皆様、こんばんは。IRヘッドの都築です。
がん免疫療法候補薬HTL0039732/NXE0039732のP1試験に関する結果が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2025)で発表されました(参考)。
P1試験結果では2つの異なるがん種(腎細胞がん、大腸がん)において早期の治験段階ながら有効性を示しました(プレスリリース)。同メカニズムの薬剤の中でベスト・イン・クラスを訴求できる可能性が示唆されました。このようなデータを自社開発品から示すことができたことを嬉しく思います。
以下重要な点は2点に絞って報告させていただきます。
1)2つの異なるがん種(腎細胞がん、大腸がん)で部分奏功を確認
P1試験は標準治療がない又は治療抵抗性である進行性固形がん患者を対象に、NXE'732の単剤(n=13)及びチェックポイント阻害剤アテゾリズマブとの併用(n=22)による安全性・有効性を評価しました。結果は、2つの異なるがん種(腎細胞がん、大腸がん)での2例の部分奏効を含む早期の治験段階での有効性が確認されました。
腎細胞がんにおける全奏効率(ORR)は50%(2名中1名PR)と推定されました。大腸がんにおける全奏効率は9.1%(11名中1名PR)と推定されました。大腸がんのデータでは先行するONO-4578が全奏効率3.9%(51名中2名PR)の結果を示しております(参考)。間接比較ではありますが、NXE'732はベスト・イン・クラスの開発品となれる可能性が示唆されました。
2)安全性は同メカニズムの薬剤の中でベスト・イン・クラスの可能性
P1試験では良好な忍容性を示し、DLT(用量制限毒性)も確認されておらず、グレード4/5の治療関連有害事象は確認されませんでした。グレード3以上の有害事象は全体で14%(35名中5名)であり、安全性が同メカニズムの薬剤の中で差別化要因となる可能性が示唆されました。間接比較とはなりますがONO-4578のONO-4578-01 PartD(大腸がん)ではグレード3以上の有害事象はオプジーボとの併用療法で45%(48名中23名)でした。併用療法が一般的な再発・難治性のがん患者にとって治療の継続において安全性は重要な要素であり、NXE'732が貢献できる可能性があることをうれしく思います。
P2a試験開始時のブログでも説明した通り、ESMOでの詳細結果により好条件の交渉となれば導出タイミングは早まる可能性はあり、学会発表以降の提携交渉にも注目です。P2a試験では、マイクロサテライト安定性(MSS)大腸がん(CRC)、胃または食道胃接合部腺がん(GOJ)、淡明細胞型腎細胞がん(RCC)、および転移性去勢抵抗性前立腺がんを対象にした 4 つのコホートが実施されております。
競合薬の動向
EP4拮抗薬で先行するのは小野薬品工業のONO-4578となります。同剤は2025年10月に胃がんを対象としたP2試験結果において主要評価項目[無増悪生存期間(PFS)]を達成したと報告しました。詳細結果は学会発表されるとのことで、安全性面の比較でも我々は注目しております。一方で同じメカニズムの薬剤で有望な結果が示されたことから、同メカニズムががん領域で今後さらに注目を集める、つまりプログラムの価値が上がることに期待しています。
本来であればもっと早く結果を共有したかったですが、共同研究先との兼ね合いもあり遅れてしまい申し訳ありませんでした。しかしながら最大限今回の発表データの意義は伝えられたのではないかと思います。
引き続きよろしくお願い申し上げます。