みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。
先週ニューロクライン社、ファイザー社の決算が発表されました。また、センテッサ社がオレキシン作動薬の進捗についてカンファレンスで発表していたので、それぞれ当社に関わるところをご紹介します。
ニューロクライン社(発表資料はこちら)
発表内容については、J.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスでの発表から大きく変わっていません(該当ブログはこちら)が、質疑応答では以下についてコメントがありましたのでご説明します。
- FDAとのミーティングの結果、M4作動薬のP3試験は20mgの用量で行う予定。試験設計もFDAとの合意が得られた。
- 今後のムスカリン作動薬ポートフォリオ全体を考え、M1/M4デュアル作動薬はまずは統合失調症でP2を行う。
1.について、ニューロクライン社は「プラセボ効果を抑えるためにも、P3試験はできるだけシンプルな試験設計にするつもりだ」と以前から発言していました。今回の発表から、P3試験の設計はニューロクライン社の提案が一定程度受け入れられたと考えられます。
2.については、ムスカリン作動薬ポートフォリオの対象疾患を決める際、ムスカリン受容体の役割をよりよく理解することが重要です。M4作動薬と同じくM1/M4デュアル作動薬でも統合失調症のデータをとることで、M1、M4の役割の理解が深まります。これはポートフォリオ全体にとって非常に重要なデータとなるため、まずは統合失調症でP2試験を行い、アルツハイマー病含めた疾患への拡大も常に視野に入れて検討していくようです。
ファイザー社(発表資料はこちら、パイプラインリストはこちら)
発表では、当社関連のアップデートはありませんでした。ファイザーが独自で開発するGLP-1作動薬Danuglipronについて、今年の第1四半期に出てくる1日1回投与のデータに基づき、今後の開発方針を決定するとコメントされました。
なお、臨床開発段階にある当社との提携プログラムが引き続き掲載されています。
GLP-1作動薬(PF-06954522/糖尿病・肥満)
MC4拮抗薬(PF-07258669/栄養失調)
CCR6拮抗薬(PF-07054894/炎症性腸疾患)
センテッサ社(最新版(2025年1月更新)のコーポレートプレゼンテーションはこちら)
センテッサ社は、2月6日にカンファレンス(Guggenheim Securities SMID Cap Biotech Conference)で談話形式の発表を行いました。発言から、オレキシン作動薬ポートフォリオに対してより自信を深めていることがわかります。今年はORX750のP2試験データ、ORX142のP1入りが予定されており、今後の進捗について当社も楽しみにしています。ORX750、ORX142、ORX489の3つは、当社の技術プラットフォームから生まれました。
カンファレンスの発表資料はありませんが、議事録からいくつかピックアップしてご説明します。
【ORX750関連】
- ORX750はナルコレプシー2型、特発性過眠症でファーストインクラス、ナルコレプシー1型でベストインクラスを目指せる開発品。
- ORX750は天然のオレキシンに近い作用を目指し、かつ体内の薬物濃度の変化が小さくなるように分子を設計した。結果として、他の分子では達成できていない高い忍容性を実現できた。
注:GPCRを作動させると、その下流には複数の信号が別々の経路に流れます。人工のGPCR作動薬は、その信号の強弱に偏りが出ることがあります。センテッサ社が作るオレキシン作動薬は、その偏りをなくしより天然のものと同じように設計しています。また、1日1回投与を実現する場合、通常は薬物の最高血中濃度(Cmaxといいます)が高くなってしまいがちですが、センテッサはCmaxが副作用に関係していると考え、できる限りCmaxを抑えるように分子を設計しています。
このような設計をしたことで、他の分子と大幅に異なり、高い忍容性を示すことができました。 - ナルコレプシー1型と比べ、2型の方が数倍の高用量が必要だと考えている。そのため、高用量でも副作用のリスクが低いことがP1試験で示されたのは大きな成果。
- P2試験では、多数の項目で有効性を評価する予定(認知能力、注意力、睡眠ポリグラフ検査など)。これにより、次の段階に向け最適な用量を見つけることができると考えている。
- 今年ナルコレプシー1/2型、特発性過眠症に対するデータがわかる予定だが、各適応症のデータがわかるタイミングは別になる可能性がある。
データをいつ公表するかは今後検討していく。逐次公表する可能性もあるし、すべてのデータを取得後に公表する可能性もある。
- 後続のORX142も非常に期待している。神経・精神疾患に関連する日中の過度な眠気も含め、様々な適応症を狙っていきたい。
注:パーキンソン病患者の90%は日中の過度な眠気に悩まされているほか、大うつ病、慢性疲労症候群など多くの中枢神経疾患は覚醒と密接に関連しています。また、これらの多くにおいてオレキシンが部分的に失われていることがわかっています。現在は覚醒促進のための治療薬が使われていますが、有効性は十分ではないため、新しい治療オプションが望まれています。 - 前臨床試験レベルでは、オレキシン作動薬が気分症状の改善にも役立つことがわかっていることから、これらの症状も開発対象の視野に入れている。
【その他会社全般】
- 今年1月にチーフメディカルオフィサーに中枢神経領域で経験豊富なSteve Kanesを迎え(リンク)、オレキシン作動薬ポートフォリオの開発を加速していく。