2024年11月13日水曜日

Centessa社がORX750のPh2a試験を開始

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

先ほどのリリースの通り、Centessa社がORX750のPh2試験を開始しました。これにより当社は3.5百万ドル(約5.4億円)を受領します。

Centessa社がリリースに合わせてアップデートしたプレゼンテーション(リンク)の中からいくつかピックアップしてご説明します。ポイントは以下です。

  • 10/31時点でのORX750のPh1試験の中間解析データでは、試験したすべての用量で有効性が確認され、安全性・忍容性も良好だった
  • ORX750はナルコレプシー1型(NT1)、ナルコレプシー2型(NT2)、特発性過眠症(IH)に対してPh2a試験を開始。2025年内には3つすべての適応症に対するPh2aデータ取得が完了見込み
  • 当社との提携から生まれた後続のOX2R作動薬2品目(ORX142、ORX489)のうち、ORX142は前臨床試験中であり、急性睡眠不足の健常人に対する臨床試験の2025年開始を目指す。ORX489については、現在前臨床試験の準備中
  • Centessa社はOX2R作動薬ポートフォリオの開発に注力するため、今まで開発を行っていた血友病B向けのSerpin PCプログラムの開発中止を決定

【Centessa社プレゼン P8、Centessa社が開発するOX2R作動薬ポートフォリオ】

右側のテーブルは実験室における各化合物の活性を示しています。
「hOX2R EC50」は、「ヒトのOX2受容体(hOX2R)に対して50%の活性を示す濃度(EC50)」という意味で、これが低いほど活性が高いことを意味します。Centessa社が開発するOX2R作動薬ポートフォリオは、全てOX2Rに対する高い活性を持っています。また、OX1受容体(OX1R)に対する活性と比較しておよそ9000倍以上高いなど、高い選択性も持っています。OX1Rは依存性を高めるリスクがあることが指摘されているため、各社OX2Rに対する選択性を高める工夫をしています。

なお、実験系が異なることから直接比較はできないのですが、武田が開発中のTAK-861はEC50が2.5 nM、選択性(対OX1R比)は3000倍というデータが公表されています。(リンク

【Centessa社プレゼン P12-13、Ph1中間解析データ(10/31時点)】


最低用量の1.0mgでも有効性が見られたうえ、2.5 mg、3.5 mgの投与では急性睡眠不足を有する健常人の覚醒状態を通常状態まで戻すことができました。有効性については用量依存性も見られました。
また、肝障害・視覚障害や肝臓・腎臓パラメータの変化は見られず、安全性・忍容性は良好でした。

【Centessa社プレゼン P15、Ph2a臨床試験デザイン】

NT1、NT2、IHに対するPh2a試験は、有効性に加え安全性・忍容性・薬物動態を評価することを目的としたランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー バスケット試験です。初期投与量はNT1では1.0 mg、NT2・IHでは2.0 mgを予定しています。有効性は日中の過度の眠気(MWTおよびESS)、脱力発作(NT1のみ)、全体的な症状改善(NSSおよびIHSS)で評価を予定しています。

各被験者は少なくとも4週間はORX750を投与することを予定しています。また、患者に対する有効性を検証するとともに、最適な投与量の検証を予定しています。これらのデータは2025年中に判明する予定です。

用語・略語
  • プラセボ対照ランダム化二重盲検試験:治療薬とプラセボを投与する群をランダムに振り分け(ランダム化)、治療薬・プラセボどちらが投与されているか被験者・医療従事者ともにわからなくする(「二重」に盲検)。これにより、被験者・評価者の主観的なバイアスを取り除くことが可能。新薬の臨床試験において一般的に用いられる手法。
  • クロスオーバー試験:被験者を2つに分け、別々のものを投与(今回は治療薬・プラセボ)して有効性等を評価したのち、投与するものを入れ替えて再度有効性等を評価する手法。被験者の人数を少なくできるが、試験期間が長くなること、前の治療が残るリスク、などのデメリットもある。
  • バスケット試験:ある治療法(今回はOX2R作動薬)を、異なる疾患の被験者(今回はNT1、NT2、IH)に対して同じ試験のもとで評価する手法。同じ遺伝子変異を持つがん(例:肺がん、胃がん、乳がんなど)に対する抗がん剤の臨床試験で良く用いられる手法。
  • MWT:覚醒維持検査
  • ESS:エプワース眠気尺度
  • NSS:ナルコレプシー重症度尺度
  • IHSS:特発性過眠症の重症度尺度

Centessa社は、血友病Bの治療薬候補のSerpinPCの自社開発の中止を決定し、2億ドルの開発費を削り、OX2R作動薬ポートフォリオの開発に注力することを発表しています。この資金に加え、2024年9月に実施した公募増資で得た約2.4億ドルの現金をもとに、Centessa社はOX2R作動薬ポートフォリオの開発を加速させることになります。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2024年11月12日火曜日

EmraclidineのPh2試験結果が発表

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

昨晩遅くにCerevel社/AbbVie社が開発するEmraclidineのPh2試験結果が発表されましたが、主要評価項目は未達に終わりました(リンク)。高いプラセボ効果や、用量依存性の無さなど、統合失調症に対する臨床試験の難しさが浮き彫りになりました。これで、本領域でKarXTに続く開発品の中で、フェーズ2試験の主要評価項目を達成しフェーズ3試験の開始が現時点で予定されているのは、当社のM4作動薬のみとなりました。当社のフェーズ2試験の結果についてはこちらもご参照ください(リンク)。


