2023年5月14日日曜日

通期決算説明会以降のQ&A

みなさんこんばんは。CFOの野村です。


2/14(火)の202212月期オンライン決算説明会、3/23(木)の株主総会、そして3/24(金)の個人投資家説明会(大阪・名古屋)について、総計で498名という多くの皆様にご参加いただきました。お忙しい中にも関わらず本当にありがとうございました。説明会中やその前後も含めて、口頭、テキスト、メールなどでいただいていた合計44件のご質問、ご意見、激励などのうち、重複を整理した以下の28件についてお答え致します(※カッコ内の数字は同様の主旨の質問の件数です)。回答までに普段にも増して長い時間をいただき、既に231Qの決算後となってしまい大変恐縮です。この場を借りてお詫び申し上げます。



●目標や今後の戦略について(3

Q1:今期の臨床試験入りと前臨床試験入りの目標はいくつか?

A1:あくまでも現時点での想定ですが、23年の臨床開始プログラムは自社品・提携品を合わせて45品目、前臨床試験開始プログラムは2品目程度とみています。自社品は既に開示の通り2品目以上の臨床開始を予定しており、提携品はパートナーの開発動向によりますが23品目の臨床試験開始される可能性が高いと、現時点では考えています。

 

Q2:日本事業は自社開発を考えているのか?またその資金はどこから調達する予定か?

A2:開発品の特性にもよりますが、基本的にはリターンを最大化するため自社での開発・販売を行う方針です。当初の資金は、現在保有する現預金約660億円の一部を活用予定ですが、製品販売後はその売上の一部を次のパイプラインに投資します。海外で承認済・開発後期にあるパイプラインの導入から始め、将来的にはヘプタレス社の創薬プラットフォームから生み出される自社品の開発の割合を増やしていく計画です。尚、導入品にもよりますが、海外で承認済/開発後期にある開発品への研究開発投資は一定以上が資産として認識されるため、その場合には損益計算書に与える影響は限定されます。

 

Q3:イーライリリーとファイザーは提携内容が重複しているように見えるが、どのような戦略なのか?

A3:疾患領域は一部重複していますが、それぞれ違う標的をターゲットとしており、将来的には異なる特徴を持つ薬として開発・販売される可能性があります。我々の提携では、1つのターゲットとメカニズム(作動薬、拮抗薬...etc.)の組み合わせごとに1社と独占的な契約を結ぶため、例えばファイザー社と提携しているGLP-1作動薬は、イーライリリー社を含めた他社とは提携できません。糖尿病・代謝性疾患に関連すると言われるGPCRは、GLP-1以外にもいくつかが知られており、イーライリリー社とはそれらも踏まえて開発を進める予定です。



●個別の開発品の動向について(16

Q4:LotiglipronPF-07081532)とDanuglipronでは、Lotiglipronの方が期待されているとは思うが、仮にLotiglipronが選ばれない場合の理由、その確率、その後のLotiglipronの状況について御社としての考えはあるか?(4

A4:一般論として、現在のLotiglipronのフェーズ2b試験の結果が、Danuglipronを明確に下回る安全性・有効性となれば、Lotiglipronは選ばれないと考えられます。現状でその確率を当社からコメントするのは差し控えますが、基本的に12回投与のDanuglipronに対しLotiglipronは1日1回というメリットがあり、かつ、昨年開示されたLotiglipronのフェーズ1b試験の安全性・有効性は良好でした。仮にLotiglipronが選ばれなかった場合のその後の方針は選ばれなかった理由に大きくよるので、現時点ではコメントを控えさせていただきます。

 

Q5:Lotiglipronの想定市場規模についてファイザー社は米国市場で900億ドルと想定しているようだが(原文ママ)、米国以外を算出しない理由はあるのか?

