みなさんこんにちは、CFOの野村です。
ご報告が年の瀬になってしまい大変申し訳ない限りですが、11月10日(金)に2023年のR&D説明会を実施させていただきました。お忙しい中にも関わらず、334名という多くの方にご参加いただきありがとうございました!
説明会中やその前後も含めて、口頭、テキスト、メールなどでいただいていた合計36件のご質問、ご意見、激励などのうち、重複を整理した以下の24件についてお答えします(※カッコ内の数字は同様の主旨の質問の件数です)。
●提携先の開発品について(11)
Q1:PF-06954522とLotiglipronの違いや、PF-06954522が新たに開発された背景は?(3)
A1:申し訳ありませんがファイザー社の化合物であるため、当社から詳細を申し上げることができません。ファイザー社がダヌグリプロンの1日2回投与製剤の開発を12月に断念しましたが、特にGLP-1作動薬のように大きな市場が見込まれる領域では、大手企業は開発品の失敗に備え、複数品目を開発することはよくあります。Lotiglipronが肝臓の検査値の上昇が原因で開発を中止したこと踏まえれば(参考)、PF-06954522では同様の轍を踏むことのない化合物が選ばれていると考えるのが、一般的と考えられます。
Q2:Genentechのパイプラインは現在どの段階にあり、どの段階から詳細がオープンになるのか?(2)
A2:現在は前臨床試験の前の段階にあり、ターゲットは基本的には前臨床試験が開始された段階で開示を予定しています。但し、多くの製薬企業では臨床試験に入った段階、もしくは臨床試験入りの目途が立った段階でターゲットが開示されることが多いため、Genentech社の強い希望があれば、ターゲットの開示は臨床入り後となる可能性もあります。これらは、将来的な競合が現れる期間をできるだけ遅らせるためですので、ご理解いただければと思います。
Q3:ファイザー社が新しいGLP-1作動薬の開発を開始するときには、どのタイミングで通知されるのか?(1)
A3:基本的にはマイルストンの受領や、重要な進展があった場合はファイザー社から報告を受け、我々として皆様にお知らせすべき場合にはリリースを出すことになります。「重要」の程度については大手製薬企業と、我々のようなベンチャーで認識の相違が出やすい部分ですので、密なコミュニケーションに努めていきます。
Q4:Pfizer社のCGRP拮抗薬の進捗はどうなっているのか?(1)
A4:申し訳ありませんが、情報公開については提携先の判断となるため当社からコメントはできません。今後、ファイザー社から情報のアップデートがあればお知らせいたします。
Q5:Neurocrine社のパイプラインはさらに増える可能性はあるのか?(1)
A5:12月6日にご報告した通り、ニューロクライン社は新たにM4-preferring作動薬(NBI-1117569)とM1-preferring作動薬(NBI-1117567)の新たに2つの開発品を臨床に進めることを発表し、これで開発が進む品目は4品目になりました(参考)。この「preferring作動薬」は、一般的にはその受容体への選択性を高めているものを指しますので、例えばですが、M4-preferring作動薬はM4とM1に対して9:1で作用するような作動薬を指していると思われます。中枢領域では、例えば既存の統合失調症治療薬(エビリファイなど)がそうであるように、このように受容体の間のバランスを整えることが薬効につながることは一般的です。
Q6:Formosa社のAPP13007のロイヤリティは何パーセントもらえるのか?(1)
A6:ロイヤリティ率は開示できませんが、市場規模も踏まえれば金額としては莫大にはならないとみています。なお、APP13007は2024年第1四半期の製造販売承認を予定しており、Formosa社はEyenovia社とライセンス契約を締結してマーケティングを行う予定となっています。(参考)
Q7:技術提携でのリード化合物の選定、開発などはどのように進めていくのか?早い段階で導出することや、合弁会社設立等オプションは考えているのか?(1)
