2020年12月14日月曜日

サステナビリティについて開示しました

みなさんこんにちは。

IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。

 

本日、HPの「コーポレート・ガバナンスの状況」について「サステナビリティ」にアップデートし、サステナビリティレポートを公開しました(当社HP→株主・投資家情報→サステナビリティ/参考)。また、少し前になってしまいましたが、知的財産の項目にMini-G技術ついて記載しました。Mini-G技術はやや複雑なので、もしご興味があれば後段の詳細を見ていただきたいのですが、ここではよく質問をいただく、今回のMini-G技術の発明者でもある英国ケンブリッジMRC分子生物学研究所と我々の関係を少し解説させていただきます。

 

    サステナビリティについて

サステナビリティは日本語では「持続可能性」と訳され、2015年に国連で持続可能な開発目標(Sustainable Development GoalsSDGs)が採択されて以降、より注目されるようになってきたキーワードです。この「持続」の中には社会や地球環境全般など幅広い概念が含まれ、SDGsでは17の目標とそれに紐づく169個の具体的なターゲット(例:XX年までに〇〇を無くす)が設定されています。また並行して、企業活動や投資の視点から生まれたのがESGという考え方で、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の面から投資判断を行う「ESG投資」も世界中で広がっています。我々が今回開示したサステナビリティレポートはこれらの流れを受け、我々のこれまでの取り組み内容をまとめたものになります。

レポート自体は約20ページありますが、6ページ目の「創薬産業の効率化」や11ページ目の「科学コミュニティへの貢献(新型コロナウイルスへの対応を含む)」などが、創薬企業である我々の特徴だと考えています。6ページ目の創薬産業の効率化は、業界全体としての効率低下(研究開発費が高騰する反面、新薬の数が減っていること。薬価が高い原因の一つでもあります。)が長年の課題となる中で、バイオテクノロジーとITを融合させた我々の創薬基盤技術(StaR/SBDD)による効率的な創薬から生まれた開発品の臨床試験が着実に増え、一歩ずつ製品化に近づいていることを一同喜んでいます。また、11ページ目の科学コミュニティへの貢献は、我々の最先端のサイエンスの成果を論文などで世の中に還元していくこと、また、製薬企業との連携なども含めて今回の新型コロナウイルス流行や将来のパンデミックに備えることで、今後も果たしていきたいと考えています。

 

    MRC分子生物学研究所について

今回のMini-G技術の発明者は、MRC分子生物学研究所(以下、MRC研究所)の5人の研究者になります。MRC研究所は1947年にイギリス政府が設立した、分子生物学(生命現象を分子レベルの機能や構造から解明する研究分野)の研究を行っている国営研究所で、これまでに16名のノーベル賞受賞者を輩出しており、同研究所に所属しヘプタレス社の共同創立者でもあるリチャード・ヘンダーソン氏も、2017年にノーベル化学賞を受賞しています(参考)。リチャード氏がノーベル賞を受賞するきっかけとなったクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)は、現在、ヘプタレス社でも構造解析に使われています。

実は、2015年に我々そーせいグループの子会社(100%)になったヘプタレス社は、元々、リチャード氏も含めたMRC研究所の科学者の研究成果に基づいて、2007年にMRC研究所からスピンアウトして設立されたバイオベンチャーです。2007年当時のリリース(参考)に名前のあるメンバーのうち、リチャード氏やクリス・テート氏は当社の科学諮問委員会(SAB: Scientific Advisory Board)のメンバーとして、また、創業者のマルコム・ウィアー氏は、我々の執行役副会長として、引き続き経営を牽引しています。

今回のMini-Gについても、このようなMRC研究所との密接な関係を背景に、我々が研究開発資金を提供する一方、特許の管理は我々が行うという体制になりました。HPに情報を公開したことで、今後のアライアンスなどのきっかけになればとも思っています。

 

今後とも、どうぞよろしくお願いします!

 

------------------------------------------------------------------------------Mini-G技術について)------------------------------------------------------------------------------

我々が主に創薬ターゲットとしているGタンパク質共役受容体(GPCRG protein-coupled receptor)は、「共役」の名前の通り、細かく分けると受容体の本体とGタンパク質の二つがセットになって機能を発揮しています(共役は英語では”coupled”と表記されています。こちらの方が分かりやすいですね)。受容体の本体は細胞膜を貫通しており、Gタンパク質は細胞膜の内側で受容体とくっついています。細胞膜の外側から受容体に神経伝達物質(例:アセチルコリン)などが結合すると、受容体の立体構造が変化し、それを受けて細胞膜の内側にあるGタンパク質が不活性型から活性型になることで細胞内にシグナルが伝達され、そこから様々な生体反応が起こるという仕組みです。

実はGPCRは、受容体の本体単独よりもGタンパク質とくっついている状態の方が、外部からの刺激に対してより鋭敏に反応することが知られています。専門的にはHPにあるように「アゴニスト親和性の上昇」が起こります。つまり、GPCRの構造や活性を分析するときには受容体の本体だけではなく、体内にあるときのように受容体にGタンパク質がくっついた状態で分析した方が、より自然に近い状態で正しく分析できるということです。

ただ一つ問題だったのは、実はGタンパク質は1つのタンパク質ではなく、α、β、γと呼ばれる3つの異なるサブユニットの複合体なので、これらを別々に製造・精製してそこからGタンパク質を作り、さらにそれを受容体本体にくっつけて分析するのには、かなり労力が必要になることでした。今回の我々のMini-G技術は、このGタンパク質のサブユニットの中でも、受容体と直接結合するαサブユニットを小型化して点変異を導入することで安定化し、受容体とくっついてアゴニスト親和性を上昇させる機能を保持する技術になります。つまり、これまで3つ必要だったものが1つで済み、その1つも小型化されて使い勝手が良くなることで、これまでよりも高精度あるいは高いスループットで、GPCRの分析が可能になることが期待できます。

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202012月期の進捗(主に今期収入と関連するものを主に抜粋)】

(発表日)                               (内容)                                                                 (今期PLの売上げと関連する部分)
6月25日 (参考)/2Q           アッヴィとの新規創薬提携                                複数年で受領する契約一時金と初期マイルストン合計:最大 32 百万ドル
6月29日 (参考)/2Q           エナジアが日本で承認を取得                           マイルストン:1.25百万ドル
7月7日   (参考)/3Q           エナジアが欧州で承認を取得                           マイルストン:5百万ドル
9月28日 (参考)/3Q           ファイザー社が臨床試験を開始                      マイルストン:5百万ドル
11月2日 (参考)/4Q           HTL0014242をTempero社に導出                        契約一時金:非開示
12月1日 (参考)/4Q           HTL0022562をバイオヘイブン社に導出         契約一時金:10百万ドル