2021年8月16日月曜日

2021年上期決算発表と決算説明会を行いました

みなさんこんばんは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。


先週木曜日に、2021年上期決算発表と決算説明会(Zoomウェビナー)を行いましたので、以下にその概略を報告させていただきます。決算説明会には362名の皆様にご参加いただき、以下の口頭での質疑に加えて120件のご質問、ご意見、激励をテキストでいただきました。ご参加いただいた皆様、ご質問いただいた皆様、本当にありがとうございました!!

尚、時間内にお答えしきれなかったご質問は、重複などを整理した上で回答を本ブログでご報告させていただく予定です。少々お時間を頂きますが、今しばらくお待ちいただければ幸いです。尚、決算説明会の録画はこちらにアップロードしております

今後とも、どうぞよろしくお願いします!


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決算発表
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決算短信
ビジネスハイライト
決算説明資料


●上半期の売上高と営業利益について

21/12期上期の売上高は31億円となり、前年同期の21億円から約24%増加しました。20年上期にも第一三共、アッヴィ、ノバルティスなどからマイルストーン収入がありましたが(参考:20年通期決算説明資料・P39)、21年上期はファイザー社(PF-07258669)とバイオヘイブン社(BHV3100)からのPhase1試験開始のマイルストーン、ジェネンテック社からのStaRタンパク質提供のマイルストーン、また、ジェネンテック社やアッヴィ社から既に受け取っていた収入が、売上計上されたことによる影響などにより昨年を上回りました。

一方、年初からの予定通り、導出等も見据えてムスカリンプログラムやその他の優先度の高いプログラムへの投資を加速していること、また、M&A等の深い検討などに伴って専門家へのアドバイザリーフィーの支払いが増加していることから、研究開発費は26億円となり前年同期の17億円から約53%増加、販管費は19億円となり前年同期の17億円から約16%増加しました。尚、増加率が高めに出ているのは、前年がコロナウイルス流行初期で研究開発活動が一時的に世界中で停滞していた影響もあります。また、これらは年初の計画である「研究開発費の現金支出:40-50億円」「販管費の現金支出18-23億円」に対して予定通りであり、我々もこの見込みを据え置いています。


【上期の売上内訳(決算短信:P6)/%は前年同期比】

ロイヤリティ収入                                                        11.67億円(-4%:ノバルティス社からの売上ロイヤルティ)
マイルストン収入及び契約一時金                         15.46億円(+105%:ファイザー社、バイオヘイブン社、ジェネンテック社、アッヴィ社などの進展)
その他                                                                                 4.10億円(-25%:主に提携先からの研究開発支援金)
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合計                                                                                   31.23億円(+24%)



●開発パイプラインについて

上期全体では、大きくはファイザー社(PF-07258669)とバイオヘイブン社(BHV3100)の2つの開発品が前臨床段階からPhase1試験段階に進展したのと、ムスカリン作動薬のアッヴィ社からの返還がありました。またその他にも、共同開発プログラムでPharmEnable社、Metrion社、InveniAI社との新たな提携、コロナウイルス治療薬候補の開発進展、ジェネンテック社との提携でのStaRタンパク質の提供、などいくつかの進展がありました。以下の決算説明会の質疑にもある通りムスカリン作動薬シリーズについては年内の導出を目指しており、それも含めて今年も引き続き、年間2-3件の高価値なライセンス契約あるいは共同投資(アセット特化型企業)を目指しています。尚、パイプラインの数が増えてきたこともあり、今回からバックアップ化合物、同じ化合物での複数の適応のうち最も進んでいるもの以外、自社での投資をこれ以上行わない自社開発プログラム、などについてはパイプライン全体の表では省略しています。


- 全体(1枚)









- 詳細(2枚)












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決算説明会
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開催日時:2021年8月12日(木) 17:00-18:15
参考資料:決算説明資料
会社出席者::代表執行役会長兼社長 CEO 田村 眞一
                               執行役 COO 兼 CFO クリス・カーギル
                               執行役副社長 チーフ・メディカル・オフィサー ティム・タスカ―
                               IR&コーポレートストラテジー部長 野村 広之進
参加者:アナリスト・メディア・機関投資家・個人投資家

     以下に質疑の要点のみを記載しています。また内容に応じてQ&Aの統合や順序の入れ替えをしています。詳細はこちらをご参照下さい。


●ムスカリン作動薬シリーズ(以下、Mシリーズ)の今後の方針について

Q1:Mシリーズの導出は、2022年の新たな臨床試験開始やHTL18318の毒性試験の結果判明後など、プログラムの価値が上がった後になるのか?

A1:導出のタイミングと臨床試験開始や毒性試験結果のタイミングには、特に関係がありません。現時点では年内を目途に導出し、その後はMシリーズ全体を導出先主導で開発が進む可能性が最も高いと考えています。Karuna社に続きCerevel社がムスカリンM4を標的とした統合失調症に対する臨床試験で良好な結果を得たことで、Mシリーズへの導出先候補からの関心が高まっており、試験の開始や毒性試験の結果が導出交渉に大きな影響を与える可能性は低い状況であり、またHTL18318の毒性はいずれにせよこの開発品単独の問題で、他の開発品に波及する性質のものでは無いと考えています。

 

Q22021年前半目途に判明予定だったHTL18318M1作動薬)の毒性解析の結果は?年  末のFDAとの協議では何がテーマになるのか?

A2:毒性解析は現在も実施中であり、今年の下半期に出るデータを基に年末までに規制当局との協議を開始したいと考えています。我々は、HTL18318でみられたサルへの毒性は、HTL18318本体ではなくサル特異的な代謝物によるものだと考えており、現在、代謝物の解析を進めています。

 

Q3HTL1687811回投与と12回投与のどちらになるのか?