A5:提携先の開示ですので、我々から明確なご回答はできません。しかし、ファイザー社は昨年12月のカンファレンスで ”Now the primary focus here is the U.S. market, which today, due to pricing considerations, accounts for 90% of GLP-1 sales, a ratio we do not see changing materially in the future” 参考P35)と発言しているため、米国を主な市場として想定しているとみられます。一方で、Lotiglipronはフェーズ2b試験の段階でも米国・欧州・日本を含む世界8か国・87施設で実施されており、開発に成功すれば米国を含む全世界に展開されるものと考えられます。尚、ファイザー社は米国のGLP-1作動薬全体の市場として、2030年にご質問にある900億ドル(約13兆円)としており、ファイザー社の経口GLP-1作動薬としては~100億ドル(約1.3兆円)との想定を置いています。(参考P90-91

 

Q6:仮にLotiglipronの米国売上が900億ドルであった場合(原文ママ)、そーせいにも米国市場からだけで年間約1,000億円のロイヤルティ収入が入ると考えられるが、この計算は概ね正しいか?

A6:A5の通り、ファイザー社は自社の経口GLP-1作動薬の売上高ポテンシャルを米国で~100億ドル(約1.3兆円)としていますが、仮にLotiglipronが米国で約100億ドル売上高となった場合、我々がそこから受領する可能性のあるロイヤルティの規模感は、開示情報からも推察可能な通り年間約1,000億円程度と考えています直近では、複数の海外メディアも、我々をGLP-1作動薬の関連企業として紹介しています。ロイターSecurities)(本回答は公開後に質問を受け微修正しています)

 

Q7:ファイザー社のLotiglipronPF-07081532)はフルアゴニストだと思うが、Danuglipronはパーシャルアゴニストなのか?

A7:提携先かつ当社とは直接関係のない開発品ですので、我々から明確なご回答はできません。Danuglipronも含むGLP-1作動薬のアゴニスト活性を比較した文献の一例をお示しします(参考)。

 

Q8:LotiglipronPF-07081532)の上市時期についてファイザー社は先行薬に追いつくと発言しているが、一般的に早期上市にはどのような手段があるのか?

A8:提携先の開示ですので、我々から明確なご回答はできません。一般論として、早期上市を行うための規制は国ごとに異なりますが、類似の開発品における米国での事例では、ブレークスルーセラピーの指定や優先審査バウチャーの活用などが選択肢となりえる可能性はあります。

 

Q9:Lotiglipronが現在フェーズ2b試験中ということは、既にPOCが取れているということか?

A9:既に患者様を対象とした2度のフェーズ1b試験を既に完了しており、作用機序からみても、一般的にPOCは確立されていると考えています。

 

Q10:ファイザー社との提携パイプラインが、ファイザー社に買収される可能性はあるか?

A10:一般論から考えれば、可能性は大きくないと考えています。ファイザー社との提携パイプライン(GLP-1作動薬、CCR6拮抗薬、MC4拮抗薬)は、基本的に現時点でも既にファイザー社のパイプラインであり、当社は事前に定められたマイルストンやロイヤルティを受け取る権利を持っています。このような場合に、ファイザー社が当社の持つ権利を買い取るケースは一般的に稀であり、仮に行うとしても、現在の開発状況を踏まえて我々とファイザー社双方の合意を経ねばならず、ハードルは高いと認識しています。

 

Q11:M1作動薬が新たな前臨床候補になったが、 ニューロクライン社がフェーズ1試験を開始予定のM1作動薬と同じ化合物か?国内の開発開始はいつごろになるか?(2

A11:同じ化合物です。日本での開発開始予定は、現在パートナーのニューロクライン社と協議中です。M1作動薬の日本の開発権は我々が持っていますが、ニューロクライン社の開発と歩調を合せることでより効率的に開発が進むため(例:ニューロクライン社のフェーズ1試験に日本人をリクルートしてもらい、その分のコストのみを当社が負担するなど)、協調して開発を進めることを想定しています。

 

Q12:コロナ治療薬の進捗状況は?(2

A12:現在、基礎/探索段階が成功裏に終了しつつあり、今後の開発方針等を検討しています。一方で、コロナ治療薬に対する社会的なニーズは、我々が本プロジェクトをスタートした2020年時点から変化しており、今後の動向を注視しつつ必要な開発やライセンスの可能性を模索します。

 

Q13:AZD4635の返還時期や、A2b拮抗薬との併用の可能性をどう考えているか?

