2022年8月12日金曜日

2022年上期決算を発表しました

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


8月10日(水)に2022年の上期決算を発表し決算説明会を開催しました。決算説明会にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。詳細はリンクをご覧いただければと思いますが、以下でポイントを絞って解説させていただきます。


決算短信

決算説明資料

決算説明会動画 (WEBCASTのマークをクリック)


●業績の概要

売上高は24億円で、前年度から21%減少しました。これは主に、前年同期には5件あったマイルストン収入が、上期(6月末)に限れば2件に留まったことが要因です。ただ、既に発表させていただいている通り、8月に入ってからアッヴィ社との新規提携による契約一時金(約50億円)、ニューロクライン社に導出しているM4作動薬のフェーズ2試験の開始準備完了によるマイルストーン(約40億円)がありました。これらは、今期の第3四半期以降の業績に反映される予定です。 

営業損失は38億円で、前年度の18億円から20億円増加(損失拡大)しました。これは上記の通り売上高が減少したこと、期初の予定通りに研究開発が進んでいることに加え、円安とインフレの進行が要因です。また、主にこの円安とインフレの進行により、2022年の研究開発費の見込みを67.5億円~77.5億円に修正しています(10億円の増加)。我々の売上高はほとんど米ドルで受け取っており、コストは主にポンドで支払っています。そのため業績は円・ドル・ポンドの3つの通貨の間の為替の影響を受けますが、円安は主には売上とコストの両方の増加要因になり、利益には対しては基本的に足元では大きな影響はありません。


●開発パイプライン

個別の進展はリリースでも開示していますが、主要パイプラインとその進捗を決算説明会資料P9-10に整理しています。個別のアップデートはP10の通りですが、以下にもう少し詳細に解説します。


Verily社 - 今年の1月にアルファベット社の子会社のVerily社と提携を開始しましたが、Verily社の免疫機能(細胞)に関する膨大なデータベースとAIを駆使し(参考)、既にファースト・イン・クラスになりうる複数の創薬ターゲット(GPCR)を特定しました。期待通りの成果が得られたことに一同とても喜んでおり、また、免疫分野に残るGPCRをターゲットとした創薬機会の多さにも、改めて驚いています。

ジェネンテック社 - 提携を開始した2019年からちょうど3年が経過しました。この3年間でジェネンテック社との間で5つの初期段階のマイルストーンを達成しており、非常に順調にプログラムが進んでします。ターゲットには低分子を使うもの、高分子(抗体など)を使うものなど、モダリティも多様で今後の開発進展に期待しています。

アッヴィ社 - これも既に発表の通りですが、8月2日に契約一時金40百万ドル、総額マイルストン12億ドルの、新たな戦略的提携を結びました(参考)。アッヴィ社とは2019年にも炎症性疾患をターゲットに戦略的提携を結んでいますが、今回は神経疾患がターゲットになります。1つ目の提携での信頼関係が2つ目の戦略的提携に繋がったのは、我々の仕事が高く評価されていることでもあり、とても嬉しく思います。

ファイザー社 - 当社が導出しているGLP-1作動薬(PF-070815732)から非常に強力なフェーズ1試験のデータが発表され、とてもワクワクしています(参考)。ファイザー社もコメントしている通り、先行薬のリベルサスに対して、大きく差別化が期待できる可能性がある、まさにベスト・イン・クラスの医薬品候補だと考えています。詳細なデータが発表される9月21日のEASD(参考)に注目するのと同時に、フェーズ2試験の開始にも期待しています。

ニューロクライン社 - 当社が導出しているM4作動薬(NBI-1117568)のフェーズ2試験の開始の目途が立ち(参考)、さらに先行する米カルナ社が良好なデータを発表したことで(参考)、こちらも期待が高まるプログラムになります。米カルナ社のKarXTは、副作用を抑えるため作動薬と拮抗薬を合剤にしていることに加え、1日2回の投与が必要です。薬自体を精密にデザインすることで副作用を抑え、かつ1日1回の投与でよい我々の化合物はベスト・イン・クラスとなる可能性があると考えています。


【主要パイプラインと進捗(決算説明会資料:P9-10)




●その他

2022年度上期は、6月末まででみればほとんど発表できる進捗が無くご心配をおかけしましたが、決算説明会の前にいくつかの大きな進捗をお示しできて一安心しています。足元で我々の事業はとても順調に成長しており、特に、我々が権利を持つ2つの大型の開発品が、それぞれ非常に力のあるパートナーの手でフェーズ2試験に進むであろうことは、創薬企業としての大きな喜びです。また、既にパイプライン一覧にある開発品はもとより、我々独自の創薬プラットフォームであるStaR技術によって、それに続くパイプラインも次々に生み出されてきています。是非、今後の進展に注目いただければありがたいです。

また、企業のステージが一段変わる可能性という意味では、引き続き東証プライムへの上場を目指して取り組みを進めています。以前からご説明の通り、プライム上場の可否は東京証券取引所の判断によりますので、我々からは確定的なことは申し上げられませんが、仮に無事に東証プライムに上場できるとすれば、その時期は2023年の第1四半期(1-3月)となることを見込んでいます。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!



