータを発表する予定です)

"One last comment, just a big shout out to the muscarinic team. This is an example at Neurocrine, it's a very important program. We're able to really push forward the timing of when we'd expect top line data, I think by a couple of quarters."
(最後にムスカリンチームにエールを送りたいと思います。これは非常に重要なプログラムですが、(NBI-1117568の)データ発表時期を数四半期、前倒しすることができました)


●ファイザー社パイプライン
大きなアップデートはありませんでしたが、当社との提携から生まれた3つのパイプラインについては、いずれもパイプライン表やClinicalTrials.govで順調に進んでいることが確認されました。

GLP-1作動薬(PF-06954522/糖尿病・肥満)
今年2月に健康な方に対するフェーズ1a試験が終了した直後に、患者さまを対象としたフェーズ1b試験が開始され、現在進行中です。また、4月末にはいくつかの剤形をテストする新たなフェーズ1試験の開始が登録されました。

MC4拮抗薬(PF-07258669/栄養失調)
昨年7月に2つ目のフェーズ1試験が完了しており、 今年2月には最初のフェーズ1試験の結果がデータベースに登録されました。今後の開発進展に期待したいと思います。

CCR6拮抗薬(PF-07054894/炎症性腸疾患)
現在進行中の、患者さまを対象としたフェーズ1b試験について、今年の4月に、終了時期の前倒し(今年10月→7月)がデータベースに登録されました。また、同じく今年の4月に、新たに日本人を対象としたフェーズ1試験の開始が登録されました。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!