A13:返還された場合の開発方針、ポテンシャル、潜在的な導出先を精査しつつ返還交渉を進めていますが、時期は現時点では未確定です。A2b拮抗薬との併用の可能性はあり得るとは思いますが、両サブタイプをターゲットにするのであれば、他社のようにA2a/A2bデュアル拮抗薬として開発するのが一般的かと考えます。

 

Q14:H4拮抗薬は開発の優先順位が下がり、SSTR5等と同じ状況になるのか?

A14:将来的な可能性としては否定しませんが、現時点では新たな適応症への応用可能性を検討中です。H4受容体には多くの機能があることが示唆されていますので、様々な角度からの検討が必要だと考えています。


 

●技術・技術提携について(8

Q15:Twist社が提携先のリストから消えたが、提携を含めた今後の抗体への取り組み予定は?(3

A15:GPCRに対する抗体はジェネンテック社との創薬提携で開発を進めており、引き続き動向を注視しています。構造を安定化させたタンパク質が抗原として使えるため、GPCRに対する抗体医薬品は我々のStaR技術の強みを活かせる分野です。一方で、患者さまは注射薬(抗体)よりも経口薬(低分子)がよいのも事実であり、例えば抗GPCR抗体が発売されている数少ない領域の1つである片頭痛治療薬(ターゲット:CGRP)では、先行した抗体医薬の売上は伸び悩み、数年後に市場に登場した経口薬が急速に普及しています。結局どのモダリティ(低分子、抗体...etc.)がよいかは、疾患の種類や個別ターゲットの競合状況などに大きく左右されるため、その見極めが重要だと考えています。

 

Q16:Metrion社などの技術提携先と行っている、GPCR以外へのStaR技術の応用に進展はあるか?

A16:Metrion社とのイオンチャネルを対象とした技術提携は、比較的順調に進展しています。基礎研究なので開示はしていませんが、このまま順調に開発が進み将来的に皆様に進展をお示しできればうれしく思います。他方で、ノウハウの蓄積があるGPCRとは異なる部分も多く、基礎研究に時間を要している点はご理解いただければと思います。また、同じく膜関連タンパクのトランスポーターやインテグリンなど、新たなターゲットにも中長期的にチャレンジしていきたいと考えています。(参考、P27)


Q17:DNA Encoded Library(DEL)は現在もDyNAbindとの提携なのか?それとも内製化して自社技術となっているのか?

A17:DELは現在、一部を内製化、一部を外部委託で進めています。DELは現在ではDyNAbind社に限らず、多くのプレーヤーがキットやサービスを提供している状況にあり、我々はこのようなキットと自社のノウハウと合わせて内部でスクリーニングを行うと同時に、難しいターゲットについては外部委託して探索を進めています。


Q18:Verily社などの技術提携と、Precision Lifeなどとの提携の違いは?

A18:Verily社も含め、技術提携は基本的に最先端のテクノロジー同士を融合させ、革新的な治療方法を生み出し、単なる委受託関係ではなく将来のリターンを分け合うものです。一方で、ご指摘のPrecision Lifeなどは、当社からの委託の範囲を超えるものではなく、先方の開示については先方の方針次第ですが、我々からの開示は行っていません。


Q19:新規提携において「製薬会社からのアプローチが多い」と聞いたが、実態としてはどのような感触を持っているか?

A19:我々はGPCR創薬での世界トップ企業の一社だと自負しており、また業界内でもそのような認識を持たれているため、製薬企業側からアプローチを受けることが多いのは事実です。一方で、完全に受け身というわけではなく、業界で豊富な経験・ネットワークを持つマーカス・メッセンジャーを中心に事業開発活動に積極的に取り組んでおり、疾患領域などから適切と思われるパートナー候補に、我々からアプローチするケースもあります。

 

Q20:自社パイプライン(EP4作動薬、GPR52作動薬、EP4拮抗薬)の提携はどのタイミングが最適だと考えているか?

