みなさん明けましておめでとうございます。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。
先ほどリリースの通り、米グーグルなどを傘下に持つアルファベット社の子会社のVerily社と戦略的提携を結びました。Verily社は2015年にグーグルのライフサイエンス部門が独立して誕生したヘルスケア分野に特化した企業で、設立以来ファイザー、グラクソ・スミスクライン、ジョンソンエンドジョンソン、武田薬品など、世界の名だたるヘルスケア企業と提携しています(参考)。戦略的提携ですので、契約一時金など短期の収入はありませんが、お互いが持つ先進的な技術を融合して革新的な創薬を行い、将来的に大手企業へのライセンスなどを行うことを目指します。我々は対等なパートナーとして権利を共有しますので、仮に将来の収益が上がった場合にはVerily社との間で50:50の割合で折半される予定です。今回の創薬ターゲットの具体的な数は開示できないのですが、後述の通り非常に膨大なデータを用いて大きな創薬分野をターゲットとしていますので、これまでの戦略的提携よりも一桁大きい規模だとご理解下さい。尚、これまでの提携も含めた、当社の戦略的な提携の位置づけとその概要を以下に整理します。
Verily社はグーグルの持つ巨大なデータベース、データ収集能力、演算能力などを活用しつつ、前述のようなトップレベルの製薬企業や医療機器企業との提携によって、ヘルスケアのあらゆる部分を改善するためのサービスを生み出そうとしています。今回、我々が共同で進めるのは、膨大なヒト細胞のデータを、彼らが得意とする人工知能(以下、AI)、機械学習(マシンラーニング)、深層学習(ディープラーニング)などの手法で解析した、「Immune Profiler」という、Verily社が独自に開発した、ヒトの免疫機能に焦点を当てたプラットフォームをスタート地点とする新しい創薬です。
ヒトの免疫機能の詳細は未解明な部分が非常に大きいのですが、免疫細胞は外部からのシグナルをキャッチすることで、単独ではなく周囲の免疫細胞と協力して行動したり、がん細胞などの異物などを見分けたりしていることはよく知られています。我々が創薬のターゲットとしているGPCR(Gタンパク質共役受容体)は、体の中で正にそのようなシグナル伝達を担っているため、実際にCCR6
拮抗薬(ファイザー社に導出)やGPR35
作動薬(GSK社に導出)など既に多くの免疫関連の開発品があり(成長性資料:P36)、今回のVerily社との戦略的提携を通じてより探索を深めていきます。
Verily社のImmune
Profilerには膨大なヒト(健康な場合、疾患がある場合等)の免疫細胞での、遺伝子発現プロファイル(どの遺伝子がどれだけ発現しているか/していないか)やエピジェネティック(実際のタンパクの発現量や修飾等)のデータが蓄積されており、その中には多くのGPCRに関連するデータが含まれています。これらをAIやディープラーニングを用いて解析することで、様々な免疫機能とGPCRの結びつきを解明し、まずは創薬ターゲットとして有望な多数のGPCRを抽出し、その中での優先順位付けを行っていく予定です。尚、選ばれるのは主に、これまでに疾患との結びつきが解明されていないGPCRですので、そのほとんどがファーストインクラスの治療薬の候補になると考えられます。
がん分野で免疫に焦点を当てたオブジーボやキイトルーダは治療体系に革新を起こし、足元では2剤だけで合計3兆円という巨大な市場を瞬く間に形成しました。免疫機能を解明し、GPCRを通じてそこへアプローチを行うことは、直接的な免疫疾患は勿論、がんや消化器疾患など免疫と密接に関連するアンメットニーズの高い疾患分野に対して革新的な薬を生み出す可能性を秘めたもので、我々もそれに向かって歩みを進めていきます。
本年もどうぞよろしくお願いします!