みなさんおはようございます。CFOの野村です。
パートナー先の1Q決算が出揃いました。決算では大きな発表こそありませんでしたが、ファイザー社とニューロクライン社からは、説明会の中でも当社と関係するプログラムについて多くの言及がありました。この2社を中心に、直近の進捗をアップデートさせて下さい。
●ファイザー社(参考:1Q決算関連資料)
5/2の1Q決算説明会の質疑応答で、GLP-1作動薬(PF-07081532)の最も進むフェーズ2b試験の結果の判明時期やデータの目標のコメントがあり(参考)、加えて翌日の5/3には、ClinicalTrial.gov(NIHのデータベース)で同試験の情報が更新されました(参考)。ポイントは以下の通りです。
- 年末~年初の試験結果データにとても期待している("we look forward very much to data, maybe later this year or possibly early next year")
- (32週の効果として)肥満症で15%の体重減少は野心的なよい目標(”So for obesity, that's a really good ambition to have up to 15% ”)
- フルアゴニストとして差別化されうるデータを待っている("data readout that we may have a differentiated profile for our full agonists")
- 被験者数が当初の780名→900名に増えてリクルートが完了。主要な結果が出そろう"Primary Completion Date"が2023年11月13日に更新
昨年末のリクルート開始から正味約4カ月で、Primary Completion Dateを当初の24年1月から23年11月へと約2カ月短縮し、被験者数も780名から900名へと120名も増やしたファーザー社の実力と本気度には脱帽です。900名のフェーズ2b試験は、経口薬の競合となりうるLY3502970の二つのフェーズ2試験の合計よりも大きな規模で、今年の年末~来年の年始にも公開される可能性があるデータを、我々一同とても楽しみにしています。
また、GLP-1作動薬を中心に、非常に多くのニーズがありながら、これまで有効な治療法が乏しかった肥満に対する医薬品開発が直近で非常に注目されており、海外の業界ニュースサイトでも当社が「肥満薬市場でのトップ6社(Top 6 Obesity Stocks)」として、イーライリリー社やノボノルディスク社と並んで紹介されました。こちらもよろしければご覧下さい(参考)。
尚、ファイザー社とはGLP-1作動薬も含めた3品目の臨床試験が順調に進んでいます。詳細はファイザー社のパイプラインリスト(Pfizer Pipeline:P7~P8)や、多数の補助的な試験(肝障害・腎障害など他の疾患を併発する患者や薬物相互作用などの検証)も含めて以下の開発品表に整理していますので、ご参考下さい。
●ニューロクライン社(参考:1Q決算資料)
5/3の1Q決算説明会の質疑応答で、ムスカリン作動薬シリーズについての多くのコメントがありました(参考)。ポイントは以下の通りです。
- M4作動薬/NBI-1117568のフェーズ2試験の進捗は非常に順調("we're doing extremely well with the enrollment in that Phase II study")
- M1/M4作動薬/NBI-1117570について今年フェーズ1試験を開始予定("we plan to take NBI-570, a dual M1/M4 agonist into Phase I clinical development this year")
- M1作動薬は認知症状から他の神経疾患まで、明らかに幅広い疾患に対する多くの機会がある("M1 selective molecules which we also have within the portfolio of actives that we gain access too, they are obviously a broad range of different opportunities there ranging from cognition to other neurological disorders")
- 1つの化合物だけではなく、多くの異なるムスカリン作動薬について提携できたことが、そーせいとの提携の魅力の一つ("That was one of the attractions of the deal that we were able to do with Sosei Heptares was the ability to again, access to not just one molecule in the muscarinic agonist space, but to a range of a portfolio of molecules with differential selectivity")
全体として、当社からライセンスしている3つのムスカリン作動薬のメカニズム(M4作動薬、M1/M4作動薬、M1作動薬)のすべてに対して、高い期待値をもち、幅広い中枢神経疾患への適応を見据えた、力強いコメントが目立った説明会でした。
●Centessa社(参考:2022通期決算発表・発表資料)
少し前ですが、3/30に22年通期決算を発表し、当社からラインセンスしているOX2受容体作動薬のORX750について、以下のコメントやデータの発表がありました。
- 現在、臨床試験の開始に向けて前臨床試験中("currently in preclinical development and undergoing IND-enabling activities")
- 2023年後半に前臨床データを学会等で発表予定("The Company expects to share preclinical data at a scientific meeting later this year")
- ナルコレプシーや睡眠障害のベストインクラスの治療薬の可能性を持つ("potential to be a best-in-class therapy to treat narcolepsy and other sleep disorders")
- 構造ベース創薬により、オレキシンシグナルを代替する可能性のあるORX750を発見("Structure-based drug design has enabled the discovery of ORX750 as potential orexin signaling ‘replacement therapy’")
- ナルコレプシー1型と睡眠障害を対象として、20億ドル(約2,600億円)の市場を形成する可能性
上記のデータでは、マウスの試験で良好な有効性がみられています。今年後半に予定されている、より詳細な前臨床データの発表にも期待したいと思います。
●Formosa社
5/5にAPP13007をFDAに承認申請しました(参考)。当社は2017年にアクティバス社をAPP13007ごとFormosa社に譲渡しており、今回、マイルストンはありませんが、今後の開発に従いマイルストンやロイヤルティを受け取る可能性があります。尚、Formosa社からの全収入は売上高ではなく、金融収益として認識されます。アクティバス社に関連するこれまでの主なニュースは、以下の通りです。
2010年6月 アクティバス社を完全子会社化
2011年6月 アクティバス社が岐阜薬科大学と共同研究を開始
2014年2月 アクティバス社が前臨床試験開始
2017年8月 アクティバス社をFormosa社に株式譲渡
2019年7月 Formosa社が臨床試験を開始(マイルストン:2.5百万ドル)
2021年3月 Formosa社がPhase3試験を開始(マイルストン:2.5百万ドル)
2022年8月 Formosa社より1.0百万米ドルのマイルストンを受領(マイルストン:1.0百万ドル)
APP13007はアクティバス社の独自技術を活用したステロイドのナノ粒子製剤で、承認されれば白内障手術後の眼内炎と疼痛に使用される予定です。今回の承認申請は、一部でもAPP13007の研究開発に携わっていた我々にも大変嬉しいニュースであり、また将来的に年間約300万件(参考)と言われる米国で白内障手術を受けられる患者様に、この薬が少しでも役に立つことを願っています。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!