2020年12月21日月曜日

GPR35作動薬をGSK社に導出しました

みなさんおはようございます。

IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

本日リリースの通り、前臨床段階にあった経口GPR35受容体作動薬を、英グラクソ・スミスクライン社(以下、GSK社)に導出しました(参考)。我々は契約一時金、初期マイルストン、研究開発支援金の合計で約44百万ドル(最大)を受領し、さらに開発が進めば総額マイルストン約437百万ドル(最大)と段階的ロイヤリティを受け取る可能性があります。背景は後段で解説させていただきますが、最初の44百万ドルのうち1/3が、2012月期4Qの売上高の目安になります。今回のGPR35受容体作動薬は前臨床試験を開始してすぐでしたが、高い価値での提携となったことを一同喜んでいます。

 

GPR35G Protein-Coupled Receptor 35、別名:CXCR8)は、クローン病や潰瘍性大腸炎を含む、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel DiseaseIBD)と関係する可能性が指摘されており(参考1参考2)、GSK社はこれらの疾患の治療法開発を目指して開発を進める方針です。世界全体で初期の開発品を含めても、現状でGPR35をターゲットにIBDの治療を目指す開発品は我々のもの以外にはないため、一般的に、開発が順調に進めばファーストインクラスの治療薬となる可能性があります1。また、通常ですと前臨床試験からPhase1試験に入るまでは2年程度かかるので、順調に進めば臨床試験は2023年ごろ開始される可能性があり、我々もそれをサポートすべく綿密に連携していきます。

 

さて、ここからはよくご質問いただく、①初期マイルストン②ロイヤルティ率、の2点を是非この機会に解説させて下さい。

 

    初期マイルストンについて

今回のGSK社も含めて、導出契約のリリースでは「契約一時金、初期マイルストン、(研究開発支援金)の合計で最大〇〇億円」と書くことがあります。具体的には、後段でお示しした2015年以降の主な11個の契約のうち(6)(7)(8)(11)が当てはまります。初期マイルストンとは、基礎研究の進展や動物試験開始など、Phase1開始までのアーリーな進捗に伴うマイルストンを合計して指しています。

これらの売上のうち、どの程度が契約の初年度に計上され残りがいつ計上されるかは、ケースバイケースなので一概には言えません。ただ、2019年のジェネンテックと武田薬品との契約を見ていただくと、どちらも「一時金+初期マイルストン:合計最大26百万ドル」だったのに対し、契約の初年度(1912月期)の売上高はそれぞれ10.01億円と11.55億円(参考/有報18ページ)でしたので、目安としては、全体の約1/3が初年度の売上になると思っていただければありがたいです

尚、今回のGSK社との契約でいえば、一般的には前臨床試験からPhase1試験開始まで約2-3年ですので、順調に開発が進むとそのくらいで最初の約44百万ドル(最大)を受領します。ただ、初年度に受領する契約一時金以外の、初期マイルストーンや研究開発支援金は「売上」として計上されるか「研究開発費の相殺」としてコストから引かれるかは、契約内容によって違うことや、一度の収入が5百万ドル以上のものが「重要なマイルストンに関する収益」として原則開示の対象になるため(参考/有報15ページ)、それ以下の金額となる、前臨床段階のマイルストンがなかなか見えにくい点はご容赦下さい。

 

    ロイヤルティ率について

製薬・バイオ業界でのアライアンスのロイヤルティ率は各社の戦略上重要になるため、リリースでは具体的な数字までは開示されていないのが一般的です(例外もあります)。我々も「段階的ロイヤルティ」や「最大2桁の段階的ロイヤルティ」とだけ開示することが多いです。ただ、「段階的ロイヤルティ」とだけ書いたものの中には、実際には最大ロイヤルティが2桁の場合も多く含まれています。例えば、後段の主な11個の契約のうち、「段階的ロイヤルティ」とだけ開示しているものは(1)(4)以外の9つですが、実際にはこの過半数では最大2桁のロイヤルティが設定されています。

これには、ライセンスする側は安く売ったと見られたくない、ライセンスされる側は高く買ったと見られたくない、と双方が思っているため、中々、桁を特定して開示しにくいという点や、2桁のロイヤルティを受け取る可能性が低い場合には、過度な期待にならないよう、あえて2桁とは開示しないという背景があります(次項の通りロイヤルティは段階的に設定されています)。ただ、この辺りは投資家の皆様からは分かりにくいとも思っており、今後、どのようにお伝えできるか検討したいと思っています。

尚、ロイヤルティに関して「段階的」と書かれているのは、製品売上高に応じてロイヤルティ率が変わってくるためです。ロイヤルティ率は例えば、売上高1,000億円未満では8%、売上高1,000億円以上2,000億円未満では10%、売上高2,000億円以上では12%、といった具合で設定されています(当社の特定の契約とは無関係の例です)。製品売上高が増えるほど利益率も大きくなる製薬業界では、こういった契約が一般的になります。

 

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

 

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202012月期の進捗(主に今期収入と関連するものを抜粋)】ブルーがアップデート

(発表日)                               (内容)                                                                 (今期PLの売上げと関連する部分)
625 参考/2Q           アッヴィとの新規創薬提携                                 契約一時金+初期マイルストン:合計 32 百万ドル(最大)*
629 参考/2Q           エナジアが日本で承認を取得                             マイルストン:1.25百万ドル
77   参考/3Q           エナジアが欧州で承認を取得                             マイルストン:5百万ドル
928 参考/3Q           ファイザー社が臨床試験を開始                        マイルストン:5百万ドル
112 参考/4Q           HTL0014242Tempero社に導出                          契約一時金:非開示
121 参考/4Q           HTL0022562をバイオヘイブン社に導出           契約一時金:10百万ドル
1221 参考/4Q         GPR35作動薬をGSK社に導出                                契約一時金+初期マイルストン+研究開発支援金:合計 44 百万ドル(最大)*

*今期を含めた複数年で受領

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【参考:2015年以降の我々のライセンス契約(小規模なアライアンスと共同開発以外)】
(1)    20158月(参考)   導出:アストラゼネカ社
(2)    201511月(参考) 導出:テバ社
(3)    201511月(参考) 創薬提携:ファイザー社
(4)    20164月(参考)   導出:アラガン社
(5)    20192月(参考)   アセット特化企業:Medicxi
(6)    20197月(参考)   創薬提携:ジェネンテック社
(7)    20198月(参考)   創薬提携:武田薬品工業
(8)    20206月(参考)   創薬提携:アッヴィ社
(9)    202011月(参考) アセット特化企業:Aditum Bio
(10)  202012月(参考) 導出:バイオヘイブン社
(11)  202012月(参考) 導出:グラクソ・スミスクライン社

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1:全く異なるコンセプトですが、GPR35受容体作動薬全体では我々の他には1つのみ、吸入での特発性肺線維症の治療を目指すPA101があります