2022年2月10日木曜日

2021年本決算を発表しました

みなさんこんにちは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

本日、2021年本決算を発表致しました。詳細な数値は決算短信を、事業の全体像や今後の成長戦略については決算説明資料を参考いただければと思いますが、ここではポイント絞って解説します。

 

●売上高と利益の概要

売上高は約177億円で前年度から約100%増加しました。これは主に、ニューロクライン社にムスカリン作動薬シリーズを導出した契約一時金:114億円によるものです。 

営業利益は約37億円で前年度から約300%増加したものの、売上高が約88億円増加したのに対し28億円の増加に留まりました。これは主に、M1作動薬の開発パートナーとなったニューロクライン社が、旧化合物(HTL9936/HTL18318)ではなく、より新しく、特許期間も長い次世代の化合物(バックアップ化合物)の開発を優先する可能性が高まり、資産計上していた旧化合物の全額約30億円を減損したためです。利益の減少要因にはなりましたが、この減損は実際には現金を伴わない会計上の処理かつ一時的な損失になります。また、前年度にはコロナの影響もあり、研究開発費・販管費が抑えられたこと、それに対して21年度はコロナの影響が軽減され、かつ研究開発にアクセルを踏んだことも影響しています。

税引前当期利益は4億円で前年度から約70%減少しました。これはニューロクライン社への導出に伴い、ヘプタレス社買収時の株主(旧株主)への条件付対価28億円を支払うことによるものです。詳細は買収時のリリースもご参考下さい。尚、これら旧株主への条件付対価の大部分は2021年末で失効したため、今後は発生する条件付対価は限定的であり一時的な損失になります。

【売上高と各利益】
(百万円)
2020年12月期2021年12月期増減20年12月期からの主な変動要因
売上高8,84217,712100%ニューロクラインからの契約一時金:+11,408百万円
営業利益9283,775307%M1作動薬(HTL9936/18318)の減損:-3,064百万円
税引前当期利益1,622433-73%ヘプタレス社旧株主へ条件付対価支払い:-2,891百万円


尚、前回の本決算時のブログにも書いた通り、我々の事業はこのような会計上の処理の影響を除いたキャッシュフローに実態が近いため、今回の決算から「コア営業利益」を開示しています。「コア営業利益」は一時的な要因に左右されない基礎的な利益として、大手製薬企業他でも一般的に採用されているものです。2021年12月期のコア営業利益は以下の通りです。

【売上高とコア営業利益】(百万円)
2020年12月期2021年12月期増減
財務ベース売上高8,84217,712100%
財務ベース営業利益9283,775307%
コア営業利益2,9048,904207%


●売上高の内訳詳細

セグメント別の売上高、さらに売上高の詳細は以下の通りです。概要で既にご説明した点以外に特に大きな注目点はありませんが、これまで個別進捗をあまりお示しできていなかったジェネンテック社や武田薬品との間でも順調にプロジェクトが進展していること、またその他パートナーからの収入(一部のパートナーからは、契約一時金やマイルストンが会計上は一括ではなく、複数年に分割して計上されています)が、順調に積みあがっている点などにご注目いただければと思います。

【セグメント別の売上高(決算短信:P10)】
(億円)
発表日2020年12月期2021年12月期増減内訳
マイルストン/
契約一時金
53.5146.6174%ニューロクラインからの契約一時金、ファイザー、GSK、バイオヘイブン、ジェネンテック、武田などからのマイルストン
ロイヤルティ25.423.1-9%ノバルティス社の3製品*の売上からの収入
医薬品販売-0.2-オラビ錠の販売
その他9.47.0-26%主に提携先からの研究開発支援金
合計88.4177.1100%
*シーブリ、ウルティブロ、エナジア

【セグメント別の売上高詳細(決算説明会資料:P43)】



●開発パイプライン

個別の進展はリリースでも開示していますが、主要パイプラインを決算説明会資料P21に、詳細をP52~P54に整理しています。M1作動薬の旧化合物(HTL9936/HTL18318)は、前述の通り優先的に開発される可能性が少なくなったので、パイプラインから削除しています。また、自社開発品については、基礎、前臨床段階でいくつかの移動がありました(EP4作動薬と抗PAR2抗体)。これら自社開発品はポテンシャルや競合状況なども踏まえつつ、引き続きターゲットを随時絞りながら効率的に開発を進め、将来的に大手製薬企業への高い価値でのライセンスに繋げていきたいと考えています。

尚、2022年12期の価値の高い提携/共同投資の目標数は従来の2~3件から、1件以上としました。これはニューロクライン社との提携でも明らかなように、臨床試験のフェーズ1程度までを自社で行った方が格段に導出の時の価値が高まるため、現在前臨床段階にあるパイプラインの開発を早期に導出してしまうのではなく、自社で初期の臨床試験を行う時間が多少必要なためです。勿論、これは実際には競争環境や経済条件次第で変化しますし、終わってみれば1件に留まらず数件となる可能性もありますが、そのような方向性で導出の価値を高めていきたいと考えています。

【主要パイプライン(決算説明会資料:P21)



●その他

決算の数字自体は、一過性の要因でやや利益が圧縮されましたが、今後の減損リスクや条件付対価支払いなどを大きく圧縮することができました。尚、前述のコア営業利益を見ていただければわかる通り、我々の実際の利益水準は大きく向上しています。

加えて、東証プライム上場への形式基準の中で、これまで我々が唯一満たしていなかった収益基盤について「売上高100億円かつ時価総額1,000億円以上」の基準をクリアすることができました。一方で、東証プライムへの上場は以前からご説明の通り、最終的には実質基準などを踏まえた東証の判断になりますので、我々でコントロールできない部分が多々残る点はご理解いただければと思います。

また、決算説明会資料にも記載しましたが、今回の決算ではより当社の事業内容をご理解いただくため、ベースとなる内容を含んだスライドを冒頭に数枚入れています。ご案内の通り(参考)、本日の18時からオンラインでの決算説明会を行う予定ですので、ご興味があればご参加ください。後日、HPに動画もアップロードする予定です。事前にもたくさんのご質問を頂いており大変ありがたく、可能な限り説明会中に私から質問をしたいと思いますが、時間内に終わらない部分はいつも通り、後日、本ブログなどでのご回答とさせて下さい。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!