2021年11月25日木曜日

科学雑誌のCellに論文が掲載されました

みなさんこんばんは。
IR
&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

日本時間の深夜になってしまいましたが、先ほどリリースの通り当社とグラスゴー大学が共同で研究を行った成果として、ムスカリンM1作動薬(HTL9936/以下、M1作動薬)がアルツハイマー病治療薬候補として有用な可能性を報告した論文が、科学雑誌のCell誌の11月24日号のFeatured Articleとして掲載されました。Cell誌はサイエンス誌やネイチャー誌などと並んで世界的に著名な科学雑誌であり、我々も今回の掲載を大変嬉しく思っています。尚、今回のCell誌への掲載に限らず論文などでの対外的な発表は、当社のHPの「サイエンス・センター - 知識」に順次アップデートされていますので、興味があればご覧下さい。今回はCell誌への掲載という大きな進展だったことや、直近で発表したニューロクライン社への導出でも日本の権利を自社で確保したM1作動薬に関係する最新論文ということで、上記の「知識」への掲載に加えて、リリースと本ブログで論文の内容を簡単に解説させていただきます。また、論文本体は以下のリンクにありますので、こちらもご興味あればアクセスしてみて下さい。

 

From structure to clinic:Design of a M1 muscarinic acetylcholine receptor agonist with the potential forsymptomatic treatment of Alzheimer’s disease

 

論文の主旨はタイトルの通り、我々の得意とするターゲットの構造に基づく精密な創薬(StaR技術+SBDD)から生まれたM1作動薬が、新薬候補として有用な可能性を示したものです。M1作動薬がアルツハイマー病を含む認知症の有力な治療ターゲット候補と考えられることは従来から広く知られていましたし、我々のHTL9936も最初のPh1試験を始めたのは2013年と決して最近ではありません。それにもかかわらず今回の論文がCell誌に掲載されたのは、従来はM1受容体に対して選択性の高い化合物がない中で、実験室に限定された結果など断片的な情報に基づいてしか検証されてこなかったM1作動薬というメカニズムが、臨床試験を含む重層的な実験結果によって、ヒトでも臨床的意味を持ったアプローチとなる可能性を初めて示した点が高く評価されたためだと考えています。論文の主なポイントは以下の通りです。


  • HTL9936は試験管内での試験(in vitro)でムスカリンM1受容体に明確な選択性を示しています。つまり、我々のSBDDを使った創薬のアプローチは、ムスカリン受容体ファミリーのような難しいターゲットに対しても、特定のサブタイプ(この場合はM1)のみに選択性のある化合物を設計できます。(図4
  • HTL9936は動物試験(マウス、プリオン病マウス、ビーグル犬)で、単剤、さらに標準治療薬であるドネペジルとの併用で明確な有効性がみられ、M1作動薬が臨床的に意味のある治療になる可能性を示しています。(図5、図6) さらに同様の傾向がヒトでのバイオマーカーを使った臨床試験でも示されています。(図7
  • これらの一貫した結果を総合し、M1作動薬が有用な治療薬候補になること、さらにこれまでは作り分けることができなかった、受容体の特定のサブタイプのみに作用する臨床応用可能な新薬候補を、ターゲットの構造に基づく精密な創薬(StaR技術+SBDD)で作成できる可能性が初めて示されました。


尚、これは我々が最初に臨床試験を行ったM1作動薬であるHTL9936の結果ですが、既に発表している通りさらにそこから改良されたHTL18318Ph1試験終了)や、その次世代型のM1作動薬のバックアップ化合物(前臨床試験中)が、我々のM1作動薬開発の最前線になります。今回の論文は基礎的なサイエンスの内容を多く含むものですが、我々が今後M1作動薬の臨床開発を進める上の裏付けとなる重要なものであり、それがCell誌という著名な科学雑誌に掲載されたことを、一同、大変嬉しく思っています。

 

今後とも、どうぞよろしくお願いします!




【2021年12月期に発表した進捗(今期収入と関連するものに絞って整理)】
発表日四半期内容収入の種類今期の売上高
5月19日(参考2Qファイザー社が臨床試験を開始マイルストン5百万ドル
6月23日(参考2Qバイオヘイブン社との開発品の臨床試験を開始マイルストン非開示
11月22日(参考4Qニューロクライン社にMシリーズを導出契約一時金100百万ドル