A7:化合物ごとに最適な戦略を検討しており、早期の導出や合弁会社設立もオプションになります。提携先が疾患領域や開発機能に強みがあれば提携先が開発を主導する可能性もあり、そこに我々の強みも活かせる場合には、合弁会社設立なども選択肢となります。対象疾患やそこまで得られているデータ、契約条件によってこれらは異なりますので、幅広い選択肢を常に検討していきます。
Q8:新規提携の話の進捗はどのような状況か?(1)
A8:新規提携の交渉は最終段階にあります。結果的に2023年に目標としていた1件以上の大型提携が達成できなかったことは大変に心苦しい限りですが、交渉自体は大詰めを迎えています。相手先がいるため100%の保証はできませんが、新年のできるだけ早い時期にみなさんに良い報告をお届けできるよう、チーム一同、邁進いたします。
●戦略・目標について(9)
Q9:業績予想や中期計画は出せないのか?イドルシア社の予想は出せるのではないか?(3)
A9:提携先に左右される契約一時金やマイルストンが売上げの多くを占める状況では、全社での、蓋然性の高い業績予想や中計はお示しが難しいと考えています。一方、従来のコスト面(研究開発費や販管費のレンジ)に加え、ピヴラッツなどの製品売上については予想をお出しできますし、またそうすべきではないかと考えています。
Q10:今期の着地はどうなりそうか?(2)
A10:既に今期については最終日を迎えてしまいましたので、申し訳ないですが明言は避けさせていただきます。第3四半期までの営業損益は約80億円、コア営業損益は約40億円のそれぞれ赤字であり、これに対して第4四半期では既に発表済のダリドレキサントとGenentech社のマイルストン収入が約20億円と、ピヴラッツの比較的強い売上高(約44億円)が見込まれます。
Q11:パイプラインの拡大ではなく、まずは成功するものに対して集中すべきではないのか?(2)
A11:残念ながら創薬は個別の開発品では一定の確率で失敗するため、ファイザー社のLotiglipronの例の通り、その成功可否を事前に見極めることは困難です。我々は幸いにも、GPCRに対する強力な創薬プラットフォームを持っていますので、これを最大限活用し、40程度のパイプラインをパートナー含めて手掛けることで少数のパイプラインに依存せず、事業全体としての成功確率を高めるアプローチを目指しています。
Q12:スイスのイドルシア社の資金難によるマイナスの影響はあるか?(1)
A12:影響は軽微だと考えています。ピヴラッツやダリドレキサントは日本/APAC(中国を除く)における権利を既に獲得しており、安定的な供給網の確保に努めています。オプション権については契約上多くは言えませんが、影響を最小限に留めるよう留意しています。イドルシア社が日本/APACの事業を売却したのは正に資金的なニーズからであり、我々は買収交渉時からこの点について非常に慎重に対応しています。
Q13:資料P.12の「デザインによる医薬品創出により30以上のパイプラインを追加し、毎年新しいプログラムの追加やパートナーと提携していく」について詳しく教えてほしい。(1)
A13:これまで同様に「プログラムの追加・提携を拡大していく」とご理解いただければと思います。当社の強みとするGPCRをはじめとする構造解析をベースとした精密創薬を引き続き行っていくことで魅力的なパイプラインを創り出し、大手製薬と提携して価値を最大化していくことを目指していきます。
●自社の製品・開発品について(9)
Q14:ピヴラッツの韓国での製造販売承認のタイミングは?(2)
A14:すでにリリースの通りですが、12月7日に韓国での製造販売承認を取得しました。韓国では制度上、承認取得から販売開始までに12-15か月かかることから、2025年前半の販売開始を予定しています(参考)。
Q15:ダリドレキサントの韓国での臨床試験はいつ開始するのか?(2)
A15:2024年を予定しています。当局やパートナー候補との交渉が必要なため、当初予定していた2023年下期開始からずれ込みますが、その後の開発でキャッチアップしていきたいと考えています。
Q16:P.7にある「複数のインクレチン/その上流の標的」と書かれていたものは、ファイザーとの契約があっても開発する権利があるのか?(2)
