2021年1月12日火曜日

PharmEnable社とAI創薬で戦略的提携しました

みなさんこんにちは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

本日リリースの通り、英国PharmEnable社とAI創薬分野での戦略的提携を結びました(参考)。我々にとっては2016年のKymab社(抗体/参考)、2017年のペプチドリーム社(ペプチド/参考)、2020年のCaptor社(TPD/参考)に次ぐ、4社目の戦略的提携になります。以前の繰り返しで恐縮ですが、このような戦略的提携は、大手への導出(アストラゼネカ社、グラクソ・スミスクライン社など)や創薬提携(ファイザー社、武田薬品、ジェネンテック社、アッヴィ社など)と異なり、主にベンチャー企業同士の先端技術の融合から新たな創薬を生み出し、成功すれば将来の権利を分配(割合は契約によって異なります)する提携です。我々は、技術的にはStaR技術によるターゲットの構造解析(バイオテクノロジー)とSBDDIT創薬)に強みがありますが、それ以外に我々の強みを強化できる可能性のある技術は、外部との連携を通じて取り入れていきます。また、本提携は昨年の6月に発表させていただいた資金調達(参考)の主な使途ではありませんが、その中でお約束した戦略的成長投資の一環になります。

 

一般的に、AI技術を創薬に応用する取り組みは多岐に亘っていますが、主なものはタンパク質の構造予測と化合物の設計の2つの分野への応用になります(他には構造活性相関、薬物動態・代謝、ドラッグリポジショニング等もあります)。我々はこれまでもStaR技術によるタンパク質の構造解析や、SBDDStructure Based Drug Design:いわゆるIT創薬)による化合物設計の両面で、AI技術やマシーンラーニングを活用してきました(参考)。今回のPharmEnable社との戦略的提携は、特に後者で化合物の設計が難しいケース(ペプチドをアゴニストとする中枢のGPCRに対し、中枢移行性の高い低分子の阻害薬の設計)で、PharmEnable社のChemUniverse*ChemSeek*という独自技術を、化合物設計に役立てることを目指しています。詳細な技術はPharmEnable社のHPをご参考いただければと思います。(参考

 

AI創薬はここ数年で期待が高まっている分野です。期待を高める要因になった代表例の一つは、米ニンバス社がAI創薬で生み出した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や肝細胞癌(HCC)に対する治療薬候補NDI-010976などを、Phase1試験終了時点で2016年に米ギリアド社に契約一時金400百万ドル、開発マイルストン800百万ドルで導出したことです(参考)。ニンバス社にAI創薬のプラットフォームを提供し、ニンバス社の共同創設者でもある米シュレーディンガー社は、直近で時価総額が6,000億円超に成長しています。一方、AI創薬は学習データの量と質に限界があるため、結局は現実世界でいかに正確な実験データを収集できるかが重要で、上記のニンバス社のHP上でも、X線構造解析やcryo-EMを用いた構造データの作成が創薬の出発点の1つに位置付けられています(参考)。我々もStaR技術を用いた構造データなどの取得とAIの活用を両輪として、GPCRに対する創薬を加速させていきたいと思っています。

 

尚、本提携はこれから創薬の第一歩を踏み出しますので直近の収益には影響しませんが、是非、中長期目線で進展を見守っていただければ幸いです。

 

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

 

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*ChemUniverse3D構造を持つ特殊かつ合成可能な化合物の仮想データベース、ChemSeek:構造とリガンドデータからの創薬候補の予測手法