EmraclidineのPh2ではPANSS合計スコアを主要評価項目とし、同時に2つの試験を実施していましたが、2つの試験とも主要評価項目を満たせませんでした。なお、Ph1b試験では、EmraclidineのPANSSの改善幅は-19.5(プラセボ群で-6.8)でした。今回はPh1bよりもプラセボ効果が大きく出てしまったため、主要評価項目を達成できませんでした。


PANSS合計スコアのベースラインからの変化幅(6週時点


EMPOWER-1

EMPOWER-2


Placebo

(N= 127)

Emraclidine
10mg QD

(N = 125)

Emraclidine
30mg QD

(N = 127)

Placebo

(N = 128)

Emraclidine
15mg QD

(N = 122)

Emraclidine
30mg QD

(N = 123)

Baseline (SD)

98.3 (8.16)

97.6 (7.65)

97.9 (7.89)

97.4 (8.22)

98.0 (8.49)

97.2 (7.75)

LS Mean

(95% CI)

-13.5 

(-17.0, -10.0)

-14.7

(-18.1, -11.2)

-16.5

(-20.0, -13.1)

-16.1

(-19.4, -12.8)

-18.5

(-22.0, -15.0)

-14.2

(-17.6, -10.8)



Cerevel社/AbbVie社は今後の方針を決めるために詳細分析を行うとしていますが、年単位で開発が遅れる可能性が高いことから、NBI-568(ニューロクライン社/ネクセラ)の当面の競合はCobenfy(Karuna社/BMS社、FDA承認済み)のみとなります。

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2024年11月6日水曜日

11/6(水)R&D dayのアンケートに関するご案内

 みなさんこんばんは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

本日は遅い時間にもかかわらず、201名(速報値)の方にご参加いただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。本日の録画は今週中にはIRサイトにアップする予定です。

本日ウェビナー終了後のアンケートが設定されておらず、申し訳ございませんでした。参加登録いただいた皆さまには明日アンケート回答用のURLをお送りいたしますので、お時間がございましたら発表に関するご感想やご質問を記載いただだければと思います。

また、来週には個人投資家説明会(お知らせ)の開催も予定しています。事前質問も引き続き受け付けていますので、参加登録いただいた方はこちらに記載いただく形でも構いません。

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2024年11月1日金曜日

2024年12月期の第3四半期の決算を発表しました

みなさんこんばんは、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

本日11月1日(金)に2024年期第3四半期の決算を発表いたしました。

決算ハイライト

決算短信

最新版のコーポレートプレゼンテーション(11/1更新)

以下ポイントを絞ってご説明します。

主要決算数値

詳細な数字は決算短信(リンク)をご覧いただければと思いますが、売上高219.8億円(昨年は54.7億円)、営業赤字28.5億円(昨年は79.9億円の赤字)、コア営業利益は44.3億円(昨年は39.2億円の赤字)となりました。

M4作動薬の進展に伴うマイルストン収入や、ピヴラッツの売上拡大などにより収益は大幅に増えたものの、NPJ/NPK事業費用が含まれたことで費用増となりました。

【セグメント別の売上高、営業損益・コア営業損益(決算短信:P10、コーポレートプレゼンテーション:P35)】


【決算のブレークダウン(コーポレートプレゼンテーション:P36)】


収益面では、3Qの間にニューロクライン社から35百万ドルを受領したことでNPC/NPU側の収益が大きく伸びました。

コスト面では、昨年のIPJ/IPK買収に伴いM&A関連の非現金もしくは一時的支出費用が引き続き発生していることから、コア営業損益と営業損益の差が大きくなっています。なお、ピヴラッツの売上原価調整額は2024年9月で完了していることから、2024年4Q以降はピヴラッツの利益率が従来よりも高くなります。

そのほかの重要な進捗としては、9月にCentessa社が開発中のORX750のP1&POCデータ取得が完了しました。また、同じく9月には不眠症治療薬のクービビックが承認されました。

ピヴラッツの売上ガイダンス

【ピヴラッツの売上状況とガイダンスの修正(決算短信:P13、コーポレートプレゼンテーション:P22、P39)】


ピヴラッツは処方数ベースでみると順調にシェアを伸ばしていて、薬剤治療が対象となる患者さまの6割以上で使用されています。一方で、当初目標としていた「160億円以上」から「150-160億円」に売上見込みを修正しています。

この要因として2つ挙げられます。一つがくも膜下出血発症率が減少している可能性です。1-5月の統計データによると、くも膜下出血による死亡者数は過去2年と比較して4-6%低くなっています。市場シェアは順調に伸びているものの、全体の患者数が例年よりも少ない可能性が高いことから、計画をアップデートしました。

また、寒い時期に多い疾患特性もあり、昨年までは年末年始の需要を見越して年末在庫を多めに確保していました。こちらも昨年の実績を踏まえ、在庫調整を取りやめました。この2つを合わせ、合計約10億円の売上計画の修正を実施しています。


費用ガイダンス

【期初費用ガイダンスからの差異(決算短信:P13、コーポレートプレゼンテーション:P24、P38)】



今回研究開発費、販管費のガイダンスも修正をしています。研究開発は10億円、販管費は40億円となっています。NPC/NPUとNPJ/NPKの間でバラバラに計上していたもの(システム、オフィスなど)を統合し、コスト効率化を行った結果によるものが大きいです。

一方で、期初から為替の想定が変わった(米ドル:140円→152円、英ポンド:172円→193円)ことで、コスト削減の一部が相殺される予定です。

なお、販管費については、クービビックの販売戦略を変更したことで塩野義製薬が販売を行うこととなり、期初に想定した自社での販売コストがなくなったによるコスト削減は10億円程度となる見込みです。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!