2022年2月27日日曜日

提携・導出先企業の2021年度4Q決算が出揃いました

みなさんこんにちは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

決算シーズンになりました。先週金曜日(25日)のバイオヘイブン社の決算で、臨床試験(ヒトでの試験)より先に進んでいるパートナー5社(ノバルティス社、ファイザー社、ニューロクライン社、バイオヘイブン社、アストラゼネカ社)の4Q決算が出そろいましたので、ご報告させて下さい。

各社の3Q決算時点からの主な変更点は、ムスカリン作動薬シリーズがニューロクライン社に導出された点、バイオヘイブン社が開発をバックアップ化合物に切り替えた点になります。

 

ノバルティス社4Q決算:202112月期)

関連品目:

製品名2021年4Q
(1-12月)
2020年4Q
(1-12月)
変化率
(ドル基準)
備考
シーブリ
ウルティブロ他
584623-6%当社が一部権利を持つシーブリとウルティブロに、
Onbrezを加えた売上
エナジア他5326104%当社が一部権利を持つエナジアを含む売上
(百万ドル)

参考資料:Condensed interim financial report – supplementary dataP12

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シーブリとウルティブロを含む「Ultibro Group」は横ばいから減少傾向になっています。エナジアを含む「Other」は引き続き成長中です。それぞれのセグメントでは、我々が権利を持たない医薬品も入った売上高内訳なのでその内訳は正確には分かりにくいと思いますが、我々の4Q決算でのロイヤルティ収入が前年同期に比べて-9%になっている点などを参考にしていただければと思います。



ファイザー社(4Q決算:202112月期)

関連品目:

開発コード作用メカニズム対象疾患開発段階臨床試験試験期間
PF-07081532GLP-1作動薬糖尿病/肥満Ph1試験中1) NCT04148209
2) NCT04305587
3) NCT05158244
2019年11月~2020年3月
2020年3月~2021年7月
2021年12月~2022年6月
PF-07054894CCR6拮抗薬炎症性腸疾患Ph1試験中1) NCT043888782020年7月~2022年1月
PF-07258669MC4拮抗薬拒食症Ph1試験中1) NCT04628793
2) NCT05113940
2021年3月~2021年8月
2021年11月~2022年7月
※試験期間はテータベース登録上の予定であり、変更されうるものである点に注意

参考資料:Pfizer PipelineP5, P7

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2Q時点からパイプライン上での変更はありません。2型糖尿病を対象にしたGLP-1作動薬について、上記の3)の新たなPh1b試験が昨年12月に開始されました。終了はデータベース上では今年6月となっています。また、Pfizer社は自社の決算説明会で以下のようにコメントしました。1日一回投与タイプが、我々と関連しているPF-07081532になります。


’We may actually consider to take the once-daily in the same study as danuglipron given that we now have this unique opportunity to look through what seems to be two great drugs. '

'我々にはこれらの2つの優れた医薬品候補を比較できるまたとない機会がありますので、1日1回投与のタイプの候補薬をダヌグリプロン(1日2回投与)を同じ試験に含めることになるかもしれません。'


尚、複数回のPh1試験を行うのは通常の開発プロセスの一環で、新たなPh1試験に伴うマイルストンはありません。次のマイルストンはPh2試験が開始された時になります。



ニューロクライン社(4Q決算:202112月期)

関連品目:

開発コード作用メカニズム対象疾患開発段階臨床試験試験期間
NBI-1117568
(HTL-16878)
M4作動薬統合失調症Ph2試験準備中
(22年開始予定)
--
-M1作動薬神経疾患Ph1試験準備中
(23年開始予定)
--
-M1/M4作動薬神経疾患Ph1試験準備中
(23年開始予定)
--

参考資料:Q4 2021 / Year-End Corporate Presentation(P4-7, P31

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昨年11月のライセンス契約時点からの大きなアップデートはありませんが、M4作動薬のPh2試験開始が2022年、M1作動薬(従来バックアップとしていた化合物)とM1/M4作動薬のPh1試験開始が2023年であることが再確認され、さらにM4作動薬のPh2試験開始が2022年の重要なマイルストンとなるなど、ニューロクライン社内での位置づけがより明確化しています



