みなさんこんにちは。
IR&コーポレートストラテジー部長の野村です。
昨日リリースの通り、我々が現在Phase1試験中のHTL0014242(mGlu5 NAM)をTempero Bio社に導出しました。米国西海岸との同時発表だったので、日本時間では夜遅くの発表となってしまって申し訳なかったです。今回、金額は残念ながら非開示なのですが、我々はTempero Bio社から契約一時金とTempero Bio社の株式を受領し、さらに将来開発が進めばマイルストーン、ロイヤルティを受け取ることになります。Tempero Bio社は、Aditum Bio社(ベンチャーキャピタル*)と我々が今回の開発のために創設した新会社になりますので、上期の決算説明会資料(参考)のP16に書かせていただいた今期の目標残り2つのうちの1つ、「ベンチャーキャピタルによる長期のアセット特化型企業を創設」に該当します。
Aditum Bio社は2019年に設立された新しいベンチャーキャピタルですが、共同創業者として2010年~2018年まで世界的大手製薬企業ノバルティス社のCEOを務めたジョー・ヒメネス氏や、2002年~2016年までノバルティスバイオメディカル研究所(NIBR)の所長を務めたマーク・フィッシュマン氏が名を連ねる、業界では非常に著名かつ尊敬を集めるベンチャーキャピタルの1社です。今回、我々とのTempero Bio社設立のニュースを受け、早速、多くの海外メディアに記事を書いていただいており、業界内でのインパクトの大きさを感じていただければと思います。Aditum Bio社にはHTL0014242(新開発コード:TMP-301)の全疾患に対する権利を導出していますが、まずは物質使用障害(Substance
Use Disorder:SUD)および不安障害での開発が進む予定です。
【海外系メディアの反応(一部は有料なので残念ですが全文はご覧いただけません)】
l Reuters:Japan's
Sosei allies with ex-Novartis team to develop neurological drug pipeline
l
Endpoints article::Joe
Jimenez has one more thing to do in biopharma. And now he and Mark Fishman have
a $133M stake to play the startup game
l STAT article:‘Stealth’ VC firm Aditum Bio launches its second biotech
startup
l FIerceBiotech:Novartis
alums Jimenez, Fishman unveil their next act: Aditum Bio
l BioWorld:Formed
by former Novartis CEO, Aditum Bio fund looks to target treatment gaps
l
Business Weekly:Sosei
Heptares cashes in on new Cambridge-California business enterprise
l
PR Newswire:Aditum
Bio, Co-Founded by Novartis Veterans Joe Jimenez and Dr. Mark Fishman, forms
Second Company
l BioSpectrum:Sosei Heptares and Aditum Bio to advance clinical program for neurological diseases
l Pharma Intelligence:Finance Watch: Joe Jimenez Ventures Into Start-Up World Via Aditum
さて、これだけ見てもちょっとよく意味が分からない、という方も多いと思いますので、以下、少し細かいですが本契約の背景などを解説します。ご興味のある方はご覧ください。我々は今回の進捗を素直に喜んでいますが、引き続き我々の研究開発が病気で苦しむ患者さんのお役に立つことを心から願い、今回の進捗に満足することなく、さらに前進して参る所存です。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!
---------------------------------------------------------------------------------------------------(背景の詳細)---------------------------------------------------------------------------------------------------
通常、我々のようなバイオベンチャーが開発品を導出するとき、よくある導出先は大手製薬企業になります。我々で言えはアッヴィ社(ムスカリンシリーズ)やアストラゼネカ社(AZD4635)との契約です。このような大手製薬企業との契約には数多くのメリットもある一方で、一般的にリスクになるのは、相手企業の経営方針全体が変わって開発が遅延・中止したり、仮に開発が大成功しても事前に設定したマイルストーンやロイヤルティ率以上のリターンが、バイオベンチャー側には無いことなどです。
そうしたリスクを避けるため、我々は数年前からベンチャーキャピタルと共同で新会社を設立し、そこに我々の持つ開発品を1つだけを導出して、新会社からは従来の契約一時金、マイルストーン、ロイヤルティの他に株式を受け取るという方法も検討、実行してきました。こうすると、新会社は1つの開発品だけに集中するため、開発と関係ない経営上の理由での遅延・中止することがなく、また株式を受け取るので将来その会社が大成功した場合に多くのリターンも得られるといったメリットが生まれます。このような契約の最初の例が2019年のMedicxi社と共同で行ったOrexia社とInexia社の設立(参考)で、今年の1月にも発表の通り、Medicxi社がその後追加出資を行うなど開発が順調に進んでいます(参考)。今回のTempero
Bio社は、このような取り組みの2つ目の例になります。
大手への導出がいいか、ベンチャーキャピタルと共同で新会社を設立する方がいいかは、対象とする病気の特性、一緒に使用される薬剤、相手となるベンチャーキャピタルの性質など多くの要素が絡むので、ケースバイケースで、正直申し上げて一概にどちらとは言えません。しかし今回、世界的大手製薬企業ノバルティス社の、元CEOであるジョー・ヒメネス氏が率いるAditum Bio社と我々がTempero Bio社を設立できたことは、我々のプラットフォーム技術(StaR/SBDD)から生まれた臨床試験中の開発品が、世界で見ても一定以上のポテンシャルを持っていることの証左だと考えています。
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【用語解説】
ベンチャーキャピタル・・・主に上場前の高い成長が見込まれるベンチャー企業に投資する会社。投資の対価として株式を取得し、将来的にそのベンチャー企業がIPOすることや他社にM&Aされることなどで、株式売却益を得ることを目的とする。単純な投資と同時にハンズオン支援(密接な経営のサポート)を行い、投資先企業の価値を高める。
【2020年12月期の進捗(主に今期収入と関連するものを主に抜粋)】
(発表日) (内容) (今期PLの売上げと関連する部分)
6月25日 (参考)/2Q アッヴィとの新規創薬提携 複数年で受領する契約一時金と初期マイルストーン合計:最大 32 百万ドル
6月29日 (参考)/2Q エナジアが日本で承認を取得 マイルストーン:1.25百万ドル
7月7日 (参考)/3Q エナジアが欧州で承認を取得 マイルストーン:5百万ドル
9月28日 (参考)/3Q ファイザー社が臨床試験を開始 マイルストーン:5百万ドル
11月2日 (参考)/4Q HTL0014242をTempero社に導出 契約一時金:非開示(今回)