みなさんおはようございます。CFOの野村です。
昨夜遅くにファイザー社の第2四半期決算が発表され、決算説明会が開催されました。資料はこちらをご覧いただきたいのですが、コロナワクチンや治療薬などに次ぐ扱いで、我々との提携から生み出された経口GLP-1作動薬のPF-07081532の、Phase1試験結果が取り上げられています。口頭でのプレゼンテーションの内容と合わせ、ポイントは以下になります。
【口頭プレゼンテーションでのポイント】
- 6週間という短期間の試験結果にも関わらず、血糖値と体重減少に非常に高い効果があった
- 現在、Phase2試験を計画中であり、投与量の最適化も含めた検証を進める予定
- 「2型糖尿病」「肥満」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」「2型糖尿病・肥満症における心血管リスクの低減」などの治療薬となる可能性がある
- 注射剤、経口剤の全体で見ても、ベスト・イン・クラス(同一カテゴリーの既存薬に対して明確な優位性を持つ医薬品)の薬になりえる
- 非糖尿病性肥満の被験者でも、同じような体重減少がみられた
また、質疑応答ではウェルズ・ファーゴ社のアナリストからの質問を受け、ファイザー社は以下のようにコメントしています。
【質疑応答でのポイント】
- 既存薬(リベルサス)と比較すると、かなりの差別化が図れると思う。血糖値や体重減少でのより高い効果が期待でき、服用時に飲食の制限などもない
- 次のPhase2b試験については、今後すぐに規制当局とコンタクトする予定。社内でも明らかに優先度が高く、「光速プロジェクト(light speed project)」に指定されている
- 「光速プロジェクト」とはファイザー社内での定義で、患者さんにとって、そして経済的にも非常に重要なプロジェクトが指定される。この指定によって、プロジェクトを最速で動かし、リスクを回避のため過剰投資(over invest)もいとわず、トップ自らが隔週・隔月で進捗状況をレビューしていくことになる
- 4~6週間という短い期間で、平均日血糖値がほぼ100mg/dL、体重が5kg減少という高い効果がみられたが、投与量はまだ最適化されておらず、増やせる余地がある
- データの詳細は今後のEASDの発表(参考)を見てもらいたいが、HbA1c(糖尿病の最重要の検査値の一つ。過去1-2か月の血糖値を反映)についても、6週間という短期間の試験にも関わらず非常に有望な結果が確認できると思う
- Phase2b試験を通じて、Phase3試験に最適な化合物やレジメン(薬の投与量など)を迅速に決定していく(Danuglipronも含め、検討されると考えられます)
全体として非常に力強いコメントで、ファイザー社の本気度と、今後の進展がとても楽しみになる説明会でした。また、上に貼らせていただいているプレゼンテーション資料は、ファイザー社が2021年9月に完了したPhase1試験のデータですが、ファイザー社は同じくPF-07081532について最新のPhase1試験も今年の6月に完了しています。こちらの結果が今後、どういう形で公開されるかは現時点では分かりませんが、それもまた楽しみにしています。
ファイザー社が発表したこのPF-07081532は、2015年に契約された我々とファイザー社の戦略的提携から生み出されたもので、我々は開発や商業化の進展に伴って、1ターゲットあたり189百万ドルのマイルストーンの他、売上の一定%をロイヤルティを受領する権利があります(参考)。注射剤、経口剤を合わせたGLP-1作動薬の市場は、去年で約2.3兆円、2028年には4兆円以上(EvaluatePharma)とされる非常にニーズの大きな分野ですので、我々独自の創薬プラットフォームであるStaR技術の「精密な創薬」が、その中でのベスト・イン・クラスの薬剤を生み出すことに、是非、期待したいと思います。
尚、ファイザー社からの戦略的提携では、このPF-07081532も含めて現在3つの開発品が臨床試験が進行中です。決算と同時にアップデートされているパイプライン一覧からも、これまでのところ順調に開発が進んでいます。
PF-07054894 Phase1試験段階 適応症:炎症性腸疾患
PF-07258669 Phase1試験段階 適応症:拒食症
今後とも、どうぞよろしくお願いします!