A16:ファイザー社との契約はGLP-1受容体に対する作動薬に限定されており、それ以外のターゲットは開発できます。糖尿病・肥満関連のシグナル伝達には多くのGPCRの関わりが示唆されており、リリー社との提携や自社で、GLP-1以外のターゲットについて研究開発を行っています。
Q17:GPR52の適応疾患は具体的には何か?(1)
Q18:R&D day資料のP7にある「複数のインクレチン/その上流の標的」はEli Lilly社との提携のターゲットと同じなのか?(1)
A18:Eli Lilly社との提携とは別のものです。GLP-1関連領域において、当社は①Pfizer社のPF-06954522(GLP-1)、②Eli Lilly社との共同研究、③自社研究(複数のインクレチン/その上流の標的)の大きく3つの方向からアプローチをしています。なお、基礎研究段階ですので、具体的なターゲットへの言及は控えさせていただきます。
Q19:トランスポーター・イオンチャネルの研究開発の進捗はどうなっているのか?(1)
A19:Metrion社との提携からは思ったほどの進捗が得られておらず、現在は優先度を下げています。トランスポーターについては、自社内での取り組みを加速しています。2018年以降、我々は多くの技術提携を行いましたが、その大半についてどの程度の成果が見込めそうかが見えてきました。リリースやプレゼンテーション資料でもお示ししている通り、Verily社、Kallyope社、PharmEnable社、ペプチドリーム社との提携が、現在の技術提携の中核になります。
●その他のご質問(7)
Q20:11月のファイナンスで産業革新投資機構(JIC)に割当てを行った意図は?なぜ、株価7%ディスカウントでの割当てとなったのか?(2)
A20:JICは産業に深い知見を持つ長期投資家で、当社の株主基盤を安定させるために出資を受けました。株価ディスカウントは、同時実施の公募増資のディスカウント率と合わせる必要があるためです。公募増資でのディスカウントは、数値上の希薄化が起こる以上は避けがたいものですが、潜在も含めた希薄化14%に対して7%の割引は、2020年の調達等(8%のディスカウント)と比較しても適正な水準と考えています。
Q21:株価対策や経営責任をどう考えているのか?例えば自社株買いによる浮動株の解消などは選択肢として考えていないのか?(2)
A21:株価対策のみを目的としてはいませんが、投資家の皆様とのコミュニケーションについては以前のブログのA26をご参照下さい。Lotiglipronの開発中による株価下落は個人的にも大変残念ではありますが、成長戦略を着実に実行していくことが、事業の成長、ひいては企業価値の向上につながるものと考えています。尚、将来的な株価対策の可能性として自社株買いはありえますが現時点で積極的に検討していません。自社株買いは累積黒字でないと可能でなく、現時点では物理的にも出来かねます。
Q22:韓国における求人の意図は何か?(1)
A22:製造販売承認を取得したピヴラッツに加え、今後開発予定のダリドレキサントなど韓国における事業拡大の一環として求人を出しています。韓国法人(IPK)は現在数名の規模で、開発や販売の主導にはまだ人手が足りていない状況です。そのため、韓国における開発・販売の促進をして事業を拡大してく人材の採用を進めています。
Q23:もっとわかりやすくてインパクトのあるアピールのしかたは無いのか?(1)
A23:ご意見いただきありがとうございます。個人投資家の皆様に対する説明などは、今後も工夫を重ねながら、積極的に実施していきたいと思います。
Q24:田村会長の目指すバイオテック像はどこなのか?(1)
A24:日本から世界に冠たるバイオ企業を生み出すことを目指しています。「世界に冠たる」というのはやや定性的ではありますが、企業価値、事業規模、サイエンス、患者さまへの貢献、リピテーションといった複合的な要素を、すべて満たす必要があると考えます。ヘプタレス社の強力なサイエンスから生まれた化合物は数多くの大手製薬に導出されており、いくつかの開発失敗もあるものの、一つが成功すれば大きく会社が成長する可能性があります。イドルシアジャパンが販売するピヴラッツは、正に致死性の高い適応症に対して唯一無二の薬として存在感を発揮しています。今後も田村の目指すゴールを達成すべく邁進して参ります。