バイオヘイブン社(4Q決算:202112月期)
関連品目:CGRP拮抗薬(前臨床試験中
参考資料:FORM 10-KP4

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Ph1試験中で、最も開発が進んでいたBHV-3100について、バイオヘイブン社は現在のPh1試験を中止し、バックアップの開発に切り替えることを発表しました。本バックアップ化合物は現在、前臨床試験中のものになります。バイオヘイブン社は自社のFORM 10-Kで以下のようにコメントしています。


"During the fourthquarter of 2021, we decided to stop development of BHV-3100 basedupon its emerging preclinical profile and will instead advance one of theportfolio's backup compounds in its place.'

"2021年の4Qに、前臨床データに基づいてBHV-3100の開発を中止すること決定し、代わりにポートフォリオの中にあるバックアップ化合物の1つの開発を進める予定です。'


これ以上のコメントは当社からは出せずに心苦しいのですが、バイオヘイブン社がより優れた剤形、投与方法、特許期間が長い等、これまでの化合物のプロファイルを上回る可能性のある、新たな化合物の開発を今後も進めることを楽しみにしています。尚、この開発品の切り替えに関して、当社がバイオヘイブン社に何らかの支払いを行うことはありません。



アストラゼネカ社(4Q決算:202112月期)

関連品目:AZD4635/imaradenant(アデノシンA2a拮抗薬/Ph2試験から削除)
参考資料:Clinical trials appendix

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変更点はありません。AZD4635/imaradenantについて、アストラゼネカ社のパイプライン資料からは外れたままで 、我々は引き続き今後の開発計画をアストラゼネカ社と協議しつつ、権利の我々への返還も含めて検討を進めていきます。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!

2022年2月10日木曜日

2021年本決算を発表しました

みなさんこんにちは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

本日、2021年本決算を発表致しました。詳細な数値は決算短信を、事業の全体像や今後の成長戦略については決算説明資料を参考いただければと思いますが、ここではポイント絞って解説します。

 

●売上高と利益の概要

売上高は約177億円で前年度から約100%増加しました。これは主に、ニューロクライン社にムスカリン作動薬シリーズを導出した契約一時金:114億円によるものです。 

営業利益は約37億円で前年度から約300%増加したものの、売上高が約88億円増加したのに対し28億円の増加に留まりました。これは主に、M1作動薬の開発パートナーとなったニューロクライン社が、旧化合物(HTL9936/HTL18318)ではなく、より新しく、特許期間も長い次世代の化合物(バックアップ化合物)の開発を優先する可能性が高まり、資産計上していた旧化合物の全額約30億円を減損したためです。利益の減少要因にはなりましたが、この減損は実際には現金を伴わない会計上の処理かつ一時的な損失になります。また、前年度にはコロナの影響もあり、研究開発費・販管費が抑えられたこと、それに対して21年度はコロナの影響が軽減され、かつ研究開発にアクセルを踏んだことも影響しています。

税引前当期利益は4億円で前年度から約70%減少しました。これはニューロクライン社への導出に伴い、ヘプタレス社買収時の株主(旧株主)への条件付対価28億円を支払うことによるものです。詳細は買収時のリリースもご参考下さい。尚、これら旧株主への条件付対価の大部分は2021年末で失効したため、今後は発生する条件付対価は限定的であり一時的な損失になります。

【売上高と各利益】
(百万円)
2020年12月期2021年12月期増減20年12月期からの主な変動要因
売上高8,84217,712100%ニューロクラインからの契約一時金:+11,408百万円
営業利益9283,775307%M1作動薬(HTL9936/18318)の減損:-3,064百万円
税引前当期利益1,622433-73%ヘプタレス社旧株主へ条件付対価支払い:-2,891百万円


尚、前回の本決算時のブログにも書いた通り、我々の事業はこのような会計上の処理の影響を除いたキャッシュフローに実態が近いため、今回の決算から「コア営業利益」を開示しています。「コア営業利益」は一時的な要因に左右されない基礎的な利益として、大手製薬企業他でも一般的に採用されているものです。2021年12月期のコア営業利益は以下の通りです。