A3:現時点ではどちらも可能性があります。今後のPhase2試験などで導出先も交えて検討していきたいと考えています。

 

Q4HTL16878Phase2試験を来年夏までに始めるとのことだが、試験デザインはそーせい単独で作っているのか?試験の設計が難しい疾患でもあり、単独ではなく提携先と作った方がいいのではないか?

A4:我々も同じ考えです。競合を考慮してPhase2試験の開始を急ぐのと同時に、専門性の高いパートナーと共同で臨床試験デザインを作り上げる必要を感じています。そのため足元では、治験デザインのディスカッションを含めた導出交渉が進んでいます。

 

Q5:アデュカヌマブがサロゲートマーカー(病気に対する効果ではなく代替的な評価項目)のアミロイドβ減少で承認されたことで、それとは違う作用メカニズムであるM1作動薬に悪影響はあるか?

A5:アデュカヌマブとは作用メカニズムや作用する重症度が異なるため、そもそも競合関係にある薬ではなく、悪影響はありません。むしろ業界全体として、これまで治療困難とみられていた神経疾患への注目が高まるきっかけともなっており、追い風が吹いていると認識しています。


Mシリーズの競合などについて

Q6HTL16878M4作動薬)のCerevel社のCVL-231M4 PAM: Positive Allosteric Modulator)に対する優位性は?

A6:有効性、安全性の両面から優位性があると現時点では考えています。有効性に関して、HTL16878CVL-231M4受容体に対する結合場所が異なっています。アセチルコリンと同じ場所に結合して受容体を直接刺激するHTL16878に対し、CVL-231は受容体の別の場所に結合し、M4受容体と結合したアセチルコリンが再び遊離するのを防ぐメカニズムになります。そのため、アセチルコリンが不足していても効果を発揮できるHTL18318はに対し、PAMの有効性はアセチルコリンがあることが前提になります。一方で特に中等度から重度の神経疾患では、そもそもアセチルコリンが不足しているため、PAMの有効性も低下すると考えられます。また、安全性では中枢移行性とM4受容体への選択性が高い部分作動薬であるHTL16878は、末梢性の作用を及ぼす可能性のあるCVL-231よりも優れている可能性が高いと考えています。

 

Q7HTL16878M4作動薬)のKaruna社のKarXT(キサノメリン:M1/M4デュアル作動薬とトロスピウム:ムスカリン拮抗薬の合剤)に対する特に有効性での優位性は?

A7:有効性、安全性の両面から優位性があると現時点では考えています。我々のM4作動薬は、KarXTの有効成分キサノメリンより中枢移行性が高いこと、また、統合失調症への主な効果はM4受容体由来なので、優位性があると考えています。また安全性でも、KarXTのキサノメリンの副作用を抑制するトロスピウム(ムスカリンの非選択的な拮抗薬)は主に便秘や排尿機能に対する副作用が懸念されます。臨床試験のようなコントロールされた状況下ではうまく機能するように見えても、これらは食事によって吸収が大きく影響されることが知られており、実際に使用される際にどのような頻度で副作用が現れるかは、不透明と考えています。

 

Q8Cerevel社のCVL-231について、プラセボ群の結果が弱くて差が強調されたとも見えるがどう思うか?

A8:一般的にみて慎重に患者と試験施設を絞り込み、プラセボの影響を最小化するよくデザインされた試験だったと考えています。M4作動薬のポテンシャルを表すことができており、HTL16878の今後の試験設計に対しても参考になるものです。


M&Aについて

Q9:戦略的成長のためのM&Aについての考え方をもう一度整理してもらいたい

A9:方針自体に変更はなく、良い相手先を引き続き探索しています。残念ながら現在までにベストフィットな企業のM&Aは行えていませんが、複数の候補を検討しており、今年7月にも新たにCBによる資金調達を行い資金面がより充実したことで、いいターゲット・機会を逃さずに行いたいと考えています。対象としては、持続的な研究開発を行うため、安定した売上げとキャッシュフローがある会社が望ましいと現時点では考えています。

 

Q10:以前目指していたMAの今年中の完了と、それによりプライム市場上場の形式基準を満たすというストーリーに変化はあるか?

A10M&Aの時期は状況や相手次第ですが、状況を総合的に考え無理に今年中に完了させることを今は目指していません。M&Aは深く検討した案件もありましたが、市場環境からもいい会社は高く、安い会社には安い理由がある、という状況が続いています。また、プライム市場の上場の形式基準(業績)を2112月期に満たすという意味でも、今から買収しても買収先の数か月分の業績しか連結できないため、業績への寄与は限定されます。他方でMシリーズが導出されれば、M&Aを急がなくてもプライム市場への上場の形式基準を満たし、かつ企業価値を高められる可能性があります。そのため、高値掴みしないためにも、M&Aについては多少腰を据えて最適な相手先を検討するべきだと考えています。


コロナ治療薬候補(SH-879)について

Q11:資料のP16SH-879(コロナ治療薬候補)で効き目に差が生じる要因と、最長2週間の投与が可能な要因は何か?

A11:ここでのコロナウイルス(OC43229E)は旧来型の異なる種類のコロナウイルスを指していますので、種によって効果が違うのはある程度一般的だと考えています。また、2週間の投与は現在の薬物動態などを踏まえた外部専門家の意見ですが、今後、臨床試験などを通じて最適な投与期間がより明確になると考えています。


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202112月期に発表した進捗(主に今期収入と関連するものを抜粋)】

(発表日)                               (内容)                                                                                       (今期の売上高と関連する部分)
519 参考/2Q           ファイザー社が臨床試験を開始                                               マイルストン:5百万ドル
6月23日 参考/2Q           バイオヘイブン社との開発品の臨床試験を開始                マイルストン:非開示

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