みなさんこんばんは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。
先ほどリリースの通り、米国Twist bioscience社(以下、Twist社)と抗体医薬品の創薬を目的として提携しました。以下に整理した通り、Twist社は2015年以降で7社目の戦略的な提携先相手になります。このような提携は、大手製薬などへの導出(価値の高い提携・共同投資)などと違って契約一時金など短期の収入はありませんが、ベンチャー企業同士の先端技術を融合することで、効率的に創薬を成功させ、将来のリターンを得ることを目的としています。何を隠そう、我々がノバルティス社に導出しているシーブリ、ウルティブロ、エナジアも、元々は創薬が強いArakis社と、吸入デバイス・製剤技術が強いVectura社の提携から生まれたものです。開発が進んで大手企業に導出したり、それがさらに販売された場合の利益の分配割合は契約ごとに違いますが、今回のTwist社との提携では我々がいくらかの費用をTwist社に支払い、将来の権利を100%確保しています。
我々が強みを持つGPCR(Gタンパク質共役受容体)は、創薬ターゲット全体の約3割を占める最大のグループですが、その中で抗体医薬品はこれまでに2つしかFDAに承認されていません(MogamulizumabとErenumab)。これはGPCRがそもそも低分子での創薬に向いていることや、抗体が技術的に作りにくいこと(構造が不安定、細胞外エピトープが小さい、可溶化しにくい、など)によるためです。一方で、抗体技術の進化や、低分子では創薬が難しいGPCRが明確になってきたことで、今後はGPCRに対する抗体も徐々に誕生するとみています。特にErenumabは2026年の売上高予想が約1,500億円(Evaluate社)と、GPCRに対する抗体に十分な市場性があることを示しました。我々も2016年のKymabとの提携以来、新たに今回Twist社と提携することで、よりGPCRに対する抗体に力を入れていきたいと考えています。
Twist社は2013年に設立され2018年にナスダックに上場、現在、時価総額5,000億円弱の急成長中の企業です。いわゆる「合成生物学」と言われる分野のバイオ企業で、最も特徴的なのは半導体上で約1万種類のDNAを同時に素早く合成できる技術になります。この人工DNA合成技術を使ってターゲットに応じた人工抗体ライブラリーを構築し、さらにそこから得られたヒット抗体をリード抗体へと素早く最適化することで、GPCRなど従来は抗体が作りにくかったターゲットにも高品質な抗体を短期間で作れると期待されています。日本企業では協和キリンが今年の3月、正にGPCRをターゲットとした抗体作成で提携しています(参考)。
我々はStaR技術でのGPCRの安定化による抗原作成、GPCRの立体構造データ、そもそも抗体で狙うべきGPCRの選定、など様々なノウハウを蓄積していますので、これらを最大限活用しつつ、まずはTwist社とリード抗体の獲得を目指します。尚、本提携はこれから創薬の第一歩を踏み出しますので直近の収益には影響しませんが、是非、中長期目線で進展を見守っていただければ幸いです。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!