【2022年12月期に発表した進捗(一時金/マイルストン収入と関連するものに絞って整理)】
発表日四半期内容収入の種類今期の売上高
8月2日(参考3Qアッヴィ社と新たな戦略的提携を締結契約一時金契約一時金40百万ドルの一定割合
8月5日(参考3Qニューロクライン社がM4作動薬のPh2試験(IND)を開始マイルストン30百万ドル



2022年8月9日火曜日

米カルナ社がKarXTのP3試験結果を発表しました

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


日本時間の昨夜、米国のKaruna Therapeutics(米カルナ社)が、KarXTのP3試験結果(EMERGENT-2試験)を発表しました。詳細はこちらをご覧いただきたいのですが、主要評価項目及び主な副次評価項目を達成した非常に良好な結果で、陰性症状を含め、これまでのM4及びM1の中枢神経系への効果を裏付けるものになっています。米カルナ社は2023年の半ばにFDAへの承認申請を行う予定としており、統合失調症の治療で約70年間続いたドパミン/セロトニンをターゲットにした治療メカニズムに、新たなメカニズムの薬が加わることになるとみられます。


先日、P2試験の開始を発表した、我々からニューロクライン社に導出しているNBI-1117568は、米カルナ社のKarXTをこれまでもベンチマークの一つとし、同様の作用メカニズムでベストインクラスを目指して開発を進めてきました。詳細は過去のプレゼンテーション資料などをご覧いただきたいのですが、KarXTは狙っていない受容体(M2/M3)による副作用を抑えるため、作動薬と拮抗薬を合剤にした薬で、例えるならアクセルとブレーキを同時に踏んでいる薬です。勿論、米カルナ社の方法も一つのやり方ですが、我々の独自の創薬プラットフォームであるStaR技術を使った「精密な創薬」から生まれたNBI-1117568は、狙った受容体のみに作用するため合剤にする必要がなく、我々とニューロクライン社はベストインクラスの薬剤となることを目指して昨年の提携以降の開発を進めています。






日本時間の朝方に取引が終了した米国の株式市場では、米カルナ社の株価は前日比で+70%超上昇して時価総額は約1兆円となったほか、我々のパートナーのニューロクライン社、同じくM4をターゲットにしているcerevel社なども、株価が上昇しました。米カルナ社が先陣を切って、これらの新しい治療法の可能性を示したことで、ムスカリン受容体をターゲットとした統合失調症治療薬の開発がより現実味を帯び、これまで治療が難しかった患者さんのお役に立つ可能性が増したことは、我々にとっても大きな喜びです。是非、ニューロクライン社にょる、今後のNBI-1117568の臨床試験の進展を見守っていただければと思います。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!



【2022年12月期に発表した進捗(一時金/マイルストン収入と関連するものに絞って整理)】
発表日四半期内容収入の種類今期の売上高
8月2日(参考3Qアッヴィ社と新たな戦略的提携を締結契約一時金契約一時金40百万ドルの一定割合
8月5日(参考3Qニューロクライン社がM4作動薬のPh2試験(IND)を開始マイルストン30百万ドル

2022年8月5日金曜日

ニューロクライン社がM4作動薬のP2試験を開始します

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


先ほどリリースの通り、昨年11月に我々からニューロクライン社に導出していたムスカリン作動薬シリーズの1つであるM4作動薬(NBI-1117568/HTL0016878、適応:統合失調症)の新薬臨床試験開始申請(IND)がFDAに受理され、試験開始の準備が整いました。我々はINDの受理に伴い、30百万ドル(約40億円)のマイルストーンを受け取ります。これは全額、2022年第3四半期の売上となる見込みです。また、つい先ほどですが、日本時間の5日(金)の早朝に、ニューロクライン社は2Qの決算発表と決算説明会を行い、以下の通り当社のM4作動薬が紹介されました(参考)。




