2023年5月8日月曜日

提携・導出先企業のアップデート

みなさんおはようございます。CFOの野村です。

パートナー先の1Q決算が出揃いました。決算では大きな発表こそありませんでしたが、ファイザー社とニューロクライン社からは、説明会の中でも当社と関係するプログラムについて多くの言及がありました。この2社を中心に、直近の進捗をアップデートさせて下さい。


ファイザー社参考:1Q決算関連資料

5/2の1Q決算説明会の質疑応答で、GLP-1作動薬(PF-07081532)の最も進むフェーズ2b試験の結果の判明時期やデータの目標のコメントがあり(参考)、加えて翌日の5/3には、ClinicalTrial.gov(NIHのデータベース)で同試験の情報が更新されました参考。ポイントは以下の通りです。

  • 年末~年初の試験結果データにとても期待している"we look forward very much to data, maybe later this year or possibly early next year"
  • (32週の効果として)肥満症で15%の体重減少は野心的なよい目標So for obesity, that's a really good ambition to have up to 15% ”)
  • フルアゴニストとして差別化されうるデータを待っている"data readout that we may have a differentiated profile for our full agonists"
  • 被験者数が当初の780名→900名に増えてリクルートが完了。主要な結果が出そろう"Primary Completion Date"が2023年11月13日に更新

昨年末のリクルート開始から正味約4カ月で、Primary Completion Dateを当初の24年1月から23年11月へと約2カ月短縮し、被験者数も780名から900名へと120名も増やしたファーザー社の実力と本気度には脱帽です。900名のフェーズ2b試験は、経口薬の競合となりうるLY3502970の二つのフェーズ2試験の合計よりも大きな規模で、今年の年末~来年の年始にも公開される可能性があるデータを、我々一同とても楽しみにしています。

また、GLP-1作動薬を中心に、非常に多くのニーズがありながら、これまで有効な治療法が乏しかった肥満に対する医薬品開発が直近で非常に注目されており、海外の業界ニュースサイトでも当社が「肥満薬市場でのトップ6社(Top 6 Obesity Stocks)」として、イーライリリー社やノボノルディスク社と並んで紹介されました。こちらもよろしければご覧下さい(参考)。

尚、ファイザー社とはGLP-1作動薬も含めた3品目の臨床試験が順調に進んでいます。詳細はファイザー社のパイプラインリスト(Pfizer PipelineP7~P8)や、多数の補助的な試験(肝障害・腎障害など他の疾患を併発する患者や薬物相互作用などの検証)も含めて以下の開発品表に整理していますので、ご参考下さい。


ニューロクライン社(参考:1Q決算資料

5/3の1Q決算説明会の質疑応答で、ムスカリン作動薬シリーズについての多くのコメントがありました(参考)。ポイントは以下の通りです。

  • M4作動薬/NBI-1117568のフェーズ2試験の進捗は非常に順調"we're doing extremely well with the enrollment in that Phase II study"
  • M1/M4作動薬/NBI-1117570について今年フェーズ1試験を開始予定"we plan to take NBI-570, a dual M1/M4 agonist into Phase I clinical development this year"
  • M1作動薬は認知症状から他の神経疾患まで、明らかに幅広い疾患に対する多くの機会がある"M1 selective molecules which we also have within the portfolio of actives that we gain access too, they are obviously a broad range of different opportunities there ranging from cognition to other neurological disorders"
  • 1つの化合物だけではなく、多くの異なるムスカリン作動薬について提携できたことが、そーせいとの提携の魅力の一つ"That was one of the attractions of the deal that we were able to do with Sosei Heptares was the ability to again, access to not just one molecule in the muscarinic agonist space, but to a range of a portfolio of molecules with differential selectivity"

全体として、当社からライセンスしている3つのムスカリン作動薬のメカニズム(M4作動薬、M1/M4作動薬、M1作動薬)のすべてに対して、高い期待値をもち、幅広い中枢神経疾患への適応を見据えた、力強いコメントが目立った説明会でした。