A20:開発品にもよりますが、現時点の当社の投資体力からは、グローバル開発では臨床試験は安全性と初期の有効性を示すデータが得られた時点(フェーズ1bから2a相当)で大手製薬企業と提携するのが最適だと考えています。安全性だけのデータ(フェーズ1a試験など)だとディールの規模が限定される反面、大規模な有効性のデータ(フェーズ2b試験以降など)には多額の投資と比較的高い失敗のリスクがあるためです。一方で、A2にも記載の通り、日本(+APAC)では自社開発を進め、最終的に販売までを行うことで、投資リターンを最大化することを目指しています。

 

●その他(17

Q21:東証プライム申請の状況はどうなっているのか?(9

A21:既にご案内の通り、315日に東証プライム市場に上場しました。これまで当社を支えていただいた多くのステークホルダーの皆様に深く御礼申し上げます。申請は昨年末に行いましたが、我々は時価総額(1,000億円以上)がプライム上場の形式要件(収益基盤)の一部であったため、申請発表で株価が変動してしまうと上場審査の障害となる可能性があり、主幹事証券と相談の上、申請の発表は行いませんでした。尚、東証プライム上場を受け、427日にTOPIXへの組み入れが行われました。

 

Q22:過去4年間の売上/利益が安定していることを踏まえ、業績予想や中計を開示すべきでは?(2

A22:過去4年間の業績は結果としては安定していますが、契約一時金とマイルストンが売上げの68割を占めており、依然として蓋然性の高い業績予想や中計をお示しすることは困難だと考えています。業績予想や中計を開示し、変化があれば都度それを修正するという方法があることは理解しつつも、過去4年の中でも、例えば売上が期初の社内見込みの約2倍に上振れした年もあり、予想の難しさを痛感しています。混乱を招かないためにも、現時点では業績予想や中計は非開示とさせていただきます。

 

Q23:ノバルティスからのロイヤリティ(2026年問題)についてアップデートはあるか?

A23:特段のアップデートはありません。ノバルティスに導出している3製品(シーブリ、ウルティブロ、エナジア)の主要な特許は2026年まで(一部延長の可能性あり)ですので、これらに代わる安定的な収益基盤を、M&Aや新開発品導入も含め模索しています。

 

Q24:新卒採用等若手研究者育成についてどのような施策を行っているか?

A24:一般的な育成方法は概ね行っており、それらを除くと非常に初期の研究プロジェクトで、プロジェクトリーダーを若手に任せる点がやや特徴的です。これは早くから自分の専門領域に留まらない創薬の全体像を理解してもらい、加えて将来必要となるマネジメント能力を意識してもらうことを目的としています。また、そもそもヘプタレス社の若手研究者は入社時点で既に非常に高い専門性を身に着けており(多くが博士号保有)、当社のアカデミックな社風に惹かれて入社するケースが多いことも特徴です。

 

Q25:資料から科学的な情報が減ってきていると感じており、特に自社品はよりデータを含めた解説ができないか?

A25:我々も自社品の科学的な説明は最重要と考えており、昨年から決算説明会とは別にR&D説明会でご説明することとしました(参考)。これは当社の事業が成長し、時間の限られる決算説明会ではサイエンスについて十分に説明しきれないためです。今後もサイエンスに関する深いディスカッションは、R&D説明会など、別途ご説明の機会を設けさせていただきます。ご要望ありがとうございました。

 

Q26:目標株価はいくらか?株価対策について何を行っているか?

A26:株価は投資家の皆様によって市場で決まるものですので、当社から具体的な目安をお示しすることは差し控えさせていただきます、申し訳ございません。株価対策のみを目的としているわけではありませんが、我々としては投資家の皆様と建設的な対話を行うため、以下を重視しています。

(1) そもそも企業として真っ当に事業を成長させる

(2) 投資家の属性(機関・個人)を問わず、真摯・平等・開かれた対話を心がける

      • 決算説明会やR&D説明会などを誰でもリアルタイムで参加可能とし、質疑応答含めて動画を公開しています
      • 個人投資家様向けに、誰でも参加可能かつ口頭で質問ができるオンライン説明会を実施しています
      • 株主総会後に株主の皆様と経営陣が、対面でフランクにコミュニケーションできる場を設けています
(3) 比較的難解なセクターの特性を踏まえ、分かりやすい情報発信に努める
      • 本オフィシャルブログなど通じて、リリースの解説やご質問への一問一答を発信しています
      • 主にセクターに馴染みの薄い投資家様に向け、セクター入門セミナーを実施、動画を公開しています(参考


Q27:テレビCM放映など検討しているか?

