みなさんこんばんは。CFOの野村です。
2/14(火)の2022年12月期オンライン決算説明会、3/23(木)の株主総会、そして3/24(金)の個人投資家説明会(大阪・名古屋)について、総計で498名という多くの皆様にご参加いただきました。お忙しい中にも関わらず本当にありがとうございました。説明会中やその前後も含めて、口頭、テキスト、メールなどでいただいていた合計44件のご質問、ご意見、激励などのうち、重複を整理した以下の28件についてお答え致します(※カッコ内の数字は同様の主旨の質問の件数です)。回答までに普段にも増して長い時間をいただき、既に23年1Qの決算後となってしまい大変恐縮です。この場を借りてお詫び申し上げます。
●目標や今後の戦略について(3)
Q1:今期の臨床試験入りと前臨床試験入りの目標はいくつか?
A1:あくまでも現時点での想定ですが、23年の臨床開始プログラムは自社品・提携品を合わせて4~5品目、前臨床試験開始プログラムは2品目程度とみています。自社品は既に開示の通り2品目以上の臨床開始を予定しており、提携品はパートナーの開発動向によりますが2~3品目の臨床試験開始される可能性が高いと、現時点では考えています。
Q2:日本事業は自社開発を考えているのか?またその資金はどこから調達する予定か?
A2:開発品の特性にもよりますが、基本的にはリターンを最大化するため自社での開発・販売を行う方針です。当初の資金は、現在保有する現預金約660億円の一部を活用予定ですが、製品販売後はその売上の一部を次のパイプラインに投資します。海外で承認済・開発後期にあるパイプラインの導入から始め、将来的にはヘプタレス社の創薬プラットフォームから生み出される自社品の開発の割合を増やしていく計画です。尚、導入品にもよりますが、海外で承認済/開発後期にある開発品への研究開発投資は一定以上が資産として認識されるため、その場合には損益計算書に与える影響は限定されます。
Q3:イーライリリーとファイザーは提携内容が重複しているように見えるが、どのような戦略なのか?
A3:疾患領域は一部重複していますが、それぞれ違う標的をターゲットとしており、将来的には異なる特徴を持つ薬として開発・販売される可能性があります。我々の提携では、1つのターゲットとメカニズム(作動薬、拮抗薬...etc.)の組み合わせごとに1社と独占的な契約を結ぶため、例えばファイザー社と提携しているGLP-1作動薬は、イーライリリー社を含めた他社とは提携できません。糖尿病・代謝性疾患に関連すると言われるGPCRは、GLP-1以外にもいくつかが知られており、イーライリリー社とはそれらも踏まえて開発を進める予定です。
●個別の開発品の動向について(16)
Q4:Lotiglipron(PF-07081532)とDanuglipronでは、Lotiglipronの方が期待されているとは思うが、仮にLotiglipronが選ばれない場合の理由、その確率、その後のLotiglipronの状況について御社としての考えはあるか?(4)
A4:一般論として、現在のLotiglipronのフェーズ2b試験の結果が、Danuglipronを明確に下回る安全性・有効性となれば、Lotiglipronは選ばれないと考えられます。現状でその確率を当社からコメントするのは差し控えますが、基本的に1日2回投与のDanuglipronに対しLotiglipronは1日1回というメリットがあり、かつ、昨年開示されたLotiglipronのフェーズ1b試験の安全性・有効性は良好でした。仮にLotiglipronが選ばれなかった場合のその後の方針は選ばれなかった理由に大きくよるので、現時点ではコメントを控えさせていただきます。
Q5:Lotiglipronの想定市場規模についてファイザー社は米国市場で900億ドルと想定しているようだが(原文ママ)、米国以外を算出しない理由はあるのか?
A5:提携先の開示ですので、我々から明確なご回答はできません。しかし、ファイザー社は昨年12月のカンファレンスで ”Now the primary focus here is the U.S. market, which today, due to pricing considerations, accounts for 90% of GLP-1 sales, a ratio we do not see changing materially in the future” (参考、P35)と発言しているため、米国を主な市場として想定しているとみられます。一方で、Lotiglipronはフェーズ2b試験の段階でも米国・欧州・日本を含む世界8か国・87施設で実施されており、開発に成功すれば米国を含む全世界に展開されるものと考えられます。尚、ファイザー社は米国のGLP-1作動薬全体の市場として、2030年にご質問にある900億ドル(約13兆円)としており、ファイザー社の経口GLP-1作動薬としては~100億ドル(約1.3兆円)との想定を置いています。(参考、P90-91)
Q6:仮にLotiglipronの米国売上が900億ドルであった場合(原文ママ)、そーせいにも米国市場からだけで年間約1,000億円のロイヤルティ収入が入ると考えられるが、この計算は概ね正しいか?