【売上高とコア営業利益】(百万円)
2020年12月期2021年12月期増減
財務ベース売上高8,84217,712100%
財務ベース営業利益9283,775307%
コア営業利益2,9048,904207%


●売上高の内訳詳細

セグメント別の売上高、さらに売上高の詳細は以下の通りです。概要で既にご説明した点以外に特に大きな注目点はありませんが、これまで個別進捗をあまりお示しできていなかったジェネンテック社や武田薬品との間でも順調にプロジェクトが進展していること、またその他パートナーからの収入(一部のパートナーからは、契約一時金やマイルストンが会計上は一括ではなく、複数年に分割して計上されています)が、順調に積みあがっている点などにご注目いただければと思います。

【セグメント別の売上高(決算短信:P10)】
(億円)
発表日2020年12月期2021年12月期増減内訳
マイルストン/
契約一時金
53.5146.6174%ニューロクラインからの契約一時金、ファイザー、GSK、バイオヘイブン、ジェネンテック、武田などからのマイルストン
ロイヤルティ25.423.1-9%ノバルティス社の3製品*の売上からの収入
医薬品販売-0.2-オラビ錠の販売
その他9.47.0-26%主に提携先からの研究開発支援金
合計88.4177.1100%
*シーブリ、ウルティブロ、エナジア

【セグメント別の売上高詳細(決算説明会資料:P43)】



●開発パイプライン

個別の進展はリリースでも開示していますが、主要パイプラインを決算説明会資料P21に、詳細をP52~P54に整理しています。M1作動薬の旧化合物(HTL9936/HTL18318)は、前述の通り優先的に開発される可能性が少なくなったので、パイプラインから削除しています。また、自社開発品については、基礎、前臨床段階でいくつかの移動がありました(EP4作動薬と抗PAR2抗体)。これら自社開発品はポテンシャルや競合状況なども踏まえつつ、引き続きターゲットを随時絞りながら効率的に開発を進め、将来的に大手製薬企業への高い価値でのライセンスに繋げていきたいと考えています。

尚、2022年12期の価値の高い提携/共同投資の目標数は従来の2~3件から、1件以上としました。これはニューロクライン社との提携でも明らかなように、臨床試験のフェーズ1程度までを自社で行った方が格段に導出の時の価値が高まるため、現在前臨床段階にあるパイプラインの開発を早期に導出してしまうのではなく、自社で初期の臨床試験を行う時間が多少必要なためです。勿論、これは実際には競争環境や経済条件次第で変化しますし、終わってみれば1件に留まらず数件となる可能性もありますが、そのような方向性で導出の価値を高めていきたいと考えています。

【主要パイプライン(決算説明会資料:P21)



●その他

決算の数字自体は、一過性の要因でやや利益が圧縮されましたが、今後の減損リスクや条件付対価支払いなどを大きく圧縮することができました。尚、前述のコア営業利益を見ていただければわかる通り、我々の実際の利益水準は大きく向上しています。

加えて、東証プライム上場への形式基準の中で、これまで我々が唯一満たしていなかった収益基盤について「売上高100億円かつ時価総額1,000億円以上」の基準をクリアすることができました。一方で、東証プライムへの上場は以前からご説明の通り、最終的には実質基準などを踏まえた東証の判断になりますので、我々でコントロールできない部分が多々残る点はご理解いただければと思います。

また、決算説明会資料にも記載しましたが、今回の決算ではより当社の事業内容をご理解いただくため、ベースとなる内容を含んだスライドを冒頭に数枚入れています。ご案内の通り(参考)、本日の18時からオンラインでの決算説明会を行う予定ですので、ご興味があればご参加ください。後日、HPに動画もアップロードする予定です。事前にもたくさんのご質問を頂いており大変ありがたく、可能な限り説明会中に私から質問をしたいと思いますが、時間内に終わらない部分はいつも通り、後日、本ブログなどでのご回答とさせて下さい。


今後とも、どうぞよろしくお願いします!