A27:我々は現時点では大手製薬企業を主な顧客とするバイオ企業であり、日本で直接販売する製品も無いことからテレビCMは検討していません。今後、中期的な企業・事業の成長に伴って、その都度適切なPR方法を検討してまいります。

 

Q28:今回の通訳の方は声に気合い入っていてとても良かったです

A28:コメントありがとうございます。通訳を介した会話となり、日本人投資家様にはご面倒をおかけしますが、日英に拠点を持ってグローバルに事業を展開していることは、当社の最も大きな強みの一つでもあります。今後も、よい通訳の方にご担当いただけるよう手配に努めますので、引き続きご支援の程よろしくお願い申し上げます。

2023年5月12日金曜日

1Q決算を発表しました

みなさんこんにちは。CFOの野村です。


本日、1Q決算を発表しました。詳細な数字は決算短信(参考)をご覧いただきたいのですが、売上高9.4億円(前年同期は11.2億円)、営業赤字19.6億円(前年同期は22.1億円の赤字)となりました。1Qは新規契約やマイルストン収入を伴う進捗は無く、決算という意味では静かな3カ月となりました。


【セグメント別の売上高(決算短信:P5)】
(億円)
項目22年1Q
(1-3月)
23年1Q
(1-3月)
増減詳細(最新決算について)
契約一時金・マイルストン1.22.390%-
契約一時金----
マイルストン0.3--マイルストンを伴う研究開発の進展なし
前受収益振替額0.92.3150%受領済の契約一時金の分割計上(22年の新規契約によりやや増加)
ロイヤルティ7.56.3-16%ノバルティス社の3製品*の売上からの収入(円高によりやや減少)
医薬品販売---久光製薬へのオラビ錠の国内製品納入(1Qは出荷ロットなし)
その他2.50.9-66%主に提携先からのFTE/研究開発支援金(研究が進展しピークアウト)
合計11.29.4-16%
*シーブリ、ウルティブロ、エナジア


セグメント別の売上高に出てくる「前受収益振替額」はやや聞きなれない言葉かもしれませんが、これは既に受け取っている契約一時金のうち、会計上まだ計上されていなかったものが、研究開発の進捗に従って計上されるもので、大半が昨年契約したアッヴィ社とイーライリリー社との間の創薬提携の契約一時金です。同じく本日発表の、四半期報告書の契約負債(参考、P20)がその残高を表しており、23年3月末で約62億円残っています。これが、概ね今後3年間で計上されることになりますが、研究開発の進捗により、必ずしも四半期毎に均等には計上されない点はご注意下さい。


研究開発の進展としては、提携品では、1月に開示させていただいたTempero Bio社(mGlu5NAM)の助成金受領とFDAからの臨床試験開始の承認(参考)に加え、ファイザー社やニューロクライン社の決算説明会での当社提携品への言及、Centessa社(OX2作動薬)の前臨床試験開始、Formosa社のAPP13007をFDAに承認申請など、いくつもの重要な進展がありました。これらは別途ブログにまとめていますので、興味があればご参考ください。また、自社品では特段の進展は開示できていませんが、臨床試験開始に向けて着々と準備を進めていますので、こちらは今後の発表をお待ちいただければと思います。


尚、直近では当社の本質的な強みとして、当社のStaR/SBDDの創薬プラットフォームが他のGPCRに特化したベンチャーとどう違うかの質問が増えている印象です。そこで1Q決算に合わせて、このような他のGPCRベンチャーとの開発段階や提携数などの比較も加え、コーポレートプレゼンテーションを若干アップデートしました(参考、P42)。1Qでは決算の数字自体にインパクトは乏しいですが、引き続き事業を着実に事業を前進させる所存です。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2023年5月8日月曜日

提携・導出先企業のアップデート

みなさんおはようございます。CFOの野村です。

パートナー先の1Q決算が出揃いました。決算では大きな発表こそありませんでしたが、ファイザー社とニューロクライン社からは、説明会の中でも当社と関係するプログラムについて多くの言及がありました。この2社を中心に、直近の進捗をアップデートさせて下さい。


