皆様こんにちは、IRヘッドの都築です。
米国時間6月16日に当社が導出しているオレキシン2受容体作動薬であるORX142に関して、Centessa社がP1試験開始のIND申請を通過し、P1試験開始を発表しました。
我々の計画では2025年中に結果公表予定となるのはCentessa社ではORX750のP2a試験のみと思っていましたが、ORX142に関してもP1試験結果(有効性も含む)も年内に入手できる見通しとなりました。嬉しいサプライズです。
要点は以下の3点です。
- ORX142は神経疾患、神経変性疾患を対象に開発
- ORX142はORX750よりも有効性高く、選択性も高い可能性
- ORX750のP2a試験結果は2025年中の結果公表に変更なし
ORX142はCentessa社の資料では特定の神経疾患、神経変性疾患を対象に開発されております。P1試験では、健康な被験者が対象ではあるものの、有効性の評価指標となる覚醒維持検査(MWT)、カロリンスカ眠気尺度(KSS)も評価されます。結果は2025年中に公表予定としております。
ORX142はコーポレートプレゼン資料でhOX2R、hOX1Rに対する有効性・選択性のデータも公開されており、ORX142はORX750よりもEC50は約1.6倍、hOX2Rの選択性も非常に高いことが示されております。なお、実験系が異なることから直接比較はできませんが、武田薬品工業が開発中のTAK-861はEC50が2.5 nM、選択性(対OX1R比)は3000倍というデータが公表されています。(リンク)
Centessa社のオレキシンポートフォリオで最も進んでいるのがORX750です。NT1、NT2、IHに対するPh2a試験は、有効性に加え安全性・忍容性・薬物動態を評価することを目的としたランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー バスケット試験です。初期投与量はNT1では1.0 mg、NT2・IHでは2.0 mgを予定しています。有効性は日中の過度の眠気(MWT, ESS, KSS)、脱力発作(NT1のみ)、全体的な症状改善(NSSおよびIHSS)で評価を予定しています。
各被験者は少なくとも4週間はORX750を投与することを予定しています。また、患者に対する有効性を検証するとともに、最適な投与量の検証を予定しています。これらのデータは2025年中に判明する予定です。当社はCentessa社のオレキシンプログラム全般(ORX750、ORX142、ORX489)に対し、進捗に応じたマイルストン、ロイヤルティを受領する権利があります。
【Centessa社プレゼン P17、Ph2a臨床試験デザイン】
- プラセボ対照ランダム化二重盲検試験:治療薬とプラセボを投与する群をランダムに振り分け(ランダム化)、治療薬・プラセボどちらが投与されているか被験者・医療従事者ともにわからなくする(「二重」に盲検)。これにより、被験者・評価者の主観的なバイアスを取り除くことが可能。新薬の臨床試験において一般的に用いられる手法。
- クロスオーバー試験:被験者を2つに分け、別々のものを投与(今回は治療薬・プラセボ)して有効性等を評価したのち、投与するものを入れ替えて再度有効性等を評価する手法。被験者の人数を少なくできるが、試験期間が長くなること、前の治療が残るリスク、などのデメリットもある。
- バスケット試験:ある治療法(今回はOX2R作動薬)を、異なる疾患の被験者(今回はNT1、NT2、IH)に対して同じ試験のもとで評価する手法。同じ遺伝子変異を持つがん(例:肺がん、胃がん、乳がんなど)に対する抗がん剤の臨床試験で良く用いられる手法。
- hOX2R EC50:ヒトのOX2受容体(hOX2R)に対して50%の活性を示す濃度(EC50)
- MWT:覚醒維持検査
- ESS:エプワース眠気尺度
- KSS:カロリンスカ眠気尺度
- NSS:ナルコレプシー重症度尺度
- IHSS:特発性過眠症の重症度尺度