2023年8月14日月曜日

EP4拮抗薬のフェーズ1試験が始まりました

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


我々の自社開発品のEP4拮抗薬(HTL0039732)について、先週末に最初の被験者への投与が完了し、フェーズ1/2a試験が開始されました(参考)。被験者への投与は3Qになってしまいましたが、今年の上期に予定していた2つの臨床試験については、これでいずれも開始することができました。この試験は、世界最大の民間がん研究基金である英国王立がん研究基金:CRUKの資金で実施されますが(併用するチェックポイント阻害剤が高額なため投資効率が大きく高まります)、権利は当社が保持し、試験結果が良好であれば大手製薬企業等へのライセンスを行う予定です。


この試験はフェーズ1とフェーズ2aを連続して行うもので、合計150名の固形がんの患者さまの参加を予定しています(参考)。HTL0039732はがん免疫療法治療薬候補で、PD-1/PD-L1抗体など他のチェックポイント阻害薬の併用で高い効果が期待されています。このフェーズ1/2a試験でも単剤の他に、まずはチェックポイント阻害薬の1つであるロシュ社のテセントリク(2028年売上高予想1.1兆円:Evaluate Pharmaより)との併用で試験が行われる予定で、上記のサイトにもあるように、さらに他の治療薬との併用が試験に追加される可能性があります。


参考:R&D説明会資料(参考)より

青:治療なし
緑:HTL0039732(単剤)
黒:PD-1抗体(単剤)
赤:HTL0039732+PD-1抗体


昨年のR&D説明会資料でお示しした動物試験のデータでも、HTL0039732はPD-1抗体との併用で非常に高い効果が出ています。PD-1抗体を代表とするチェックポイント阻害薬は、がん治療に高い効果を発揮し、2028年の売上高は約720億ドル(約10兆円/Evaluate Pharmaより)に達すると見込まれていますが、平均して投与された患者さまの3~4割への効果に留まっており、特にマイクロサテライト安定性*(MSS)大腸がん、胃食道がん、頭頸部がん、去勢抵抗性前立腺がんなどでは、十分な効果が得られていません。HTL0039732を併用することで、これらのがんの患者さまへ十分な治療効果が得られることを願っています。


がん細胞にあるEP4受容体は、炎症とがんの成長に必要な血管新生を促進し、制御性T細胞(Treg)などを介して免疫反応を抑制することで、がんの成長を助け、がんが免疫で排除されるのを防いでいることが、近年明らかになってきています。我々とは直接関係ありませんが、日本の大学からも素晴らしい研究成果が発表されています(参考)。いくつかのEP4拮抗薬が臨床段階にありますが、最も進んでいるものでも早期のフェーズ2段階、かつ今回の150名の試験と比べるとかなり少人数の試験であり、HTL0039732が世界で初めて、EP4拮抗薬の有用性を明確に示すことを期待しています。


なお、リリース内にもある通り、HTL0039732は英国で新たに設定された承認支援スキームであるInnovative Licensing and Access Pathway(ILAP)のイノベーション・パスポートを取得しています(参考)。ILAPは2021年に新たに設立された、新薬承認を加速させるスキームで、まだ運用の実績が多くありませんが、端的にはこれまで主に企業が行ってきた臨床試験、承認、保険適用のプロセスに規制当局等が伴走し、より早い承認を企業と当局が協力して目指すスキームになります。日本の先駆け審査指定制度にも、一部、近いものを感じます。


がんはいまだに、世界中で多くの患者さまがいる、アンメットニーズが非常に大きな疾患です。我々のStaR技術による精密な創薬から生まれたHTL0039732が、多くの患者さまの助けになる、がん治療のブレークスルーとなれるよう全力で開発を進めていく所存です。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2023年8月6日日曜日

2Q決算を発表しました

みなさんこんばんは。CFOの野村です。


8月4日(金)に2023年12月期の上期決算を発表し、決算説明会を開催しました。決算説明会にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。詳細はリンクをご覧いただければと思いますが、以下でポイントを絞って解説します。


決算短信

決算説明資料

決算説明会動画 (WEBCASTのマークをクリック)


●業績の概要

売上高は21億円で前年度から12%減少しました。これは主にノバルティス社の主力製品(シーブリ、ウルティブロ)が発売から10年以上が経過し、ロイヤルティ収入が減少しているためです。例年、大手製薬企業等との新規提携などは下期に多い傾向がありますが、今年も例外ではなく、クリスからの説明にもあった通り、下期に向けて着実に新規契約や、既存契約の進展を加速させていきたいと思っています。


【主要決算数値(説明会資料:P6)



23年12月期の費用見込みやこれまでの費用消化については、当初の見込みから変更はありません。一方で、資料でも強調している通り、7月20日に発表・実施したイドルシア社の日本/APAC事業買収の影響は現在精査中で、ここには含まれていません。これらの影響は、次の連結の四半期決算(3Q決算:例年11月前半)以降に、より詳細にお示しさせていただく予定です


【23年12月期の費用見込み(説明会資料:P7)




●開発パイプライン

個別の進展はリリースでも開示していますが、主要パイプラインとその進捗は決算説明会資料P13の通りです。


自社開発品 - GPR52は7月3日に発表の通り、最初の被験者への投与が完了し、フェーズ1試験が開始されました(参考)。CRUKと共同で進めているEP4拮抗薬も、既に関連するWebサイトへの登録は完了しており(参考、最初の被験者への投与が間もなく始まると期待しています

Tempero Bio社 - 1月5日に開示の通り、Tempero Bio社(mGlu5NAM)の助成金受領とFDAからの臨床試験開始の承認が発表されました(参考)。

Centessa社 - 3月30日に開示されたCentessa社の通期決算で、当社がライセンスしているOX2作動薬のORX750のについて、前臨床試験を実施中であること、また、2023年後半に学会でデータを発表予定であることが発表されました参考)。

イドルシア社の日本+APAC事業の取得 - こちらは別途詳細をご説明の通りですが、本買収で日本での多くの製品・開発品を獲得しました(参考)。今年下期に絞っても、ダリドレキサントの日本での承認申請予定、ピヴラッツの韓国での承認取得など、多くの進展を期待しています。


【主要パイプラインと進捗(決算説明会資料:P13)





●その他

23年度はこれまでのところ業績面では例年と比べて大きな変化はありませんが、3月の東証プライム上場や、7月のイドルシア社(日本+APAC)買収など、我々の長年の目標を達成し、大きく事業を前進させることができた、非常に充実した期間でした。これらの進展をテコに、今後はヘプタレス社の最先端の創薬プラットフォーム技術と、イドルシア社の強力で効率的な開発・販売能力を両輪として、日本発で世界に冠たるバイオ企業となるべく、取り組みを加速させていきます。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!