ファイザー社参考:1Q決算関連資料

5/2の1Q決算説明会の質疑応答で、GLP-1作動薬(PF-07081532)の最も進むフェーズ2b試験の結果の判明時期やデータの目標のコメントがあり(参考)、加えて翌日の5/3には、ClinicalTrial.gov(NIHのデータベース)で同試験の情報が更新されました参考。ポイントは以下の通りです。

  • 年末~年初の試験結果データにとても期待している"we look forward very much to data, maybe later this year or possibly early next year"
  • (32週の効果として)肥満症で15%の体重減少は野心的なよい目標So for obesity, that's a really good ambition to have up to 15% ”)
  • フルアゴニストとして差別化されうるデータを待っている"data readout that we may have a differentiated profile for our full agonists"
  • 被験者数が当初の780名→900名に増えてリクルートが完了。主要な結果が出そろう"Primary Completion Date"が2023年11月13日に更新

昨年末のリクルート開始から正味約4カ月で、Primary Completion Dateを当初の24年1月から23年11月へと約2カ月短縮し、被験者数も780名から900名へと120名も増やしたファーザー社の実力と本気度には脱帽です。900名のフェーズ2b試験は、経口薬の競合となりうるLY3502970の二つのフェーズ2試験の合計よりも大きな規模で、今年の年末~来年の年始にも公開される可能性があるデータを、我々一同とても楽しみにしています。

また、GLP-1作動薬を中心に、非常に多くのニーズがありながら、これまで有効な治療法が乏しかった肥満に対する医薬品開発が直近で非常に注目されており、海外の業界ニュースサイトでも当社が「肥満薬市場でのトップ6社(Top 6 Obesity Stocks)」として、イーライリリー社やノボノルディスク社と並んで紹介されました。こちらもよろしければご覧下さい(参考)。

尚、ファイザー社とはGLP-1作動薬も含めた3品目の臨床試験が順調に進んでいます。詳細はファイザー社のパイプラインリスト(Pfizer PipelineP7~P8)や、多数の補助的な試験(肝障害・腎障害など他の疾患を併発する患者や薬物相互作用などの検証)も含めて以下の開発品表に整理していますので、ご参考下さい。


ニューロクライン社(参考:1Q決算資料

5/3の1Q決算説明会の質疑応答で、ムスカリン作動薬シリーズについての多くのコメントがありました(参考)。ポイントは以下の通りです。

  • M4作動薬/NBI-1117568のフェーズ2試験の進捗は非常に順調"we're doing extremely well with the enrollment in that Phase II study"
  • M1/M4作動薬/NBI-1117570について今年フェーズ1試験を開始予定"we plan to take NBI-570, a dual M1/M4 agonist into Phase I clinical development this year"
  • M1作動薬は認知症状から他の神経疾患まで、明らかに幅広い疾患に対する多くの機会がある"M1 selective molecules which we also have within the portfolio of actives that we gain access too, they are obviously a broad range of different opportunities there ranging from cognition to other neurological disorders"
  • 1つの化合物だけではなく、多くの異なるムスカリン作動薬について提携できたことが、そーせいとの提携の魅力の一つ"That was one of the attractions of the deal that we were able to do with Sosei Heptares was the ability to again, access to not just one molecule in the muscarinic agonist space, but to a range of a portfolio of molecules with differential selectivity"

全体として、当社からライセンスしている3つのムスカリン作動薬のメカニズム(M4作動薬、M1/M4作動薬、M1作動薬)のすべてに対して、高い期待値をもち、幅広い中枢神経疾患への適応を見据えた、力強いコメントが目立った説明会でした。


Centessa(参考:2022通期決算発表発表資料

少し前ですが、3/30に22年通期決算を発表し、当社からラインセンスしているOX2受容体作動薬のORX750について、以下のコメントやデータの発表がありました。

  • 現在、臨床試験の開始に向けて前臨床試験中("currently in preclinical development and undergoing IND-enabling activities"
  • 2023年後半に前臨床データを学会等で発表予定"The Company expects to share preclinical data at a scientific meeting later this year"
  • ナルコレプシーや睡眠障害のベストインクラスの治療薬の可能性を持つ"potential to be a best-in-class therapy to treat narcolepsy and other sleep disorders"
  • 構造ベース創薬により、オレキシンシグナルを代替する可能性のあるORX750を発見"Structure-based drug design has enabled the discovery of ORX750 as potential orexin signaling ‘replacement therapy’"
  • ナルコレプシー1型と睡眠障害を対象として、20億ドル(約2,600億円)の市場を形成する可能性


