2022年1月6日木曜日

Verily社と戦略的提携を締結しました

みなさん明けましておめでとうございます。

IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

先ほどリリースの通り、米グーグルなどを傘下に持つアルファベット社の子会社のVerily社と戦略的提携を結びました。Verily社は2015年にグーグルのライフサイエンス部門が独立して誕生したヘルスケア分野に特化した企業で、設立以来ファイザー、グラクソ・スミスクライン、ジョンソンエンドジョンソン、武田薬品など、世界の名だたるヘルスケア企業と提携しています(参考)。戦略的提携ですので、契約一時金など短期の収入はありませんが、お互いが持つ先進的な技術を融合して革新的な創薬を行い、将来的に大手企業へのライセンスなどを行うことを目指します。我々は対等なパートナーとして権利を共有しますので、仮に将来の収益が上がった場合にはVerily社との間で50:50の割合で折半される予定です。今回の創薬ターゲットの具体的な数は開示できないのですが、後述の通り非常に膨大なデータを用いて大きな創薬分野をターゲットとしていますので、これまでの戦略的提携よりも一桁大きい規模だとご理解下さい。尚、これまでの提携も含めた、当社の戦略的な提携の位置づけとその概要を以下に整理します。


【戦略的な提携の位置づけの整理】
① 新しい薬のターゲットを探すための提携→ → →② ターゲットに対して実際に薬を作るための提携
人工知能・マシンラーニング等モダリティ
InveniAI社
Verily社
低分子抗体その他
ターゲット
GPCR
PharmEnable社
Kymab社
Twist社
ペプチドリーム社
Captor社
その他
Metrion社
※モダリティ - 「低分子」「抗体」といった治療薬の物理的な種類の別


【戦略的な提携先の概要】
提携の目的パートナー契約時期テーマ提携内容
①新しい薬のターゲットを探すための提携
標的GPCRの発掘InveniAI社2021年7月AI創薬
(基盤技術:AlphaMeld)
免疫疾患関連の複数のGPCRをターゲットとした、AIとML(マシンラーニング)による標的探索のための提携。
Verily社2022年1月AI創薬
(基盤技術:ImmuneProfiler)
免疫疾患関連の複数のGPCRをターゲットとした、膨大なデータベースに基づく標的探索のための提携。
②ターゲットに対して実際に薬を作るための提携
モダリティの拡大Kymab社2016年4月抗体がん免疫領域の複数のGPCRをターゲットとした提携。現在、KY1051が前臨床試験段階
ペプチドリーム社2017年6月特殊環状ペプチド炎症性疾患領域のGPCRをターゲットとした提携。現在、PAR2アンタゴニストペプチドが前臨床試験準備中
Captor社2020年12月TPD
(標的タンパク分解誘導)
消化器領域に関連することが明確に検証されているGPCRをターゲットとした提携。
PharmEnable社2021年1月AI創薬
(創薬困難な標的)
神経疾患に関連する創薬困難なペプチド作動性のGPCRをターゲットに対する化合物設計を目的とした提携。
Twist社2021年12月抗体特定のGPCRをターゲットとした、リード抗体の獲得を目的とした提携。
ターゲットの拡大Metrion社2021年2月イオンチャネル神経疾患に関連するイオンチャネルをターゲットとした提携。



Verily社はグーグルの持つ巨大なデータベース、データ収集能力、演算能力などを活用しつつ、前述のようなトップレベルの製薬企業や医療機器企業との提携によって、ヘルスケアのあらゆる部分を改善するためのサービスを生み出そうとしています。今回、我々が共同で進めるのは、膨大なヒト細胞のデータを、彼らが得意とする人工知能(以下、AI)、機械学習(マシンラーニング)、深層学習(ディープラーニング)などの手法で解析した、「Immune Profiler」という、Verily社が独自に開発した、ヒトの免疫機能に焦点を当てたプラットフォームをスタート地点とする新しい創薬です。

 

ヒトの免疫機能の詳細は未解明な部分が非常に大きいのですが、免疫細胞は外部からのシグナルをキャッチすることで、単独ではなく周囲の免疫細胞と協力して行動したり、がん細胞などの異物などを見分けたりしていることはよく知られています。我々が創薬のターゲットとしているGPCRGタンパク質共役受容体)は、体の中で正にそのようなシグナル伝達を担っているため、実際にCCR6 拮抗薬(ファイザー社に導出)やGPR35 作動薬(GSK社に導出)など既に多くの免疫関連の開発品があり(成長性資料P36)、今回のVerily社との戦略的提携を通じてより探索を深めていきます。

 

Verily社のImmune Profilerには膨大なヒト(健康な場合、疾患がある場合等)の免疫細胞での、遺伝子発現プロファイル(どの遺伝子がどれだけ発現しているか/していないか)やエピジェネティック(実際のタンパクの発現量や修飾等)のデータが蓄積されており、その中には多くのGPCRに関連するデータが含まれています。これらをAIやディープラーニングを用いて解析することで、様々な免疫機能とGPCRの結びつきを解明し、まずは創薬ターゲットとして有望な多数のGPCRを抽出し、その中での優先順位付けを行っていく予定です。尚、選ばれるのは主に、これまでに疾患との結びつきが解明されていないGPCRですので、そのほとんどがファーストインクラスの治療薬の候補になると考えられます。

 

がん分野で免疫に焦点を当てたオブジーボやキイトルーダは治療体系に革新を起こし、足元では2剤だけで合計3兆円という巨大な市場を瞬く間に形成しました。免疫機能を解明し、GPCRを通じてそこへアプローチを行うことは、直接的な免疫疾患は勿論、がんや消化器疾患など免疫と密接に関連するアンメットニーズの高い疾患分野に対して革新的な薬を生み出す可能性を秘めたもので、我々もそれに向かって歩みを進めていきます。

 

本年もどうぞよろしくお願いします!



【2021年12月期に発表した進捗(収入と関連するものに絞って整理)】
発表日四半期内容収入の種類21年の売上高
5月19日(参考2Qファイザー社がMC4拮抗薬の臨床試験を開始マイルストン5百万ドル
6月23日(参考2Qバイオヘイブン社がCGRP 拮抗薬の臨床試験を開始マイルストン非開示
11月22日(参考4Qニューロクライン社にMシリーズを導出契約一時金100百万ドル
12月20日(参考4QGSK社のGPR35作動薬が開発進展マイルストン5百万ポンド