2025年2月17日月曜日

2024年12月期の決算を発表しました

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

先週金曜日の2月14日に2024年期の決算を発表いたしました。

決算ハイライト

決算短信

決算説明会の説明資料

以下ポイントを絞ってご説明します。

主要決算数値

2024年度の決算は、売上収益は288億円(2023年は128億円)、コア営業損益は36億円の利益(2023年は31億円の損失)、営業損益は54億円の損失(2023年は95億円の損失)となりました。

ピヴラッツが通期で売上に貢献したこと(2023年は5か月間)、ニューロクライン社など提携先のプログラムが大きく進捗したことによるマイルストで、収益が大きく増えました。一方で、買収関連費用が2024年にもかかったことで、IFRSベースでは赤字となりました。

【主要決算数値・決算のブレークダウン(P6-7)】



2024年の振り返り

2024年の目標は概ね達成となりました。ニューロクライン社のM4作動薬の試験成功、Centessa社のオレキシン作動薬の試験進捗、ベーリンガーインゲルハイム社との新規オプション契約、クービビックの承認取得、EP4作動薬の臨床試験入りなど、自社・提携パイプラインともに大きな進捗があった年でした。
01のピヴラッツの売上高については、くも膜下出血の発症数の低下、年末年始の在庫調整の取りやめの影響によりガイダンスを修正し、結果として薬価ベースの売上高で152億円を達成しています。
一方で03の日本・APAC向けの導入については未達となりましたが、複数の有望な案件が進んでいる状況です。

【目標の振り返り、2024年の重要なイベント(P10-11)】

2025年の見通しと目標
昨年に引き続き、研究開発費、販売費及び一般管理費(販管費)に加え、日本・APAC側の売り上げについて見通しを公表しています。
  • 製品関連の売上高:170億円以上(ピヴラッツ:130-140億円、クービビック:40-50億円)
  • 研究開発費:120-140億円
  • 販管費:150-170億円
研究開発費については、自社プログラムの開発が進むこと、日本での後期開発品の獲得・導入による開発費を見込み、2024年と比べてやや増加する見込みです。販管費については、ITへの投資を見込むものの、効率化によりやや減少・もしくはフラットとなると見込んでいます。
Nxera Pharma UK由来のパイプラインからくる収益は契約の有無や開発の成否で大きくぶれることから依然として予測が難しく、ガイダンスは出していません。

なお、説明会でもコメントの通り、仮にベーリンガーインゲルハイム社(BI社)がオプション行使をした際には、IFRS基準での黒字化を見込んでいます。仮に今年に行使されない場合でも、今期はブレークイーブンを目指します。


【2025年の費用見込み・目標・2030年のビジョン(P8、28、31)】






その他
  • 決算と同時に、役員の異動を発表していますリンク3月26日の株主総会で正式に決定予定ですが、創業者の田村は惜しまれつつも勇退予定です
  • 直近でファイザー社が開発するGLP-1作動薬のフェーズ1試験の組入れが完了しています(リンク)。今後の進展に是非期待したいと思います。

今後とも、よろしくお願いいたします!

2025年2月10日月曜日

ニューロクライン社、ファイザー社の決算が発表されました

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

先週ニューロクライン社、ファイザー社の決算が発表されました。また、センテッサ社がオレキシン作動薬の進捗についてカンファレンスで発表していたので、それぞれ当社に関わるところをご紹介します。


ニューロクライン社(発表資料はこちら

発表内容については、J.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスでの発表から大きく変わっていません(該当ブログはこちら)が、質疑応答では以下についてコメントがありましたのでご説明します。

  1. FDAとのミーティングの結果、M4作動薬のP3試験は20mgの用量で行う予定。試験設計もFDAとの合意が得られた。
  2. 今後のムスカリン作動薬ポートフォリオ全体を考え、M1/M4デュアル作動薬はまずは統合失調症でP2を行う。

1.について、ニューロクライン社は「プラセボ効果を抑えるためにも、P3試験はできるだけシンプルな試験設計にするつもりだ」と以前から発言していました。今回の発表から、P3試験の設計はニューロクライン社の提案が一定程度受け入れられたと考えられます。

2.については、ムスカリン作動薬ポートフォリオの対象疾患を決める際、ムスカリン受容体の役割をよりよく理解することが重要です。M4作動薬と同じくM1/M4デュアル作動薬でも統合失調症のデータをとることで、M1、M4の役割の理解が深まります。これはポートフォリオ全体にとって非常に重要なデータとなるため、まずは統合失調症でP2試験を行い、アルツハイマー病含めた疾患への拡大も常に視野に入れて検討していくようです。


ファイザー社(発表資料はこちら、パイプラインリストはこちら

発表では、当社関連のアップデートはありませんでした。ファイザーが独自で開発するGLP-1作動薬Danuglipronについて、今年の第1四半期に出てくる1日1回投与のデータに基づき、今後の開発方針を決定するとコメントされました