上記のデータでは、マウスの試験で良好な有効性がみられています。今年後半に予定されている、より詳細な前臨床データの発表にも期待したいと思います。


Formosa社

5/5にAPP13007をFDAに承認申請しました(参考)。当社は2017年にアクティバス社をAPP13007ごとFormosa社に譲渡しており、今回、マイルストンはありませんが、今後の開発に従いマイルストンやロイヤルティを受け取る可能性があります。尚、Formosa社からの全収入は売上高ではなく、金融収益として認識されます。アクティバス社に関連するこれまでの主なニュースは、以下の通りです。

20106月 アクティバス社を完全子会社化
20116月 アクティバス社が岐阜薬科大学と共同研究を開始
20142月 アクティバス社が前臨床試験開始
20178月 アクティバス社をFormosa社に株式譲渡
20197月 Formosa社が臨床試験を開始(マイルストン:2.5百万ドル)
20213月 Formosa社がPhase3試験を開始(マイルストン:2.5百万ドル)
2022年8月 Formosa社より1.0百万米ドルのマイルストンを受領(マイルストン:1.0百万ドル)

APP13007はアクティバス社の独自技術を活用したステロイドのナノ粒子製剤で、承認されれば白内障手術後の眼内炎と疼痛に使用される予定です。今回の承認申請は、一部でもAPP13007の研究開発に携わっていた我々にも大変嬉しいニュースであり、また将来的に年間約300万件(参考)と言われる米国で白内障手術を受けられる患者様に、この薬が少しでも役に立つことを願っています。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!


【開発品表(臨床段階のもの)】
パートナー開発コード作用メカニズム対象疾患開発段階試験番号人数開始終了ステータス主な対象・目的
ファイザー社PF-07081532GLP-1作動薬糖尿病/肥満フェーズ1aNCT041482092219年11月20年3月完了健常人
フェーズ1bNCT043055876620年3月21年7月完了患者
フェーズ1bNCT051582443421年12月22年6月完了患者
フェーズ2bNCT0557997790022年10月23年11月観察中患者
フェーズ1NCT054786032422年8月23年5月完了その他(肝機能障害)
フェーズ1NCT055102453222年8月23年10月組入中その他(腎機能障害)
フェーズ1NCT05652647622年12月23年3月完了その他(薬物動態)
フェーズ1NCT056716533223年1月23年8月組入中その他(薬物相互作用)
フェーズ1NCT056778672023年1月23年3月完了その他(剤形)
フェーズ1NCT057457011623年2月23年5月組入中その他(薬物相互作用)
フェーズ1NCT057883282423年3月23年9月組入中その他(薬物相互作用)
PF-07054894CCR6拮抗薬炎症性腸疾患フェーズ1aNCT043888788420年7月22年6月完了健常人
フェーズ1bNCT055493232722年11月24年10月組入中患者
PF-07258669MC4拮抗薬拒食症フェーズ1aNCT046287932921年3月21年8月完了健常人
フェーズ1aNCT0511394015021年11月23年4月組入中健常人
ニューロクライン社NBI-1117568M4作動薬統合失調症フェーズ1aNCT0324422812017年8月19年9月完了健常人
フェーズ2NCT0554511121322年10月24年12月組入中患者
フェーズ1NCT049353201521年7月21年10月完了その他(剤形)
フェーズ1NCT048492861618年9月18年12月完了その他(薬物動態)
TemperoBio社TMP-301mGlu5 NAM物質使用障害フェーズ1aNCT037850547118年11月21年3月完了健常人
フェーズ1NCT04462263820年6月21年6月完了その他(薬物動態)
※ブルーが主な臨床試験
※Recruiting:組入中、Active, not recruiting:観察中、Completed:完了、として表記
※その時点で公的なデータベースに登録されているもののみを記載