2022年5月17日火曜日

Kallyope社と戦略的提携を締結しました

みなさんこんにちは。CFOの野村です。

 

先ほどリリースの通り、米Kallyope社と消化器領域での戦略的提携を結びました。Kallyope社は最近注目が高まっている脳腸軸(後述)に特化した創薬プラットフォームを持つ未上場のバイオベンチャーで、自社品の開発や大手製薬企業との提携(ノボノルディスク社など)を通じて研究開発を進めています。研究開発のマネジメント・メンバーは大手製薬メルク社の出身者が多く、今年2月には236百万ドルのシリーズDのファイナンスを完了するなど、投資家からも高く評価されていることが窺える新進気鋭の企業です。


尚、当社の戦略的な提携の全体像と概要は以下の通りです。


【戦略的な提携の位置づけの整理】
① 新しい薬のターゲットを探すための提携→ → →② ターゲットに対して実際に薬を作るための提携
人工知能・マシンラーニング・DB等モダリティ
InveniAI社
Verily社
Kallyope社
低分子抗体その他
ターゲット
GPCR
PharmEnable社
Kymab社
Twist社
ペプチドリーム社
Captor社
その他
Metrion社
※モダリティ - 「低分子」「抗体」といった治療薬の物理的な種類の別


【戦略的な提携先の概要】
提携の目的パートナー契約時期テーマ提携内容
①新しい薬のターゲットを探すための提携
標的GPCRの発掘InveniAI社2021年7月AI創薬
(基盤技術:AlphaMeld)
免疫疾患関連の複数のGPCRをターゲットとした、AIとML(マシンラーニング)による標的探索のための提携。
Verily社2022年1月AI創薬
(基盤技術:ImmuneProfiler)
免疫疾患関連の複数のGPCRをターゲットとした、膨大なデータベースに基づく標的探索のための提携。
Kallyope社2022年5月脳腸軸消化器疾患の複数のGPCRをターゲットとした、脳腸軸プラットフォームに基づく標的探索のための提携。
②ターゲットに対して実際に薬を作るための提携
モダリティの拡大Kymab社2016年4月抗体がん免疫領域の複数のGPCRをターゲットとした提携。現在、KY1051が前臨床試験段階
ペプチドリーム社2017年6月特殊環状ペプチド炎症性疾患領域のGPCRをターゲットとした提携。現在、PAR2アンタゴニストペプチドが前臨床試験準備中
Captor社2020年12月TPD
(標的タンパク分解誘導)
消化器領域に関連することが明確に検証されているGPCRをターゲットとした提携。
PharmEnable社2021年1月AI創薬
(創薬困難な標的)
神経疾患に関連する創薬困難なペプチド作動性のGPCRをターゲットに対する化合物設計を目的とした提携。
Twist社2021年12月抗体特定のGPCRをターゲットとした、リード抗体の獲得を目的とした提携。
ターゲットの拡大Metrion社2021年2月イオンチャネル神経疾患に関連するイオンチャネルをターゲットとした提携。


脳腸軸とは、脳腸相関とも呼ばれる「脳」と「腸」の密接な連携のことです。脳と腸は自律神経やホルモン分泌などを通じてお互いの機能や生体全体に影響を与えており、例えばうつ症状によって腸の免疫物質が低下する一方で、この免疫物質を外から補うと逆にうつ症状自体が改善すること、また、腸内細菌の環境(腸内細菌叢や腸内フローラと呼びます)が、免疫チェックポイント阻害剤の効果を左右することなどが知られています。この脳腸軸が影響する可能性のある疾患は、報告されているだけでも、肥満、糖尿病、NASH、機能性胃腸障害、炎症性疾患、うつ病、自閉症、パーキンソン病など非常に幅広く、ポテンシャルの高さが注目されています。


今回、シングルセル解析、計算生物学、表現型スクリーニングなどを組み合わせたKallyope社の脳腸軸に特化した創薬プラットフォームと、我々のGPCRに対する創薬ノウハウを融合し、新しい消化器疾患の治療薬候補となる複数のGPCRの発掘、優先順位付け、検証を行い、これらのターゲットに作用する新規低分子化合物の開発を進めます。尚、これまでの多くの戦略的提携と同じく、双方の強みを持ちよって研究開発を進め、将来成果が得られた際には基本的にそれを折半することになります。短期的にはマイルストン収入等が期待できる契約ではありませんが、将来の大きな成果を目指して着実に歩みを進めていきますので、是非、今後の進展を見守っていただければと思います。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!