Centessa(参考:2022通期決算発表発表資料

少し前ですが、3/30に22年通期決算を発表し、当社からラインセンスしているOX2受容体作動薬のORX750について、以下のコメントやデータの発表がありました。

  • 現在、臨床試験の開始に向けて前臨床試験中("currently in preclinical development and undergoing IND-enabling activities"
  • 2023年後半に前臨床データを学会等で発表予定"The Company expects to share preclinical data at a scientific meeting later this year"
  • ナルコレプシーや睡眠障害のベストインクラスの治療薬の可能性を持つ"potential to be a best-in-class therapy to treat narcolepsy and other sleep disorders"
  • 構造ベース創薬により、オレキシンシグナルを代替する可能性のあるORX750を発見"Structure-based drug design has enabled the discovery of ORX750 as potential orexin signaling ‘replacement therapy’"
  • ナルコレプシー1型と睡眠障害を対象として、20億ドル(約2,600億円)の市場を形成する可能性


上記のデータでは、マウスの試験で良好な有効性がみられています。今年後半に予定されている、より詳細な前臨床データの発表にも期待したいと思います。


Formosa社

5/5にAPP13007をFDAに承認申請しました(参考)。当社は2017年にアクティバス社をAPP13007ごとFormosa社に譲渡しており、今回、マイルストンはありませんが、今後の開発に従いマイルストンやロイヤルティを受け取る可能性があります。尚、Formosa社からの全収入は売上高ではなく、金融収益として認識されます。アクティバス社に関連するこれまでの主なニュースは、以下の通りです。

20106月 アクティバス社を完全子会社化
20116月 アクティバス社が岐阜薬科大学と共同研究を開始
20142月 アクティバス社が前臨床試験開始
20178月 アクティバス社をFormosa社に株式譲渡
20197月 Formosa社が臨床試験を開始(マイルストン:2.5百万ドル)
20213月 Formosa社がPhase3試験を開始(マイルストン:2.5百万ドル)
2022年8月 Formosa社より1.0百万米ドルのマイルストンを受領(マイルストン:1.0百万ドル)

APP13007はアクティバス社の独自技術を活用したステロイドのナノ粒子製剤で、承認されれば白内障手術後の眼内炎と疼痛に使用される予定です。今回の承認申請は、一部でもAPP13007の研究開発に携わっていた我々にも大変嬉しいニュースであり、また将来的に年間約300万件(参考)と言われる米国で白内障手術を受けられる患者様に、この薬が少しでも役に立つことを願っています。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!


【開発品表(臨床段階のもの)】
パートナー開発コード作用メカニズム対象疾患開発段階試験番号人数開始終了ステータス主な対象・目的
ファイザー社PF-07081532GLP-1作動薬糖尿病/肥満フェーズ1aNCT041482092219年11月20年3月完了健常人
フェーズ1bNCT043055876620年3月21年7月完了患者
フェーズ1bNCT051582443421年12月22年6月完了患者
フェーズ2bNCT0557997790022年10月23年11月観察中患者
フェーズ1NCT054786032422年8月23年5月完了その他(肝機能障害)
フェーズ1NCT055102453222年8月23年10月組入中その他(腎機能障害)
フェーズ1NCT05652647622年12月23年3月完了その他(薬物動態)
フェーズ1NCT056716533223年1月23年8月組入中その他(薬物相互作用)
フェーズ1NCT056778672023年1月23年3月完了その他(剤形)
フェーズ1NCT057457011623年2月23年5月組入中その他(薬物相互作用)
フェーズ1NCT057883282423年3月23年9月組入中その他(薬物相互作用)
PF-07054894CCR6拮抗薬炎症性腸疾患フェーズ1aNCT043888788420年7月22年6月完了健常人
フェーズ1bNCT055493232722年11月24年10月組入中患者
PF-07258669MC4拮抗薬拒食症フェーズ1aNCT046287932921年3月21年8月完了健常人
フェーズ1aNCT0511394015021年11月23年4月組入中健常人
ニューロクライン社NBI-1117568M4作動薬統合失調症フェーズ1aNCT0324422812017年8月19年9月完了健常人
フェーズ2NCT0554511121322年10月24年12月組入中患者
フェーズ1NCT049353201521年7月21年10月完了その他(剤形)
フェーズ1NCT048492861618年9月18年12月完了その他(薬物動態)
TemperoBio社TMP-301mGlu5 NAM物質使用障害フェーズ1aNCT037850547118年11月21年3月完了健常人
フェーズ1NCT04462263820年6月21年6月完了その他(薬物動態)
※ブルーが主な臨床試験
※Recruiting:組入中、Active, not recruiting:観察中、Completed:完了、として表記
※その時点で公的なデータベースに登録されているもののみを記載