みなさんこんにちは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。
先ほどリリースの通り、ムスカリン作動薬シリーズ(以下、Mシリーズ)をニューロクライン社に導出しました。先方との同時リリースでしたので、日本時間の深夜の発表となり申し訳ありませんでした。我々は明後日、24日(水)の朝8時~9時(日本時間)に本導出に関する説明会をズームで開催する予定です。どなたでも参加いただけますので、ご興味があれば以下の説明会案内のリンクよりお申込み下さい。尚、説明会動画は後日HPでのアップロードを予定しています。また、短時間でより多くのご質問にお答えするため、説明会ではQ&Aのみを行う予定です。我々からのご説明は、先ほどアップロードした以下リンクのプレゼンテーション資料と約25分のビデオをご覧ください。
・リリース
今回の導出の経済条件は、契約一時金:100百万ドル、開発マイルストン(最大):約1,500百万ドル、販売マイルストン(最大):約1,100百万ドルに加え、研究開発支援金と1桁後半から最大10%台中盤の段階的ロイヤルティになります。契約一時金の100百万ドル(約114億円)は全額、2021年12月期4Qの売上高に計上される予定です。さらに、M1作動薬に関しては、将来の成長ドライバーとして日本の権利を我々に残しています(後ほど詳述)。尚、Mシリーズは、2016年4月に一度アラガン社に導出され、アラガン社がアッヴィ社に買収されたことで2021年1月に我々に権利が返還されたものです。参考までに、2016年と今回の経済条件の比較を記載します。
*DLB:レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies)
マイルストン総額は前回の3,165百万ドル(開発:665百万ドル+販売:2,500百万ドル)から、2,600百万ドル(開発:1,500百万ドル+販売:1,100百万ドル)にやや減少しましたが、開発マイルストンは665百万ドルから1,500百万ドルと前回の2倍強となりました。開発マイルストンは開発が進めばその時点で受領できるため、一定の金額が売れた後にボーナスとしてもらえる販売マイルストンより、タイミングが早く、もらえる確度も相対的に高くなります。また、販売後の収入ではロイヤルティ率が販売マイルストンと同じく重要ですので、これらを総合して、我々はMシリーズの価値が高く評価されたことを大変嬉しく思っています。
また、今回の提携の特徴の一つは、我々が日本でのM1作動薬の権利を全面的に自社に残せたことです。プレゼンテーション資料中にもあるように、日本は世界と比べても特に認知症治療薬に対して高い社会的ニーズがあります。一例として、認知症の標準治療薬アリセプトの国内売上高は、2011年のピーク時に約1,400百万ドルと、全世界のピーク売上高の約1/3を占めていました(その後は特許切れにより売上高は減少)。厚生労働省は高齢化に伴って2030年の認知症患者数は2012年時点の約1.6倍となると推定しており、今後も国内での効果的な認知症治療薬の開発ニーズはますます高まっていくと考えています。
このような状況に対して、我々のM1作動薬が少しでも貢献できるよう、今後、自社での国内開発を進めていく予定です。尚、ニューロクライン社は日本でのM1作動薬に対する共同開発・共同販売のオプション権を持っていますので、開発が前進すれば、将来的に日本市場についてもニューロクライン社と協業で開発・販売を加速していくことも考えられます。オプション権は、POCを目的としたPh2試験の実施前と実施後のデータ解析終了時の2つのタイミングで行使が可能です。
我々は本導出のために、この1年弱の間に多くの大手製薬や神経領域に特化した中堅製薬と数多くの話し合いを重ねました。最終的に決め手となったのは、ニューロクライン社が中枢神経領域に対して非常に専門性が高く、その領域を中心に4つの製品の米国承認と自社販売網の構築をここ5年で達成するなど卓越したトラックレコードを持っている点です。我々は、ニューロクライン社がMシリーズの開発を進めていく上でのベストパートナーだと確信しています。尚、ニューロクライン社は米国ナスダックに上場しており、2020年の売上高は約1,300億円(前年比+33%)、利益(EBIT)は約370億円(前年比+44%)、また直近の時価総額は1兆円弱です。時価総額でいうと日本では小野薬品(約1.3兆円)が近いイメージでしょうか。まずは2022年のM4作動薬(HTL16878)のPh2試験開始、そして2023年のM1作動薬、M1/M4作動薬のPh1試験開始のための研究開発を共同で進めていく予定です。
尚、我々が返還後の化合物を他社に再導出したのはA2a拮抗薬、CGRP拮抗薬に続き、Mシリーズで3回目になります。これはそもそも大手製薬企業が、戦略変更によってシーズ自体の良し悪しに関わらず開発を止めるケースが多く、我々が契約時からそれに対して返還を請求できる権利(諸条件あり)を確保していることに加え、何より我々が取り組むGPCR(Gタンパク質共役受容体)が創薬ターゲットとして確立しているという特性と、独自のIT創薬技術(StaR技術+SBDD)を中心とした高いサイエンスのレベルに支えられたものです。全ての開発が順調に進むに越したことはありませんが、仮に困難に直面したとしても、我々は権利の再取得と再導出などを通じ、開発品ができるだけ塩漬けにならないように今後も務めていきます。
最後に、我々は平均としてではありますが「2~3件の価値の高い提携・共同投資」を現在の年間の目標の一つとしています。これまでの所、2021年は今回のMシリーズの導出の1件に留まっており、残りの期間を考えると必ずとは申し上げられませんが、なるべく早い時期に新たな提携もご報告できるよう気を抜くことなく、事業を前進させていく所存です。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!