A6:A5の通り、ファイザー社は自社の経口GLP-1作動薬の売上高ポテンシャルを米国で~100億ドル(約1.3兆円)としていますが、仮にLotiglipronが米国で約100億ドルの売上高となった場合、我々がそこから受領する可能性のあるロイヤルティの規模感は、開示情報からも推察可能な通り年間約1,000億円程度と考えています。直近では、複数の海外メディアも、我々をGLP-1作動薬の関連企業として紹介しています。(ロイター、Securities)(本回答は公開後に質問を受け微修正しています)
Q7:ファイザー社のLotiglipron(PF-07081532)はフルアゴニストだと思うが、Danuglipronはパーシャルアゴニストなのか?
A7:提携先かつ当社とは直接関係のない開発品ですので、我々から明確なご回答はできません。Danuglipronも含むGLP-1作動薬のアゴニスト活性を比較した文献の一例をお示しします(参考)。
Q8:Lotiglipron(PF-07081532)の上市時期についてファイザー社は先行薬に追いつくと発言しているが、一般的に早期上市にはどのような手段があるのか?
A8:提携先の開示ですので、我々から明確なご回答はできません。一般論として、早期上市を行うための規制は国ごとに異なりますが、類似の開発品における米国での事例では、ブレークスルーセラピーの指定や優先審査バウチャーの活用などが選択肢となりえる可能性はあります。
Q9:Lotiglipronが現在フェーズ2b試験中ということは、既にPOCが取れているということか?
A9:既に患者様を対象とした2度のフェーズ1b試験を既に完了しており、作用機序からみても、一般的にPOCは確立されていると考えています。
Q10:ファイザー社との提携パイプラインが、ファイザー社に買収される可能性はあるか?
A10:一般論から考えれば、可能性は大きくないと考えています。ファイザー社との提携パイプライン(GLP-1作動薬、CCR6拮抗薬、MC4拮抗薬)は、基本的に現時点でも既にファイザー社のパイプラインであり、当社は事前に定められたマイルストンやロイヤルティを受け取る権利を持っています。このような場合に、ファイザー社が当社の持つ権利を買い取るケースは一般的に稀であり、仮に行うとしても、現在の開発状況を踏まえて我々とファイザー社双方の合意を経ねばならず、ハードルは高いと認識しています。
Q11:M1作動薬が新たな前臨床候補になったが、
ニューロクライン社がフェーズ1試験を開始予定のM1作動薬と同じ化合物か?国内の開発開始はいつごろになるか?(2)
A11:同じ化合物です。日本での開発開始予定は、現在パートナーのニューロクライン社と協議中です。M1作動薬の日本の開発権は我々が持っていますが、ニューロクライン社の開発と歩調を合せることでより効率的に開発が進むため(例:ニューロクライン社のフェーズ1試験に日本人をリクルートしてもらい、その分のコストのみを当社が負担するなど)、協調して開発を進めることを想定しています。
Q12:コロナ治療薬の進捗状況は?(2)
A12:現在、基礎/探索段階が成功裏に終了しつつあり、今後の開発方針等を検討しています。一方で、コロナ治療薬に対する社会的なニーズは、我々が本プロジェクトをスタートした2020年時点から変化しており、今後の動向を注視しつつ必要な開発やライセンスの可能性を模索します。
Q13:AZD4635の返還時期や、A2b拮抗薬との併用の可能性をどう考えているか?
A13:返還された場合の開発方針、ポテンシャル、潜在的な導出先を精査しつつ返還交渉を進めていますが、時期は現時点では未確定です。A2b拮抗薬との併用の可能性はあり得るとは思いますが、両サブタイプをターゲットにするのであれば、他社のようにA2a/A2bデュアル拮抗薬として開発するのが一般的かと考えます。
Q14:H4拮抗薬は開発の優先順位が下がり、SSTR5等と同じ状況になるのか?
