2022年7月29日金曜日

ファイザー社の第2四半期・決算説明会が開催されました

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


昨夜遅くにファイザー社の第2四半期決算が発表され、決算説明会が開催されました。資料はこちらをご覧いただきたいのですが、コロナワクチンや治療薬などに次ぐ扱いで、我々との提携から生み出された経口GLP-1作動薬のPF-07081532の、Phase1試験結果が取り上げられています。口頭でのプレゼンテーションの内容と合わせ、ポイントは以下になります。




【口頭プレゼンテーションでのポイント】

  • 6週間という短期間の試験結果にも関わらず、血糖値と体重減少に非常に高い効果があった
  • 現在、Phase2試験を計画中であり、投与量の最適化も含めた検証を進める予定
  • 「2型糖尿病」「肥満」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」「2型糖尿病・肥満症における心血管リスクの低減」などの治療薬となる可能性がある
  • 注射剤、経口剤の全体で見ても、ベスト・イン・クラス(同一カテゴリーの既存薬に対して明確な優位性を持つ医薬品)の薬になりえる
  • 非糖尿病性肥満の被験者でも、同じような体重減少がみられた


また、質疑応答ではウェルズ・ファーゴ社のアナリストからの質問を受け、ファイザー社は以下のようにコメントしています。


【質疑応答でのポイント】

  • 既存薬(リベルサス)と比較すると、かなりの差別化が図れると思う。血糖値や体重減少でのより高い効果が期待でき、服用時に飲食の制限などもない
  • 次のPhase2b試験については、今後すぐに規制当局とコンタクトする予定。社内でも明らかに優先度が高く、「光速プロジェクト(light speed project)」に指定されている
  • 「光速プロジェクト」とはファイザー社内での定義で、患者さんにとって、そして経済的にも非常に重要なプロジェクトが指定される。この指定によって、プロジェクトを最速で動かし、リスクを回避のため過剰投資(over invest)もいとわず、トップ自らが隔週・隔月で進捗状況をレビューしていくことになる
  • 4~6週間という短い期間で、平均日血糖値がほぼ100mg/dL、体重が5kg減少という高い効果がみられたが、投与量はまだ最適化されておらず、増やせる余地がある
  • データの詳細は今後のEASDの発表(参考)を見てもらいたいが、HbA1c(糖尿病の最重要の検査値の一つ。過去1-2か月の血糖値を反映)についても、6週間という短期間の試験にも関わらず非常に有望な結果が確認できると思う
  • Phase2b試験を通じて、Phase3試験に最適な化合物やレジメン(薬の投与量など)を迅速に決定していく(Danuglipronも含め、検討されると考えられます


全体として非常に力強いコメントで、ファイザー社の本気度と、今後の進展がとても楽しみになる説明会でした。また、上に貼らせていただいているプレゼンテーション資料は、ファイザー社が2021年9月に完了したPhase1試験のデータですが、ファイザー社は同じくPF-07081532について最新のPhase1試験も今年の6月に完了しています。こちらの結果が今後、どういう形で公開されるかは現時点では分かりませんが、それもまた楽しみにしています。


ファイザー社が発表したこのPF-07081532は、2015年に契約された我々とファイザー社の戦略的提携から生み出されたもので、我々は開発や商業化の進展に伴って、1ターゲットあたり189百万ドルのマイルストーンの他、売上の一定%をロイヤルティを受領する権利があります(参考)。注射剤、経口剤を合わせたGLP-1作動薬の市場は、去年で約2.3兆円、2028年には4兆円以上(EvaluatePharma)とされる非常にニーズの大きな分野ですので、我々独自の創薬プラットフォームであるStaR技術の「精密な創薬」が、その中でのベスト・イン・クラスの薬剤を生み出すことに、是非、期待したいと思います。


尚、ファイザー社からの戦略的提携では、このPF-07081532も含めて現在3つの開発品が臨床試験が進行中です。決算と同時にアップデートされているパイプライン一覧からも、これまでのところ順調に開発が進んでいます。


PF-07081532 Phase1試験段階 適応症:2型糖尿病、肥満など
PF-07054894 Phase1試験段階 適応症:炎症性腸疾患
PF-07258669 Phase1試験段階 適応症:拒食症


