2024年9月2日月曜日

ニューロクライン社から35百万米ドルのマイルストン受領

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。


先ほどリリースの通り、M4作動薬(NBI-1117568)について当社とニューロクライン社は、両社間で、先日のフェーズ2試験結果を含めて、事前に定められた全ての要件が達成されたと確認しました。これを受け、当社は35百万米ドル(約51億円)のマイルストンをニューロクライン社から受領します。なお、本マイルストンは24年3Qに一括計上されます。

また、8/28のリリース(リンク)後に多くのお問い合わせをいただきましたので、この場を借りて、可能な範囲で回答させていただきます。既にニューロクライン社にライセンスしているため、当社から回答が難しい点があることをご了承ください。



Q1:8/28に良好な結果を発表したにも関わらず、なぜ株価は下落したのか?

A1:ニューロクライン社の投資家の事前の期待がとても高かったことの反動が大きかったと考えています。特に、用量依存性が見られなかったことが投資家の疑問につながったと考えていますが、株価変動は様々な要素に要因が絡み合うため断定はできません。他方で、当社の株価は事前の過熱感が大きくなかったこと、また、フェーズ3に進むのに十二分なデータが得られたこと、当社プラットフォームの有用性が臨床試験で実証できたことなどから、中長期的なポテンシャルは大きく上昇したと考えています。


Q2:なぜ試験結果発表と同時に、マイルストン受領とはならなかったのか?

A2:マイルストン受領要件は複数あり、加えて細かく契約で定められているためです。詳細はお伝え出来ませんが、特にPOC取得に関連する本マイルストンは、M4作動薬の将来性を決める上でニューロクライン社・当社の双方にとって極めて重要なものであり、その要件をすべて満たしたことが両社によって確認されて初めて、マイルストンの受領が確定します。


Q3:今回のP2の試験結果はPOCが取れたという理解でいいか?

A3:POCは取れたと認識しています。プラセボ群と比較して、20mg投与群では統計的に有意な効果が確認できたうえ、良好な安全性・忍容性を確認できました。これは、NBI-568がムスカリンM4受容体選択的オルソステリック作動薬として期待通りの作用を発揮し、かつ統合失調症に対して効果を発揮した結果だと考えています。


Q4:投与量を増やしたのに効果が下がることはよくあるのか?

A4:精神疾患の治療薬においては比較的、良くある現象です。以下の文献(リンク)は、統合失調症の急性症状に対する抗精神病薬の用量・反応曲線を調べた論文ですが、例としてハロペリドール、リスペリドンなどがベル型の用量・反応曲線を描いています。また、顕著なのはAmisulpride(最下段真ん中)で、用量を上げすぎると効果がほとんど無くなるという結果が出ています。このように、用量を上げて効果が下がる医薬品は数多く知られています。

Leucht, Stefan et al. “Dose-Response Meta-Analysis of Antipsychotic Drugs for Acute Schizophrenia.” The American journal of psychiatry vol. 177,4 (2020): 342-353. doi:10.1176/appi.ajp.2019.19010034

Q5:ニューロクライン社は20mgがベストだと事前に予想していたとコメントしていたが、それならなぜ低用量をP2で試さなかったのか?

A5:当社のコメントではないことに加え、ニューロクライン社の判断であるためお答えできません。フェーズP1試験のデザインは以下の通り公開されています。

  • M4作動薬の安全性、PK/PD、食事の影響の評価(リンク):用量は未公表
  • 経口投与後のM4作動薬の血中濃度の測定(リンク):10mgのみ
  • 経口投与後のM4作動薬の脳脊髄液中濃度の測定(リンク):10mg、20mg

フェーズ2試験の結果からは、M4作動薬の安全性はいずれの用量でも非常に高く、普通は安全性への懸念から躊躇しがちな、高容量の試験が行える環境だったと考えられます。用量は今回の試験でほぼ確定しましたので、フェーズ3試験ではより明確な根拠に基づく投与量が設定されると期待しています。


Q6:NBI-568は有効性の面で他社と比較して劣っているのか?

A6:他社の開発品と同等程度の有効性と考えています。今回の試験は20mg投与群がN=35であり、少人数での試験であったことから数値のばらつきも大きいです。ニューロクライン社のQ&Aでもあったように、5週時点から6週時点でプラセボ調整の改善幅が10.0→7.5と変化したのもばらつきが要因だと考えられます。そのため、現時点で他社と改善幅が1-2違う点から有効性の優劣を議論できる状態ではなく、今後のP3の結果が重要になってくると考えられます。

注:対象としている患者群、実施施設、時期なども異なることから、違う臨床試験の結果を直接比較するのは実は好ましくありません。現段階で直接比較の臨床試験を行うのは現実的ではないため、違う臨床試験を参考にするしかありませんが、優劣を議論するにはさらなるデータが必要となることはご理解いただければと思います。


Q7:ネクセラファーマとして、今回のデータはどのように捉えているのか?

A7:大きな市場が見込める統合失調症治療薬の開発が前進したこともポジティブですが、当社のNxWave™プラットフォームの有用性を実際の臨床試験データで確認できたことは非常に大きなターニングポイントだったと考えています。ムスカリン受容体作動薬は副作用の原因となるM2、M3への作用をいかに抑えるかがカギとなりますが、構造がM4とも非常に似ているためこれまでM4特異的な作動薬の開発は困難でした。今回の臨床試験で心血管系・消化器系の副作用を抑え有効性を発揮できたことは、精密な分子設計が可能であることを示せたと考えています。

ムスカリン受容体に関する説明資料(2024年6月個人投資家説明会資料:P40)



また、コーポレートプレゼンについても最新のものにアップデートしました(リンク)。こちらもよろしければご覧ください。

今後とも、どうぞよろしくお願いします!