A14:将来的な可能性としては否定しませんが、現時点では新たな適応症への応用可能性を検討中です。H4受容体には多くの機能があることが示唆されていますので、様々な角度からの検討が必要だと考えています。
●技術・技術提携について(8)
Q15:Twist社が提携先のリストから消えたが、提携を含めた今後の抗体への取り組み予定は?(3)
A15:GPCRに対する抗体はジェネンテック社との創薬提携で開発を進めており、引き続き動向を注視しています。構造を安定化させたタンパク質が抗原として使えるため、GPCRに対する抗体医薬品は我々のStaR技術の強みを活かせる分野です。一方で、患者さまは注射薬(抗体)よりも経口薬(低分子)がよいのも事実であり、例えば抗GPCR抗体が発売されている数少ない領域の1つである片頭痛治療薬(ターゲット:CGRP)では、先行した抗体医薬の売上は伸び悩み、数年後に市場に登場した経口薬が急速に普及しています。結局どのモダリティ(低分子、抗体...etc.)がよいかは、疾患の種類や個別ターゲットの競合状況などに大きく左右されるため、その見極めが重要だと考えています。
Q16:Metrion社などの技術提携先と行っている、GPCR以外へのStaR技術の応用に進展はあるか?
A16:Metrion社とのイオンチャネルを対象とした技術提携は、比較的順調に進展しています。基礎研究なので開示はしていませんが、このまま順調に開発が進み将来的に皆様に進展をお示しできればうれしく思います。他方で、ノウハウの蓄積があるGPCRとは異なる部分も多く、基礎研究に時間を要している点はご理解いただければと思います。また、同じく膜関連タンパクのトランスポーターやインテグリンなど、新たなターゲットにも中長期的にチャレンジしていきたいと考えています。(参考、P27)
Q17:DNA Encoded Library(DEL)は現在もDyNAbindとの提携なのか?それとも内製化して自社技術となっているのか?
A17:DELは現在、一部を内製化、一部を外部委託で進めています。DELは現在ではDyNAbind社に限らず、多くのプレーヤーがキットやサービスを提供している状況にあり、我々はこのようなキットと自社のノウハウと合わせて内部でスクリーニングを行うと同時に、難しいターゲットについては外部委託して探索を進めています。
Q18:Verily社などの技術提携と、Precision Lifeなどとの提携の違いは?
A18:Verily社も含め、技術提携は基本的に最先端のテクノロジー同士を融合させ、革新的な治療方法を生み出し、単なる委受託関係ではなく将来のリターンを分け合うものです。一方で、ご指摘のPrecision Lifeなどは、当社からの委託の範囲を超えるものではなく、先方の開示については先方の方針次第ですが、我々からの開示は行っていません。
Q19:新規提携において「製薬会社からのアプローチが多い」と聞いたが、実態としてはどのような感触を持っているか?
A19:我々はGPCR創薬での世界トップ企業の一社だと自負しており、また業界内でもそのような認識を持たれているため、製薬企業側からアプローチを受けることが多いのは事実です。一方で、完全に受け身というわけではなく、業界で豊富な経験・ネットワークを持つマーカス・メッセンジャーを中心に事業開発活動に積極的に取り組んでおり、疾患領域などから適切と思われるパートナー候補に、我々からアプローチするケースもあります。
Q20:自社パイプライン(EP4作動薬、GPR52作動薬、EP4拮抗薬)の提携はどのタイミングが最適だと考えているか?