先日のファイザー社のGLP-1作動薬に引けを取らず、統合失調症の市場も昨年は全世界で約1.3兆円、2028年には2兆円以上(EvaluatePharma)と、非常にニーズの大きい領域です。また、これまで70年間に亘って、ドパミン/セロトニンに作用する以外の新しいメカニズムが生まれておらず、有効性が高く、副作用も少ない薬の開発が待ち望まれている分野でもあります。リリースにもある通り、我々独自の創薬プラットフォームであるStaR技術の「精密な創薬」が、ベスト・イン・クラスの薬剤を生み出すことに、是非期待したいと思います。


尚、今回のマイルストーン受領のトリガーは上記の通りINDの受理でした。こうしたマイルストーンの受領タイミングは、契約ごとに細かく決まっていますので、一律ではありません。詳細は開示できませんが、今後を含めたマイルストーンの受領の考え方については、2021年度の決算説明会の以下のQ&Aをご参考いただければと思います(参考)。


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Q39:      HTL16878M4作動薬)のPh2試験の開始のマイルストンはアラガン時より大きいと考えてよいのか?

A39:      マイルストンの金額については、申し訳ないですがパートナーとの契約上開示できません。ただ、開発マイルストン総額は2016年のアラガン社との契約では665百万ドルだったのに対し、2021年のニューロクライン社との契約では1,500百万ドルへと倍増しています。従って一般的には、マイルストンの金額規模や受領する回数などが増えると、ご理解いただければと思います。

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尚、コーポレート・プレゼンテーションも同時に更新していますので、こちらもご参照いただければと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いします!



【2022年12月期に発表した進捗(一時金/マイルストン収入と関連するものに絞って整理)】
発表日四半期内容収入の種類今期の売上高
8月2日(参考3Qアッヴィ社と新たな戦略的提携を締結契約一時金契約一時金40百万ドルの一定割合
8月5日3Qニューロクライン社がM4作動薬のPh2試験を開始(IND)マイルストン30百万ドル

2022年8月2日火曜日

アッヴィ社と新たに戦略的提携しました

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


先ほどアッヴィ社との間での、新たな戦略的提携について発表しました。3つの神経疾患に関連するターゲットが対象で、契約一時金の40百万ドル(約53億円)に加え、初期マイルストーン40百万ドル(約53億円)、総額マイルストーン12億ドル(最大・約1,600億円)、売上高に応じた段階的ロイヤルティを将来的に受領する可能性があるものです。


アッヴィ社は2021年の売上世界3位の大手製薬企業で、我々とは2020年に炎症性疾患と自己免疫疾患を対象とした最初の戦略的提携を締結していました(参考)。今回のリリースでもコメントの通り、それ以来、我々独自の創薬プラットフォームであるStaR技術を活用し、非常に効果的に研究が進んできたことから、両社の間で信頼関係が醸成され、今回の新たな大型契約につながったことを一同とても喜んでいます。


また同時に、コーポレート・プレゼンテーションを更新していますので、こちらもご参照いただければと思います。今回のアッヴィ社との新規契約も含めて、既存のライセンスパートナーとの間のマイルストーン残高は、総額100億ドル超(約1.3兆円超)となりました(P10参照)。




ここに書かれているマイルストーン金額は、あくまでも開発の全てが順調に進んだ場合の最大値ですので、全額を受領することは現実的ではありません。一方で、全てが失敗することも考えにくく、足元~中長期にかけて一定割合は受領できる可能性が高いともみています。また、医薬品が販売されれば、いずれのパートナーとの契約でも、このマイルストーンに加えて、売上の一定%のロイヤルティを受領することになります(最大で10%中盤)。


尚、リリースにも記載の通り、契約一時金の40百万ドルは一括で受領しますが、IFRS(国際財務報告基準)のルールに則り、損益計算書には今年の第3四半期、第4四半期、またそれ以降の一定期間に分かれて計上される予定です。また、初期マイルストーンの40百万ドルは、概ね今後3年以内に進む可能性が高い基礎研究段階の進捗に応じて、受領することになります。


アッヴィ社は既存の提携先ですので、これまでも様々なオプションを継続的に話し合ってきました。今回、新たな提携の発表に至るまでには、個人的に思っていたよりも長い時間がかかりましたが、深い議論を通じて、お互いがやりたいことを納得いくまで契約に盛り込むことができましたので、今後のプロジェクト進展に大いに期待しています。


創薬は今年の契約が、来年すぐに製品として花開くという世界ではありませんが、引き続き最先端のテクノロジーを患者さんのお役に立てるべく、着実に進んでいきたいと思っています。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!




【2022年12月期に発表した進捗(一時金/マイルストン収入と関連するものに絞って整理)】
発表日四半期内容収入の種類今期の売上高
8月2日3Qアッヴィ社と新たな戦略的提携を締結契約一時金契約一時金40百万ドルの一定割合