なお、臨床開発段階にある当社との提携プログラムが引き続き掲載されています。

GLP-1作動薬(PF-06954522/糖尿病・肥満)
MC4拮抗薬(PF-07258669/栄養失調)
CCR6拮抗薬(PF-07054894/炎症性腸疾患)


センテッサ社(最新版(2025年1月更新)のコーポレートプレゼンテーションはこちら

センテッサ社は、2月6日にカンファレンスGuggenheim Securities SMID Cap Biotech Conference)で談話形式の発表を行いました。発言から、オレキシン作動薬ポートフォリオに対してより自信を深めていることがわかります。今年はORX750のP2試験データ、ORX142のP1入りが予定されており、今後の進捗について当社も楽しみにしています。ORX750、ORX142、ORX489の3つは、当社の技術プラットフォームから生まれました。
カンファレンスの発表資料はありませんが、議事録からいくつかピックアップしてご説明します。

【ORX750関連】

  • ORX750はナルコレプシー2型、特発性過眠症でファーストインクラス、ナルコレプシー1型でベストインクラスを目指せる開発品。
  • ORX750は天然のオレキシンに近い作用を目指し、かつ体内の薬物濃度の変化が小さくなるように分子を設計した。結果として、他の分子では達成できていない高い忍容性を実現できた。
    注:GPCRを作動させると、その下流には複数の信号が別々の経路に流れます。人工のGPCR作動薬は、その信号の強弱に偏りが出ることがあります。センテッサ社が作るオレキシン作動薬は、その偏りをなくしより天然のものと同じように設計しています。
    また、1日1回投与を実現する場合、通常は薬物の最高血中濃度(Cmaxといいます)が高くなってしまいがちですが、センテッサはCmaxが副作用に関係していると考え、できる限りCmaxを抑えるように分子を設計しています。
    このような設計をしたことで、他の分子と大幅に異なり、高い忍容性を示すことができました。
  • ナルコレプシー1型と比べ、2型の方が数倍の高用量が必要だと考えている。そのため、高用量でも副作用のリスクが低いことがP1試験で示されたのは大きな成果。
  • P2試験では、多数の項目で有効性を評価する予定(認知能力、注意力、睡眠ポリグラフ検査など)。これにより、次の段階に向け最適な用量を見つけることができると考えている。
  • 今年ナルコレプシー1/2型、特発性過眠症に対するデータがわかる予定だが、各適応症のデータがわかるタイミングは別になる可能性がある。
    データをいつ公表するかは今後検討していく。逐次公表する可能性もあるし、すべてのデータを取得後に公表する可能性もある。
【ORX142関連】
  • 後続のORX142も非常に期待している。神経・精神疾患に関連する日中の過度な眠気も含め、様々な適応症を狙っていきたい。
    注:パーキンソン病患者の90%は日中の過度な眠気に悩まされているほか、大うつ病、慢性疲労症候群など多くの中枢神経疾患は覚醒と密接に関連しています。また、これらの多くにおいてオレキシンが部分的に失われていることがわかっています。現在は覚醒促進のための治療薬が使われていますが、有効性は十分ではないため、新しい治療オプションが望まれています。
  • 前臨床試験レベルでは、オレキシン作動薬が気分症状の改善にも役立つことがわかっていることから、これらの症状も開発対象の視野に入れている。

【その他会社全般】

  • 今年1月にチーフメディカルオフィサーに中枢神経領域で経験豊富なSteve Kanesを迎え(リンク)、オレキシン作動薬ポートフォリオの開発を加速していく。

今後とも、よろしくお願いします!

2025年1月16日木曜日

J.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスの発表

みなさんおはようございます、IR&コーポレートストラテジー部長の田原です。

先ほどJ.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスでのプレゼン資料を公開しました。(日本語版英語版


【当社発表のポイント】

ニューロクライン社も同カンファレンスで発表した通り、いよいよ当社の開発品が続々と上市に向けて後期の開発段階に入っていることから、2030年までに上市する可能性のある7つの開発品(WAVE1)と、2035年までに上市する可能性のあるその他のパイプライン(WAVE2)に分けて状況を整理しています。仮にWAVE1がすべて成功した場合には、最大では年間約2,500億円の莫大なロイヤリティ収入となる可能性があり、現実的に1-2品目の成功だと考えたとしても、数百億円のロイヤリティが期待できる、当社にとって大きく事業を飛躍させるドライバーになります。(P23-P24)



また、「2030年で売上500億円」の目標の内訳について、契約一時金・マイルストン、ピヴラッツやクービビックの売上、日本・APACでのインライセンスに分けて、お示ししています。これらを合計し、2030年にWAVE1のロイヤリティ以外で売上500億円、営業利益率30%を目指していきます。(P24)