A20:開発品にもよりますが、現時点の当社の投資体力からは、グローバル開発では臨床試験は安全性と初期の有効性を示すデータが得られた時点(フェーズ1bから2a相当)で大手製薬企業と提携するのが最適だと考えています。安全性だけのデータ(フェーズ1a試験など)だとディールの規模が限定される反面、大規模な有効性のデータ(フェーズ2b試験以降など)には多額の投資と比較的高い失敗のリスクがあるためです。一方で、A2にも記載の通り、日本(+APAC)では自社開発を進め、最終的に販売までを行うことで、投資リターンを最大化することを目指しています。
●その他(17)
Q21:東証プライム申請の状況はどうなっているのか?(9)
A21:既にご案内の通り、3月15日に東証プライム市場に上場しました。これまで当社を支えていただいた多くのステークホルダーの皆様に深く御礼申し上げます。申請は昨年末に行いましたが、我々は時価総額(1,000億円以上)がプライム上場の形式要件(収益基盤)の一部であったため、申請発表で株価が変動してしまうと上場審査の障害となる可能性があり、主幹事証券と相談の上、申請の発表は行いませんでした。尚、東証プライム上場を受け、4月27日にTOPIXへの組み入れが行われました。
Q22:過去4年間の売上/利益が安定していることを踏まえ、業績予想や中計を開示すべきでは?(2)
A22:過去4年間の業績は結果としては安定していますが、契約一時金とマイルストンが売上げの6~8割を占めており、依然として蓋然性の高い業績予想や中計をお示しすることは困難だと考えています。業績予想や中計を開示し、変化があれば都度それを修正するという方法があることは理解しつつも、過去4年の中でも、例えば売上が期初の社内見込みの約2倍に上振れした年もあり、予想の難しさを痛感しています。混乱を招かないためにも、現時点では業績予想や中計は非開示とさせていただきます。
Q23:ノバルティスからのロイヤリティ(2026年問題)についてアップデートはあるか?
A23:特段のアップデートはありません。ノバルティスに導出している3製品(シーブリ、ウルティブロ、エナジア)の主要な特許は2026年まで(一部延長の可能性あり)ですので、これらに代わる安定的な収益基盤を、M&Aや新開発品導入も含め模索しています。
Q24:新卒採用等若手研究者育成についてどのような施策を行っているか?
A24:一般的な育成方法は概ね行っており、それらを除くと非常に初期の研究プロジェクトで、プロジェクトリーダーを若手に任せる点がやや特徴的です。これは早くから自分の専門領域に留まらない創薬の全体像を理解してもらい、加えて将来必要となるマネジメント能力を意識してもらうことを目的としています。また、そもそもヘプタレス社の若手研究者は入社時点で既に非常に高い専門性を身に着けており(多くが博士号保有)、当社のアカデミックな社風に惹かれて入社するケースが多いことも特徴です。
Q25:資料から科学的な情報が減ってきていると感じており、特に自社品はよりデータを含めた解説ができないか?
A25:我々も自社品の科学的な説明は最重要と考えており、昨年から決算説明会とは別にR&D説明会でご説明することとしました(参考)。これは当社の事業が成長し、時間の限られる決算説明会ではサイエンスについて十分に説明しきれないためです。今後もサイエンスに関する深いディスカッションは、R&D説明会など、別途ご説明の機会を設けさせていただきます。ご要望ありがとうございました。
Q26:目標株価はいくらか?株価対策について何を行っているか?
A26:株価は投資家の皆様によって市場で決まるものですので、当社から具体的な目安をお示しすることは差し控えさせていただきます、申し訳ございません。株価対策のみを目的としているわけではありませんが、我々としては投資家の皆様と建設的な対話を行うため、以下を重視しています。
(1) そもそも企業として真っ当に事業を成長させる
(2) 投資家の属性(機関・個人)を問わず、真摯・平等・開かれた対話を心がける
- 決算説明会やR&D説明会などを誰でもリアルタイムで参加可能とし、質疑応答含めて動画を公開しています
- 個人投資家様向けに、誰でも参加可能かつ口頭で質問ができるオンライン説明会を実施しています
- 株主総会後に株主の皆様と経営陣が、対面でフランクにコミュニケーションできる場を設けています
(3) 比較的難解なセクターの特性を踏まえ、分かりやすい情報発信に努める
- 本オフィシャルブログなど通じて、リリースの解説やご質問への一問一答を発信しています
- 主にセクターに馴染みの薄い投資家様に向け、セクター入門セミナーを実施、動画を公開しています(参考)
Q27:テレビCM放映など検討しているか?
A27:我々は現時点では大手製薬企業を主な顧客とするバイオ企業であり、日本で直接販売する製品も無いことからテレビCMは検討していません。今後、中期的な企業・事業の成長に伴って、その都度適切なPR方法を検討してまいります。
Q28:今回の通訳の方は声に気合い入っていてとても良かったです
A28:コメントありがとうございます。通訳を介した会話となり、日本人投資家様にはご面倒をおかけしますが、日英に拠点を持ってグローバルに事業を展開していることは、当社の最も大きな強みの一つでもあります。今後も、よい通訳の方にご担当いただけるよう手配に努めますので、引き続きご支援の程よろしくお願い申し上げます。