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2022年7月25日月曜日

ファイザー社のGLP-1作動薬に関する学会発表

みなさんこんにちは。CFOの野村です。


2015年の我々とファイザー社からの提携から生まれ、先月に3回目のPh1試験終了がClinicalTrial.govに登録された経口GLP-1作動薬のPF-07081532について、欧州糖尿病学会年次学術集会(EASD2022:9月19日~23日@ストックホルム/オンライン)でデータが発表される見込みです。アブストラクト等は以下のリンクをご覧ください。空腹時血糖値や体重減少などについて、一部のデータが記載されています。


Once-daily oral small molecule GLP-1R agonist PF-07081532 robustly reduces glucose and body weight within 4-6 weeks in adults with type 2 diabetes and non-diabetic adults with obesity


経口GLP-1作動薬は、第一世代のリベルサス(ノボノルディスク社)が2019年から先行して販売を開始しており、2028年に世界で約8,000億円(EvaluatePharma社)の売上高になると予想されています。一方で、リベルサスは飲み方に制限が多く(起床後、最初の飲食の前にコップ半分以下の水で飲み、服用後最低30分~できれば2時間は飲食しない)、現在それらを改良した次世代の経口薬の開発が注目されています。開発では主にファイザー社(我々のPF-07081532を含む)とイーライリリー社が先行しています。


当社の行う学会発表や論文などは、これまで通り当社HPの「サイエンス・センター/知識」や「掲載論文」にアップロードしますが、このようなパートナーの開発進展についても、重要と思われるものは本ブログでもお知らせしていければと思っています。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2022年7月22日金曜日

英国王立がん研究基金(CRUK)と提携しました

みなさんおはようございます。CFOの野村です。


先ほどリリースの通り、Cancer Research UK(CRUK:英国王立がん研究基金)との間で、我々の自社開発プログラムでがん免疫療法薬候補であるEP4拮抗薬(HTL0039732)の開発について提携しました。CRUKは、2023年上半期から開始が予定されているHTL0039732のPh1~Ph2a試験において、主に試験デザイン、試験実施、試験の費用負担を行います。これは、競争が激化し、専門性も高く、多くの併用療法が検討されているがん免疫療法薬の開発において、より豊富な経験と資金に基づいて迅速かつ効率的に開発を進めるための提携です。また、我々は以前に成長戦略としてご説明の通り、HTL0039732の一定の臨床試験が終了して付加価値が高まった段階で、製薬企業への導出を検討する予定です。今後の成長戦略については、以下のコーポレート・プレゼンテーション資料からの抜粋もご参照いただければと思います。






一部はリリースにも書かせていただきましたが、現在のがん免疫療法薬は、効果があるがんの種類と効果がないがんの種類に分かれており、さらに効果があるがんに対しても、単剤では2-3割程度の患者さんにしか効かないのが、残念ながら現実になります。EP4拮抗薬は、現在のがん免疫療法薬と併用することで、これらの有効な治療法に乏しい患者さんに対して有効な治療となることを期待しています。がんの治療薬の開発なので、一般的に初期の臨床試験から患者さんを対象とした試験になり、加えてHTL0039732では単剤療法に加えて併用療法での評価が行われる予定です。現在販売されているがん免疫療法のTop3製品(キイトルーダ、オプジーボ、テセントリク)の売上高だけでも、がん治療薬全体の2割弱である約3.8兆円(2021年/EvaluatePharma)と巨大ですが、例えばこのような既存製品との併用によって、少しでも効果が得られる患者さんが増えることを願っています。


また、今回パートナーとなったCRUKは世界最大の民間がん研究基金であり、これまで累計で140以上のがん治療薬の臨床試験を実施し、既に6製品の新薬の上市に成功しています(テモゾロミド、アビラテロン、ルカパリブ、ペメトレキセド、エトポシド、フォルメスタン)。直近の2020/2021会計年度では、合計で421百万ポンド(約700億円)の資金を提供しており、臨床試験への支援では今回の当社と同じくPh1~Ph2a試験を中心に23プログラムを支援しています。支援先はベンチャーのみならず、ロシュ社やリリー社などの大手製薬企業も含まれており、また、日本企業では小野薬品との間で2019年に戦略的提携を結んでいます。詳しくはCRUKのウェブページもご参照下さい。


本提携は今期の収入に直ちにつながるものではありませんが、当分野で高い専門性を持つCRUKから我々のEP4作動薬が高く評価されたこと、また、CRUKとの提携で迅速で効率的な臨床試験が行われることにより、今後の成長戦略に向けた第一歩が踏み出せたことを、一同とても喜んでいます。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!