加えて、2025年のイベントをP25に示しています。既にパートナー企業が発表している進捗予定を中心に、5つのフェーズ2試験と1つのフェーズ3試験の開始を予定しており、これらに伴って複数のマイルストンを受領する見込みです。なお、昨年末までに達成できなかった2024年の目標である「日本・APACでのインライセンス」については、パートナーとの交渉事にやや時間を要していますが、今期の早い段階で達成することを目指していきます。(P25)


【当社関連の発表】

本カンファレンスでは、グローバル製薬企業が数多く発表をしています。当社パートナーのニューロクライン社・ファイザー社も発表をしていたため、当社に関連する部分についてご紹介します。

ニューロクライン社(発表資料はこちら

先日のリリースでも発表しましたが、ニューロクライン社がムスカリン作動薬ポートフォリオの進捗を発表しました。M4作動薬(NBI-568)はFDAとのフェーズ2試験終了後相談が順調に完了し、今年前半にはフェーズ3試験を開始予定です。統合失調症治療薬は競合のCobenfyが上市され、ピーク時売り上げは1.5兆円に迫るともいわれている(記事)ことから、ニューロクライン社もフェーズ3試験を全力で推進する意気込みを語っていました。

【ニューロクライン社発表資料 P15 赤枠が当社創出のパイプライン】

また、2025年に同じM4作動薬(NBI-568)で双極性障害に適応症を拡大するフェーズ2試験、さらにM1/M4デュアル作動薬(NBI-570)で統合失調症を対象としたフェーズ2試験も開始予定であることを発表しました。

適応症を決めるにあたっては、すべてのムスカリン作動薬ポートフォリオから得られた膨大なデータをもとに検討したこともプレゼン内で述べていました。神経・精神疾患をよく理解し、同時にムスカリン作動薬を複数保有・開発しているニューロクライン社しかできない戦略であり、当社としてもこれらがしっかりと有効性・安全性を発揮し、開発が進捗することを期待しています。

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双極性障害:うつ病と同じく「気分障害」のひとつで、統合失調症と並び二大精神疾患とされている。興奮状態「躁(症状によっては軽躁)」、気分が落ち込む状態「うつ状態」を繰り返す慢性的な疾患。興奮時の状態をもとに主に2つのタイプに分類され、仕事・家庭に重大な支障をきたすような激しい興奮状態(躁)を経験する「双極Ⅰ型障害」、本人や周囲にはさほど影響がない(軽躁)状態になる「双極Ⅱ型障害」がある。うつ状態の長さなどが異なることから、Ⅱ型が軽症というわけではない。
Ⅰ、Ⅱ型合わせた患者数は、日本では0.7%程度、欧米では2-3%が発症するとされ、統合失調症(全人口の1%程度)と同程度の患者数がいると言われている。また、治療薬に関しても統合失調症と似ている点が多く、非定型抗精神病薬がよく利用される。

出所:順天堂大学医学部 気分障害分子病態学講座HP(リンク

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ファイザー社の発表

ファイザー社の発表では、Danuglipron(当社との提携)を中心としたGLP-1作動薬に関する質問が多く占めましたが、CEOのAlbert Bourla氏の発言は、以下の通りDanuglipronに対しては今年後半にフェーズ3試験に入る可能性を示しつつも、現在の剤形改良が成功することが前提であり、かなり慎重な姿勢でした。スクリプト全文はこちらをご覧ください。

"I'm very cautious with Danu because I have been burned and I don't want to create neither false expectations or positive or negative. It is exactly as we have said it. In Danu, we are working now on once-a-day formulation. This is about pharmacokinetics. We think we found the right ones after we did a lot of experiments and now, we are in dose optimization of those formulations. So we'll have the data in a few months. And then we will see if really we can basically replicate the results that we had in Phase 2B study because Danu has been tested in more than 1,600 people.”


一方で、そのような状況も踏まえて、当社との提携品(PF-522、以下の発言での”GLP-1 follow-on molecule”)等ついても、開発体制をさらに強化していることが示されました。また、外部からの導入などを行う予定が無いことにも言及されました。PF-522はP1b試験が完了のタイミングであり(参照)、当社も期待して今後のアップデートを待ちたいと思います。

”We are all-in. We are going to -- we are building our teams. We have a very strong metabolic expertise in Pfizer through the years. We are recruiting experts in obesity over the last, let's say, 12, 13, 14 months, so that are helping us now make better and more sound decisions. We have GIPR that is following and the GLP-1 follow-on molecule. So in terms of GLPs, we are in the oral space, and we don't need to go outside because we have our own. I don't think that a GLP injectable will be of interest to us from the BD perspective right now because probably it's a little bit too late. But other mechanisms of action in the injectable space or in the oral, we are really looking everything into the market because I think we have the capabilities to develop it and to sell it, which is very important. ”


今後とも、よろしくお願いします!