2023年6月16日金曜日

カンファレンスでの発表

みなさんおはようございます。CFOの野村です。

ゴールドマンサックス証券のヘルスケアカンファレンスが6/12~6/15(現地時間)に開催され、当社の提携先であるファイザー社(GLP-1作動薬)、ニューロクライン社(M4作動薬)からそれぞれ発表がありましたので、簡単ですが紹介させてください。


ファイザー社参考:トランスクリプト

13日に発表があり、目新しい情報は多くありませんでしたが、引き続き順調な開発進捗が見て取れる内容でした。当社との提携から生まれたLotiglipron(GLP-1作動薬/PF-07081532)については、既に予定より早めに投与が完了していましたが(参考)、年末までにデータが分かることがファイザー社のコメントでも再確認されました。尚、以下に出てくるDanuglipronはファイザー社が元々開発していた、当社との提携とは関係のないGLP-1作動薬ですが、1日1回投与でよい競合他社の経口薬やLotiglipronと違い、1日2回投与する必要があります。

【主なコメント】

  • Lotiglipronについては今年の年末まで、Danuglipronは来年の早い段階にデータが分かると期待している"lotiglipron, we hope to have data by the end of this year and then danuglipron by early next year"
  • Danuglipronが一日2回投与なのに対し、Lotiglipronは一日1回投与なのが最も大きな違いSo the main differences, at a very high level, danuglipron is given twice a day, lotiglipron is given once a day.”)
  • (現在のフェーズ2b試験では)月ベースでの用量の段階的増加(タイトレーション)を行っており、Phase3試験に進むのに適切な適切な投与量・投与スケジュールを見極める"now are looking at monthly titration and ultimately to pick the right dosing schedule to move forward to the Phase 3s"
  • (GLP-1作動薬は)全体で900億ドルの市場だと予想しているが、より大きいと予想するアナリストもいる。市場調査からは、注射より経口が好まれている"we did put out there that it was $90 billion market, and even some analysts since then have gone even higher ~(中略)~ We do know from market research, for example, that many people would prefer an oral versus an injectable."

なお、今回は用量の段階的増加(タイトレーション)についても、比較的多くコメントがありました。詳細は省きますが、これはGLP-1作動薬では避けられない副作用(吐き気)を抑えるためのものです。Lotiglipronのフェーズ1b試験でも、他製品と同等程度の副作用が確認されていましたが、現在のフェーズ2b試験のデザインでこれをどのくらい減らせるかも楽しみですね



ニューロクライン社

15日に発表があり、当社からライセンスしているムスカリン作動薬シリーズ全体、特にM4作動薬についてポジティブなコメントが多くありました。M4作動薬は、現在行われているフェーズ2b試験がとても順調に進んでおり、従来の予定(データベース上では来年12月)よりも早く終了するようです。今後の続報を期待しながら待ちたいと思います。

【主なコメント】

  • (M4作動薬について)現在のフェーズ2b試験は非常にうまく進んでおり、医療関係者からも非常に高い期待の声が寄せられている"going extremely well in a Phase 2b study that we have ongoing right now ~(中略)~ enthusiasm for this molecule out in the clinical community has been very good"
  • そのためこのペースでいけば、来年のより早い時期にデータが判明すると期待しているSo I'm hoping that with if enrollment stays the way that it has been, we're going to be able to pull that data readout sooner next year.”)
  • (M4作動薬について)競合であるKaruna社やCerevel社よりも、より特異性が高いといった特徴を持つ"That's different from Cerevel. It's highly specific. That's different from Karuna."

ニューロクライン社もコメントしている通り、M4作動薬の開発進捗が順調なのは医療関係者からの高い評価が背景にあるようです。これは、試験のスケジュールが早まるだけではなく、将来的な競合環境を考えてもとても心強いことです。何より、実際に患者さまに向き合われているドクターの方に期待頂ける、それだけのサイエンスのバックグラウンドがあるというのは、創薬に携わる者としては何にも代えがたい喜びですね。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!



【開発品表(臨床段階のもの)】
パートナー開発コード作用メカニズム対象疾患開発段階試験番号人数開始終了ステータス主な対象・目的
ファイザー社PF-07081532GLP-1作動薬糖尿病/肥満フェーズ1aNCT041482092219年11月20年3月完了健常人
フェーズ1bNCT043055876620年3月21年7月完了患者
フェーズ1bNCT051582443421年12月22年6月完了患者
フェーズ2bNCT0557997790022年10月23年11月観察中患者
フェーズ1NCT054786032422年8月23年5月完了その他(肝機能障害)
フェーズ1NCT055102453222年8月23年10月組入中その他(腎機能障害)
フェーズ1NCT05652647622年12月23年3月完了その他(薬物動態)
フェーズ1NCT056716533223年1月23年11月観察中その他(薬物相互作用)
フェーズ1NCT056778672023年1月23年3月完了その他(剤形)
フェーズ1NCT057457011623年2月23年5月組入中その他(薬物相互作用)
フェーズ1NCT057883282423年3月23年9月組入中その他(薬物相互作用)
PF-07054894CCR6拮抗薬炎症性腸疾患フェーズ1aNCT043888788420年7月22年6月完了健常人
フェーズ1bNCT055493232722年11月24年10月組入中患者
PF-07258669MC4拮抗薬拒食症フェーズ1aNCT046287932921年3月21年8月完了健常人
フェーズ1aNCT0511394015021年11月23年8月組入中健常人
ニューロクライン社NBI-1117568M4作動薬統合失調症フェーズ1aNCT0324422812017年8月19年9月完了健常人
フェーズ2NCT0554511121322年10月24年12月組入中患者
フェーズ1NCT049353201521年7月21年10月完了その他(剤形)
フェーズ1NCT048492861618年9月18年12月完了その他(薬物動態)
TemperoBio社TMP-301mGlu5 NAM物質使用障害フェーズ1aNCT037850547118年11月21年3月完了健常人
フェーズ1NCT04462263820年6月21年6月完了その他(薬物動態)
※ブルーが主な臨床試験
※Recruiting:組入中、Active, not recruiting:観察中、Completed:完了、として表記
※その時点で公的なデータベースに登録されているもののみを記載